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自分の感情・感性に向き合い、拾い集めた世界の欠片を編んでいく
写真家として活動し、日常の光景を収め発信されているイケダさん。イケダさんの撮る写真はどこかイケダさんの内面を映しているようで、見るほどに写真の奥深さを感じます。そんなイケダさんが何を考え、感じシャッターを切っているのかを知りたくて、お話を伺いました。
著者: イケダサトル | 作成日: 2025/01/30
― はじめにイケダさんが写真を始めたきっかけや、写真にのめり込んでいった経緯について教えてください。
学生時代、「自分には何かしら表現できるものがあるはずだ」と感じ、とにかく表現活動がしたくてバンドをしていました。そのバンドが解散した後、暇していたメンバーと二人で車で日本一周をすることになり、その時に記念撮影用にコンパクトカメラを購入したのがきっかけですね。
旅のスナップを撮りながら、ただの記念写真ではなく、心象を写し取るという表現方法に気づき、次第にのめり込んでいきました。特に一人で出来ることに魅力を感じました。当時から、何気ない風景や、付き合っていた恋人、家族を撮るのが好きで、それは今でも変わりません。
― イケダさんの写真を拝見していると、写真の奥深さについて考えさせられます。写真は当然ながら目の前の光景を映すものですが、どこかイケダさんの内面を見ているような感覚を覚えます。イケダさんはどんな思いを込めて写真を撮っていらっしゃいますか。
嬉しいご質問をありがとうございます。
よく「撮影中に何を考えているのか」と聞かれますが、実は撮影時にはあまり何も考えていないんです。目の前の光景や瞬間に感動したり、「美しい」と感じることを最も大切にしています。
例えば、悲しい気持ちで散歩していると、その感情に似た被写体が目に留まることがありますよね。その時の感情が大事だと思っていて、撮影は目の前の世界の欠片を、その瞬間感じた気持ちで「拾い集める」イメージです。
私の内面を表現するのは、セレクトの段階で行っています。写真集を作る時や、SNSで組み写真を考える時、一枚ずつ選ぶ際も、テーマを持って選びます。写真を「編む」という感覚に近いかもしれません。
全ての行程の中で一番大事にしているのは、このセレクトです。実は、良い写真はみんな撮っています。ただ、それを選べるかどうかが重要なんです。そこが作家性だと思っています。
― イケダさんの創造性に驚かされてばかりです。写真はイメージすることもイメージ通りに撮ることも難しく、どちらも試行錯誤を繰り返しながらイケダさんならではの表現を磨かれてきたのだと思います。特に調整が難しいフィルム写真において、どのような努力や工夫をされてこられましたか。
デジタルでも同様だと思いますが、フィルムは仕上がりが予想を裏切ることが多いため、ひたすらトライアンドエラーを繰り返してきました。
また、撮影した写真を何度も見返すことが重要だと考えています。フィルムが現像から返ってきたら、その写真をひたすら見ます。日曜日に現像が返ってきたら、次の撮影に行ける土曜日まで、平日はずっとその写真を見返して過ごします。「露出が足りないな」「水平が取れていないな」と反省することも多いですが、気に入った写真は何度も見返し、その写真がなぜそんなに気に入ったのかを考えます。
撮影時に「こういう写真になるだろう」というイメージを持つことは大切ですが、良い写真というのはその予想を超えてくるものです。それが楽しくて、ひたすら撮り続けています。
― デジタルが主流の時代において、フィルム写真を撮り続けていらっしゃいますが、イケダさんが感じるフィルムの魅力について教えてください。また、フィルムでなければ表現できないことがあれば教えてください。
まず単純に「色」と「最終的なアウトプット」が大きな魅力だと思っています。自分の場合、最終的なアウトプットはプリントなので、一番満足できる形としてフィルムで手焼きプリントを選びました。
確かに、画質や利便性ではデジタルがすでにフィルムを凌駕していますが、デジタルの介在しないアナログの光だけで焼かれたフィルムプリントには、デジタルでは再現できない色や諧調、そして人の手の温かさが宿ります。
俗に言う「フィルムには魔法がかかっている」という感覚を、いまだに信じています。
― 続いて、イケダさんがメインで使っているカメラ・レンズについて、それぞれの機材を選ばれた経緯や用途、お気に入りの点について教えてください。
メインで使っているカメラは2台、ハッセルブラッドの中判カメラとライカの35mmカメラです。
HASSELBLAD 500C/M + CF Planar 80/2.8
実はこのハッセルブラッド、古くからのファンの方にいただいたものです。「これで撮ったイケダの写真が見たい」と言ってもらえたことが、本当に嬉しくて。こんな高価な機材を手にして、しかもそれで撮った写真を見せてほしいと言ってもらえるなんて、光栄です。
ハッセルを使う時は、いつも身が引き締まりますね。特別な瞬間に使うことが多く、その写りは間違いなく最高です。
Leica M4 + Nokton Classic 35/1.4
35mmのカメラは古いライカです。何もしてくれない、最低限の機能だけが備わったカメラですが、その操作性とファインダーの素晴らしさに惚れ込んで選びました。小型で軽量、しかも非常に丈夫なカメラが好きなので、自然にライカにたどり着きました。
M4を選んだのは最近のことですが、「使えるうちに最高のものを使いたい」という気持ちから選びました。大のお気に入りなので、いつも一緒にいます。気に入っている点は、何もしてくれないところ。涙でファインダーが滲んでピントが合わなくても、急いで露出が合っていなくても、その瞬間にシャッターを押せる。その時の気持ちをしっかりと受け止めてくれるんです。
ー 最後に、イケダさんのベストショットと、次に狙っているカメラやレンズ、今後の抱負があれば教えてください。
この写真は、元恋人と共にかつて訪れたカモメが見られる海岸を再訪した際に撮影しました。
その時の複雑な心境、心の陰、切なさ、それらをすべて包み込み照らす太陽の光。光の中に、まるで天使が降りてきたように見えるカモメが写っているんです。この瞬間を超えるものを撮りたいと思わせてくれる、私にとってのベストショットです。
次に狙っている機材
Nikon FM3A+Macro Planar 50/2 です。寄れない機材しかない為、被写体にもっと寄った撮影をしてみたいという思いがあります。手で触れられない距離でしか撮ってこなかった自分が、触れられるものを撮るとどうなるか楽しみです。
今後の抱負
目標はずっと夢である写真集の出版です。これは必ず実現させます。現在、新しいテーマで作品をまとめているところですので、ぜひ楽しみにしていてください。
著者
写真家 長崎生まれ、愛知在住。 フィルムカメラを愛し、手焼きプリントで作品制作を行う。グループ展多数、ZINE複数発表。 2018年1月 東京個展「Alt_Medium」/ 2018年6月 大阪個展「Galerie de RIVIERE」/ 2019年 第1回写真出版賞 最優秀賞/ 2023年9月 2人展「.LAB RAINROOTS」/ 2023年10月 5人展「TOUTEN BOOKSTORE」/ 2024年2月 東京個展「ギャラリーシリウス」
イケダサトルさんの使用カメラ