どこよりも高値に挑戦中!大手より20%高い製品多数大手より20%高い製品多数
定額買取
流れていく一瞬に美しさを感じて。 あるべきものが無いような寂しさを写真に残していく
会社員として働くかたわら、懐かしさを感じる風景をフィルム写真に収め発信されているfallさん。fallさんの撮る写真を眺めていると、改めて写真の美しさや写真の意義を感じます。そんなfallさんがどんな瞬間に魅了され残そうとされているのかを知りたくてお話を伺いました。
著者: fall | 作成日: 2021/10/28 | 更新日: 2023/01/28
― はじめにfallさんが写真を始めたきっかけや、写真にのめり込んでいった経緯について教えてください。
フィルム写真を本格的に撮り始めたのは4年ほど前です。
何処かのwebサイトで、LOMO LC-Aで撮られた色彩が強くインパクトのある写真に心を惹かれて、その勢いで雨樹一期さんのフィルム写真ワークショップに参加したのが、フィルム写真に熱中するようになった最初のきっかけだったと思います。
フィルムを裏返したレッドスケールフィルム、感光フィルムの制作など、とても遊び心のあるワークショップで、フィルムでしかできないことの可能性や面白さを知りました。
同じ頃、音楽家のharuka nakamuraさんの「アイル」という曲のジャケットやMVから写真家の岩倉しおりさんについて知り、自分が写真を撮ることの意味について深く考えるようになったのが、2つ目のきっかけです。日常の美しさ、懐かしさ、あるべきものが無いような寂しさを写真にしたいと思うようになりました。
もともとは音楽に対して求めていたことなのですが、音楽で表現するに至らなかったことをフィルム写真で表現できるかもしれないと思い撮り続けている内に、いつのまにか写真が生活に欠かせないものになっていきました。
― 写真の魅力は人によって感じ方が異なりますが、fallさんは、残さなければ消えてしまう移ろいをすくいとるように撮られているように感じ、写真の美しさや意義のようなものを改めて感じます。fallさんは、どんな瞬間に魅力を感じシャッターを切っていらっしゃいますか。また、写真家でも写真家でなくても影響を受けた方はいらっしゃいますか。
ありがとうございます。
基本的にはあまり考えずに、光が美しいなと心が動いた時に本能に任せて撮っています。
ただ、なぜそれらを美しいと思うのだろうとよく考えます。小さな頃から広々とした田舎の田園風景やあぜ道、古い建物や日のあたる部屋など、どこにでもあるようなものに懐かしさや何かを思い出せそうで思い出せないような感覚を感じることがあって、その時間や情景がいつまでも残れば良いのにと寂しく思うことがありました。
変わっていくこと、失われていくこと、戻れないことを美しいと思っていたのかもしれません。ノスタルジアとかサウダージに近いかもしれませんが、もっと輪郭が曖昧で言葉にできないものです。
それが自分の根幹にあって、今も無意識に同じことを追い求めている気がします。その時の光や空気を過去の一点としてフィルムに収めるために、残れと祈るようにシャッターを切っていると思います。
影響を受けたのは、自分の外の世界ではなく自己の内面を写そうとするタイプの写真家です。前述の雨樹一期さん、岩倉しおりさん以外では、文月ふみさん、川内倫子さん、石川直樹さん、ソール・ライター、ヨセフ・スデク、アルフレッド・スティーグリッツ。あと、音楽家のharuka nakamuraさん。美しいと思うことを自分の外に出す勇気をもらいました。
― fallさんの写真は、光や影・色彩が印象的で、その時の記憶をより鮮明に思い起こしてくれるような印象を受けます。光の捉え方や色彩など、fallさんのイメージを表現するために撮影時の設定や現像面でどんなことを心がけていらっしゃいますか。
光の方向や影の存在感を意識してフレーミングしています。
朝や夕方の横からの光が好きなのですが、光の移り変わりが早いので良いタイミングを逃さないように心がけています。絞りは開放近くで撮ることが多く、逆光でレンズの中に光が一杯入っている状態で撮ることが好きです。
アンダーにならないように少し明るめに撮って、データ化やプリントの時にノーマルの明るさにしてもらうこともあります。ネガフィルムはオーバー方向には3段階ぐらいの余裕があるので、明るい分には過度に気にせず撮っています。
狙って撮る時以外は自分の思い通りの写真が撮れているかはあまり気にせず、想像を超えて素晴らしい写真になっているかもしれないという期待感を楽しんでいます。
フィルムの現像とデータ化は京都のPhotolabo hibiさんによくお世話になっていて、青を綺麗にとお願いしています。いつも美しく仕上げてくださります。仕上げ時に自分以外の人の感性が反映されることもフィルム写真の面白さの一つです。
― fallさんは、オールドレンズ、フィルムを愛用されていらっしゃいますが、デジタルや光学性能に優れたレンズが主流の時代においてあえてオールドレンズ やフィルムを使われる理由やその魅力について教えてください。また特にオールドレンズは情報や流通量が少なく出合いが難しいと思いますが、どのように情報を収集し出合っていらっしゃいますか。また、愛用されているフィルムについても教えてください。
高精細な描写や色の再現性を重視した現代のレンズより、収差があったりフレアの出るオールドレンズの方が空気感をふんわりと撮りたい自分には合っていると思います。
レンズは、気になる写真家の方が使われているものをFlickrやブログサイトなどで調べて主にオークションで購入しています。
またフィルムについては、フィルムの種類によって色の特徴があるところ、階調の豊かさや立体感があるところ、滑らかさが好きです。粒子が荒くても色が破綻していても逆に面白いです。
フィルム写真は撮影後にすぐに確認できなかったり手間がかかりますが、選んでから仕上がるまでのプロセスや偶然性に醍醐味があります。
撮影してから写真を見るまでの間、想像を膨らませながら待っていること自体が楽しみでもあります。その楽しさによって、ここまで写真を続けることができているのかもしれません。
一番よく使うフィルムはKodakのUltramax400で、コストパフォーマンスが高くて青がよく出るところが良いと思います。色味に関して言えばKodak Portra400の方が淡い透明感があって好みです。
また、既に生産は終了していますが、FujifilmのPRO400hは独特の青味が綺麗で最近よく使っています。その他、期限切れフィルムや海外の珍しいフィルムを使って遊んだりもします。
■ Kodak Ultramax400
■ Kodak Portra400
■ FUJIFILM PRO400h
― 続いて、fallさんがメインで使用されているカメラ・レンズについて、それぞれの機材を選ばれた経緯や使い分け方、またお気に入りの点について教えてください。
メインで使っているカメラはContax139quartzとContax159MMです。
初期はContax167MTを使っていましたが、親指で巻き上げるタイプの方が1枚ずつじっくり撮る自分に合っていました。また、フィルムを巻き上げる感触がある方が、カメラの中で起こっていることをイメージすることができて妙に安心感があります。
Contax139quartzは機能は非常にシンプルですが、Contaxの一眼レフの中では最小最軽量で扱い易いのでよく持ち歩きます。
Contax159MMもシンプルですが最高速シャッターが1/4000など、より多機能で重宝しています。
そして、どちらも見た目が可愛いです。ずっと使いたいと思ったので、主にContaxの修理を専門にしている北海道の小畑カメラサービスさんにオーバーホールをしていただきました。
お気に入りのレンズは
* Contax Carl Zeiss Planar 50mm F1.4 AEJ
* Contax Carl Zeiss Planar 85mm F1.4 AEG
* Voigtlander Color-Ultron 50mm F1.8
* Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
です。
Y/Cマウント、M42マウントのレンズを15本ほど試したのですが、気付けばPlanar 50mm f1.4ばかり使っていました。50mm f1.4、85mm f1.4のどちらも、光が空気を含んでいるようにふわっと柔らかく、線が太くて発色が良いです。時間が静止しているように静かな光を写し取りたい時にはPlanar 50mmf1.4、85mmf1.4を選びます。
Color-Ultron 50mm f1.8はPlanar 50mm f1.4の描写に近いのですが、より精細でよくボケます。Planarとは方向性の違った現実世界の美しさを切り取ることができる気がして、M42マウントの中では一番好きです。
Flektogon 35mm f2.4は、上記レンズと比べるとオールド感があって味があると感じます。街や日常をさっと撮る、気になったものを寄って撮る、色の濃い景色を撮る、などなど、いろんな場面で活躍します。しっかり写るので、雰囲気というよりは意味を写すレンズだと思います。
あと、3ヶ月ほど前にPentacon Sixを買いました。以前から中盤カメラに少し興味を持っていたのですが、値段や大きさがネックになって手を出せないでいました。Pentacon Sixは中判カメラにしては少し小さめで、フォルムの美しさが唯一無二、Carl Zeiss Jenaのレンズを使えます。壊れやすいリスクと天秤にかけてとても迷いましたが、ONE SCENEさんの記事に後押しされました(笑)。
まだフィルム4本分しか撮影をしていませんが、Biometar 80mm f2.8の描写が想像以上に素晴らしく、高精細過ぎず柔らかさがあるところに心を奪われました。これは一生モノになるかもしれないと思うほど気に入ったためオーバーホールに出しました。壊れやすく取り扱いが難しいですが、大事に使っていきたい1台です。
全体的にきめ細かに写すよりは気配や雰囲気を写す方が好きで、広く全体を撮るよりは自分の目で見える範囲のものを撮る傾向があるので、選ぶ機材もそれに寄っては来ていますが、偏りすぎないように、飽きないように時々未経験のものや苦手なものにチャレンジしています。
― 最後に、fallさんのベストショットと、次に狙っているカメラやレンズ、今後の抱負があれば教えてください。
今回はお声がけいただき、ありがとうございました。
北海道の洞爺湖の写真です。朝早くの薄暗い中で湖の静けさを撮ることができました。
今はPentacon Sixの他のレンズが少し気になっていますが、購入予定はありません。今の機材を大切にしながら、いつか原点に戻って写ルンですやLOMO LC-Aを使ってみることも考えています。
最近になって漸く写真史や写真論の勉強を始めました。今まで撮ってきた明るい光の写真とは対照的な、曇りや雨の日の写真に挑戦しています。まだまだ勉強不足で学ぶことが多いです。冬になったら雪の写真を撮りたいです。
時々展示もしていきたいと思っています。大阪のSolarisさんでのグループ展(10/26-11/7)にて初展示の予定です。
その他、音楽に関することに写真を通して関わることができればと考えています。また、フィルム写真の繁栄に繋がる活動に携わりたいです。
これまで出会ったたくさんの写真、写真家の方に、感謝しています。自分の写真が誰かの心を揺さぶることができるように続けていきたいです。
著者
fall
大阪生まれ、京都在住。サーバーサイドエンジニア。 旅をしながら懐かしさを感じる風景をフィルムカメラで撮っています。 Solaris大和田良ゼミ・関西クラス修了作品展「reframing」にて初めての展示を予定。
fall
大阪生まれ、京都在住。サーバーサイドエンジニア。 旅をしながら懐かしさを感じる風景をフィルムカメラで撮っています。 Solaris大和田良ゼミ・関西クラス修了作品展「reframing」にて初めての展示を予定。
fallさんの使用カメラ
fallさんの使用レンズ