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物語の1ページのような情景を。 自分の中で変わらない価値観を大切に表現していく
夕暮れから夜明けまでの時間帯を中心に北海道の美しい光景を撮影されている文月さん。文月さんの感性で切り取られた詩的で物語の中のような写真は息をのむほど美しく、眺めているとその世界に引き込まれるような感覚を覚えます。そんな文月さんがどんな一枚を追い求めているのかを知りたくて、お話を伺いました。
著者: 文月ふみ | 作成日: 2021/03/18 | 更新日: 2023/01/28
― はじめに文月さんが写真を始めたきっかけや、写真にのめり込んでいった経緯について教えてください。
写真を始めたのは高校を卒業した頃で、雑貨屋さんでたまたま見つけたトイカメラを軽い気持ちで購入したことがきっかけです。キーホルダーのようなとても小さなカメラでしたが、現像に出すと意外と写っていて、そこから一気にフィルムで撮る写真の楽しさにのめり込んでいきました。
当時お世話になっていたカメラ屋さんでは、写真が好きな人たちが年代関係なくカメラや写真のことを話していたり、お店の方が撮影に連れていってくださったり。それまで遠出することがあまりなかった自分にとって、北海道の風景はとても広大で、見るもの全てが新鮮でした。
― 文月さんの写真は、どこか行間を読むような文学的な印象を受けます。文月さんの感性や美意識が写真として表現されているからだと思うのですが、文月さんは写真を通じてどんなことを表現しようとされていますか。また、写真家でも写真家でなくても影響を受けた方はいらっしゃいますか。
北海道の自然の風景やこれからもずっと変わらずに在り続けて欲しい時間など、何か自分の中で価値の変わらない普遍的な作品が残せたらという想いがあります。また、絵を描くことも好きなので、自分が見てみたい理想の光景をファインダー越しに絵作りすることも多いです。物語の1ページのような情景を、現実の世界で表現できたらと思っています。
写真家さんでは岩倉しおりさんに影響を受けました。写真を始めた当初からHPなどを通して繋がりがあったのですが、彼女にしか撮れない作風はもちろん、とにかく写真との向き合い方が何年経っても変わらずにどこまでも真っ直ぐで、ずっと憧れの存在です。
また、友人で画家の鈴木果澄さんの作品にもとても影響を受けています。彼女の描く北海道の風景や、森の中に佇む動物たち、吸い込まれるような星空を眺めていると、作品の中で時間が本当に流れているようで、とても不思議な気持ちになります。もう何年も前の彼女の個展での作品や言葉たちが、私の中ではずっと色褪せずに心の中にあり、人の手が生み出した作品が人に対して与える影響の強さを身を以て実感しています。
― 月や青色の表現が実に多様で、文月さんの月や青色に対するこだわりを感じます。文月さんが月や夜明け時の光景に惹かれる理由や、撮り続けるからこそ見えるものなどがあれば教えてください。
写真を始めた頃は、日中に撮影に出掛けることが多かったのですが、撮影を続けるにつれ静けさの中にある美しさに惹かれていくようになりました。
月や夜空・夜明け前のささやかな時間など、静けさを纏った風景は、誰もが抱えている寂しさや哀しみにもそっと寄り添ってくれるような気がしていて、その光景を眺めていると、自分自身も心が救われていく気がします。私自身も寂しさや哀しさなどのマイナスな感情を否定しないような、見てくれた人の心にそっと寄り添えるような作品が残せたらと思っています。
― 文月さんは北海道を中心に撮影されていますが、特に好きな光景や場所があれば教えてください。
北海道の中でも特に石狩の風景が好きです。札幌市の隣の市で、海や川や自然が沢山ありキツネや野鳥にも出会うことが出来、エネルギーに満ちていて不思議な魅力を感じます。季節によってはもちろん、月の満ち欠けや潮の満ち引きなどによっても見える風景は全く異なり、今後も撮り続けていきたい場所の一つです。
また、ここ数年は冬の撮影にもとても魅力を感じています。気温の低い地域で見られる霧氷やダイヤモンドダストなどもそうですし、十勝の雪はサラサラで粉砂糖のようにきらきらしていることも、ここ数年で知りました。今までずっと長くて寒い冬が苦手だったのですが、冬にしか撮れない被写体が多くあることに気付いてからは、一番好きな季節となりました。
― 文月さんはフィルムカメラをメインに使用されていますが、デジタルが主の時代において、あえてフィルムを使う理由や、文月さんが感じるフィルムの魅力を教えてください。また、夜明け時などのフィルムの撮影はとても難しいと思いますが、イメージ通りの写真を撮るためにどんな工夫をされていますか。
その場の空気ごとフィルムの中に閉じ込める感覚や、フィルムにしか出せない色味や質感には、やはりとても魅力を感じます。何十年も昔のカメラが未だに現役で使用できることや、撮影したフィルム自体がずっと残っていくこともフィルムが好きな理由の一つです。デジタルで撮った写真はそのときの感情で消してしまい後悔することもあるのですが、フィルムで撮影した写真はずっと残り続けていくという安心感を感じます。本当に残したい時間は今後もフィルムで残していきたいです。
好きな時間が夜明け前の薄暗い時間帯と限られている為、事前にイメージを膨らませて準備をするようにしています。撮影場所や天候はもちろん、月の満ち欠け・日の出の方角や風の強さによっても見える光景は異なるので、なるべくその日の状況に合った、その時に一番撮りたい作品が撮れるように心掛けています。
― 文月さんがメインで使っているカメラ・レンズについて教えてください。それぞれに辿り着いた経緯や、それぞれのカメラ・レンズのお気に入りの点について教えてください。
現在使用しているメインのカメラは中判カメラのPENTAX67です。レンズは標準レンズの105mm/f2.4を使用することが多いです。写真を始めた頃は、35mmのフィルムカメラを使用していましたが、義父から頂いたPENTAX67を使ってみて、覗いた時のファインダー越しの立体感や、一枚一枚の描写の繊細さに魅了されました。元々中判カメラのHasselbladも使用しており、撮りたい被写体や状況に合わせて併用しています。
デジタルカメラはSONY α7 IIを使用していて、タムロンのズームレンズ28-75mm/f2.8もしくは、フィルムカメラで使用しているオールドレンズをつけて撮影することが多いです。
― 最後に、文月さんのベストショットと、次に狙っているカメラやレンズ、今後の抱負があれば教えてください。
たまたま出逢えた、夜明けの細い月と金星が寄り添っている光景があまりに美しく、この日をきっかけに今まで以上に月の満ち欠けに興味が湧きました。月と鳥と、石狩の夜明けの風景。私の好きなものが沢山詰まった一枚です。
次に狙っているカメラは決めきれていないのですが、以前義父にPENTAX67の望遠レンズ(400mm/F4)を頂いたので、もっと活用して月の満ち欠けや野鳥の撮影・北海道の風景を残せたらと思っています。また、動画の撮影にも興味があるのでデジタルでの撮影も、今後は練習していきたいです。
著者
文月ふみ
北海道在住。夕暮れから夜明けまでの時間帯を中心に、主にフィルムカメラで撮影。月や星・人物から成る写真を、ランプや古い椅子など自身でセレクトした小物を用いて、物語の一ページのような情景を演出する。2021年2月からアイルランドのシンガーソングライターSaoirse Casey(サーシャケイシー)、バイオリニストAtowa Yuriによる音楽レーベル“Eala Label”(エアラレーベル)に所属。スチール写真を担当。
文月ふみ
北海道在住。夕暮れから夜明けまでの時間帯を中心に、主にフィルムカメラで撮影。月や星・人物から成る写真を、ランプや古い椅子など自身でセレクトした小物を用いて、物語の一ページのような情景を演出する。2021年2月からアイルランドのシンガーソングライターSaoirse Casey(サーシャケイシー)、バイオリニストAtowa Yuriによる音楽レーベル“Eala Label”(エアラレーベル)に所属。スチール写真を担当。
文月ふみさんの使用カメラ
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PENTAX 67文月ふみさんの使用レンズ