多重露光とは?
多重露光は後述で紹介する”コツ”さえ掴めば誰でも楽しむことが可能。
様々な被写体を組み合わせることで、幻想的な一枚からアートな一枚まで、表現の幅が広がります。
花火写真などでよく見る、このような作品も多重露光。
尚、フィルムカメラの場合、何らかが原因でコマ送りができず、意図せずして美しい作品が生まれることもあります。
多重露光のコツ
ここでは比較的組み合わせやすい、ポートレート(人物写真)と風景写真を多重露光する際のコツをご紹介します。
■ 基本設定
- 感度は高感度過ぎないように(ISO100〜400)
- 被写体の明るさや色にもよりますが、基本の露出設定は-0.5〜-1補正
- ポートレート撮影の方はストロボ、レフ板、レンズフィルターなど使用可能
■ 人物を明るく写す場合は背景を暗く
1回目の画像(ポートレート)の画面全体が明るくなってしまうと、2回目に重ねる被写体が綺麗に浮かび上がりません。
Canon EOS Kiss X70 / EF-S18-55mm F3.5-5.6 IS II
出典:flickr(@Maja Kolarski)
人物を明るく撮影する場合は、この写真のように周囲の景色をなるべく暗くし、2回目に重ねる被写体が浮かび上がる場所を確保してください。
Canon EOS REBEL T1i / EF20mm F2.8 USM
出典:flickr(@Basheer Tome)
このように、暗い背景に重ねた被写体が浮き上がります。
逆に人物を暗く写す場合は背景を明るくする
Canon EOS 5D Mark II
出典:flickr(@Dani Vázquez)
逆光で人物をシルエットにするなど、このように人物を暗く撮影する場合は、なるべくその周囲の景色を明るくし、輪郭をくっきりと浮き上がらせるようにしてください。
Canon EOS 5D Mark III / EF16-35mm F2.8L II USM
出典:flickr(@philhearing)
この写真のように、暗く撮影した部分(人物)に重ねた被写体が浮かび、明るい背景にはあまり浮かび上がりません。
このように、暗い背景に重ねた被写体が浮き上がります。
逆に人物を暗く写す場合は背景を明るくする
逆光で人物をシルエットにするなど、このように人物を暗く撮影する場合は、なるべくその周囲の景色を明るくし、輪郭をくっきりと浮き上がらせるようにしてください。
この写真のように、暗く撮影した部分(人物)に重ねた被写体が浮かび、明るい背景にはあまり浮かび上がりません。
多重露光の性質上、明るすぎる日差しは露出オーバーとなり失敗しやすく、曇り空や日陰、屋内などの弱めの日差しの下で撮影する方が、重ねた際に成功しやすくなります。
■ ポートレートと組み合わせる被写体撮影のコツ
- 1回目の画像を意識し、両者がくっきりと浮かび上がるよう撮影する。1回目に撮った画像(ポートレート)を思い返し、暗い部分に明るい被写体が、明るい部分には暗い被写体がくるように撮影します。
- 明るすぎる光よりもやわらかい光の下を選んで。撮影被写体の色や明るさにもよりますが、弱めの日差しの下で撮影するのがベターです。
- 空を入れすぎないように。晴れていても曇っていても、空は明るく反射率が高い被写体。空が占める面積が広く、人物と空が重なると人物像が白飛びしてしまうので、気を付けて撮影しましょう。
多重露光の撮影方法
■ その場多重
多重露光機能が付いているカメラを使用し、1回目にポートレート、2回目に近くにある別の被写体を撮影し画像を重ねる方法。初心者でも気軽にチャレンジできます。
■ セルフフィルムスワップ
多重露光機能がないフィルムカメラで、多重露光撮影をしたいという場合に使える方法です。
丸々1本撮り切ったフィルムを再度カメラにセットし、2回目の画を重ねていくという方法で、コマずれに注意が必要であったり、1回目に撮影した内容を確認できるようにしておかなければならなかったりと、かなり上級者向けのテクニック。
しかし、海中とお花畑の写真を組み合わせた一枚など、今まで見たことのないファンタジックな作品を作り出すことが可能で、更に表現の幅が広がる手法といえます。
多重露光ができるカメラ
多重露光ができるカメラは意外と限られているため、手持ちのカメラやこれから購入予定のカメラが多重露光に対応しているかは、事前に調べておきましょう。
■ 多重露光ができるデジタルカメラ例
全てのカメラをご紹介することはできませんが、美しい作例を交え、いくつかご紹介します。
Canon EOS 5D Mark III
2〜9コマの画像を重ね合わせて多重露光を楽しむことができます。ライブビュー撮影を併用すれば、画像の重なり具合を確認しながらの撮影も可能。作例はありませんが、後継機のMark IVにも多重露光機能が搭載されています。
Canon EOS 5D Mark III / EF28mm F1.8 USM
出典:flickr(@Natasha Chub-Afanasyeva)
多重露光により重なり合った山々は絵画のようにも見えます。
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
OLYMPUS OM-D E-M1 Mark II
最近、後継機のMark IIIが発売されたOM-D E-M1 Mark IIにも多重露光機能が搭載されています。
ポツンと佇む寂しげな灯台に、荒々しい剥離ペイントが良い味を出しています。
FUJIFILM X-T1
フィルムを選んで撮影する気分を味わえる”フィルムシミュレーション”機能が搭載されたX-T1も、多重露光を楽しむことができるカメラです。
モノクロの多重露光は、古き良き映画を見ているような気分にさせられます。
■ 多重露光ができるデジタルカメラ一覧
キヤノンの多重露光ができるデジタルカメラ一覧はこちら>>
富士フイルムの多重露光ができるデジタルカメラ一覧はこちら>>
他のカメラメーカーは多重露光に対応しているデジタルカメラの一覧がないため、機種毎にご確認ください。
■ 多重露光ができるフィルムカメラ例
フィルムカメラは比較的、多重露光に対応している機種が多いです。
Nikon F100
フィルムカメラの名機、Nikon F100。フィルムカメラですが、デジタル液晶で設定し撮影できるので、初心者でもチャレンジしやすいです。
アイスランドの景色と何人かの人の顔を重ね合わせた美しい一枚。アイスランドの澄みきった空気が伝わってくるようです。
LC-A+
トイカメラといえばコレ、と言ってもいいぐらいのLC-A+。旧式のLC-Aには付いていないMX(多重)機能が付いて、多重露光が気軽に楽しめるようになりました。
トイカメラらしい発色が良い味を出しています(作例はLomography+直営店限定のロシアレンズバージョンで撮影されたもの)
HOLGA 135
こちらも有名なトイカメラ、ホルガ。1回目を撮影後、フィルムを巻かずに2回目を撮影することで、多重露光の写真を作り出すことができます。
作例紹介
多重露光アプリについて
多重露光はスマートフォンのアプリで楽しむこともできます。
Dazzカメラ… iPhone
こちらはiPhoneのみのアプリですが、撮影時に多重露光をすることができます。撮影画面に並んだアイコンの”□が2つ重なったマーク”をタッチすると2回撮影ができ、その2枚が多重露光され1枚の写真となります。
Snapseed … iPhone/Android
iPhoneでもAndroidでも使える画像編集アプリ「Snapseed」。画像編集画面の「ツール」→「二重露光」というメニューを選択すれば、スマートフォンのアルバム内の画像を重ねて手軽に多重露光を楽しむことができます。
デザインはとてもシンプルで使いやすく、Googleが開発したアプリのため安心して使えます。
まとめ
写真好きにとって、様々な風景を自分にしか撮れない構図で撮影するのは楽しいものですが、それに「多重露光」という表現方法が加われば、写真を撮るのが更に楽しくなり、素晴らしい作品もたくさん生み出せるはず。
多重露光で新しい写真の世界に足を踏み入れてみませんか?