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Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4

Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4

「とにかく、普段から撮りまくる」。写真の腕を上達させる方法として、昔から言われてきた言葉です。むやみやたらに撮る事を薦めている訳では無いとしても、さりとて、普段からカメラを持って「撮りまくる」為にはどのようなレンズが良いのでしょうか。最近ではズームレンズの性能が格段に上がったことも有り、カメラ購入時の標準系セットズームをチョイスされる方が殆どかも知れませんが、せっかくオールドレンズの世界に足を踏み入れたのなら、オールドレンズで「撮りまくる」事にふさわしいレンズが無いのか、気になりますよね。今回はオールドレンズの中でも極めて万能なスペックで、「撮りまくり」用レンズに相応しいレンズであるCarl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4をご紹介します。

オールドレンズ / Carl Zeiss / 広角
使いやすい35mmという焦点距離と、20cmまで近接撮影が可能な「万能型オールドレンズ」とも呼べる、Carl Zeiss Jena製準広角レンズ。

SONY α NEX-7 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Paul Chiorean)

SONY α NEX-6 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Yosuke Shimizu)

SONY α NEX-6 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Yosuke Shimizu)

Voigtländer Bessaflex TM / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Jim Killock)

PENTAX K-7 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Hiroyuki Takeda)

Canon EOS 5D Mark II / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Davide Gabino (aka Stròlic Furlàn))

歴史

 
MC Flektogon以前
 
Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4のベースモデルとなるCarl Zeiss Jena Flektogon 35mm F2.8は、1953年にCarl Zeiss Jena のHarry Zöllner(ハリー・ツェルナー)博士とRudolf Solisch(ルドルフ・ソリッシュ)によって開発されました。
 
既に当時のZeissでは「Biometar」や「Biogon」といった広角レンズが存在していましたが、この頃に普及し始めた一眼レフ用のレンズとしてはバックフォーカスが長く、そのままの構造では使用できなかった為、Biometarを逆望遠レンズの光学系を用いて再設計するという方針で開発されたレンズがこのFlektogonです。
 
同時期(1950年)にはフランスのPierre Angénieux(ピエール・アンジェニュー)によって「レトロフォーカス」の名で逆望遠レンズの特許が申請されていますが、逆望遠レンズの理論自体は1930年代には知られており、Flektogon自体の研究も1949年頃より行われていた模様です。
 
初期のFlektogon 35mm F2.8は、Flektogonの大きな特長の一つである短い最短撮影距離は実現されておらず(約36cm)、マクロ性能に関しては他の広角レンズとほぼ同等の性能でしたが、描写性能に関しては当時の他社製逆望遠レンズよりも圧倒的に優れています。

この時代では良好に収差が補正された逆望遠レンズの設計には困難が伴い、コンピューターを用いた設計で性能が向上した逆望遠レンズの登場は1960年代まで時間がかかる事となります。比較対象として、西側Zeissがコンピューター設計を用いて開発した「Distagon」の登場は1963年となっており、当時のFlektogonがいかに優秀なレンズで有ったかを示す一つの事例とも言えるでしょう。
 
その後、1950年代半ば頃にモデルチェンジが行われ、このモデルでは最短撮影距離が18cmとされましたが、ピントリングが最短方向へ回るにつれ開放絞りがF4になる構造となっており、MC Flektogonのように開放でマクロ撮影が可能なレンズでは有りませんでした。また、絞り羽根も初期の9枚から5枚に変更されています。
 
MC Flektogon以降
 
Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4は1972年、東ドイツのCarl Zeiss Jenaによって開発・発売されました。その名が示すように、レンズにはマルチコート(MC)が施され、開放F値も2.4まで明るくなりました。

また、最短撮影距離での使用時でも開放F値で使用出来る構造となり、後にはMCPancolarと同様、絞りauto連動切り替えスイッチ付きや、電気接点付きのタイプも登場しています。

このように、既に定評のある描写に加え、近代化にも対応しCarl Zeiss Jenaを代表する広角レンズの一つとも呼ばれたMC Flektogon 35mm F2.4でしたが、1990年、まるでドイツの再統一を見届けるかのように、その生産を終えました。


描写

 
APS-Cサイズ機での35mm換算焦点距離が54~56mmとなるMC Flektogon。優れた描写性能を備えつつ、フルサイズ機やフィルムカメラでの50mm標準レンズに近い感覚で使える焦点距離や、20cmまで寄れるマクロ性能という点が、MC Flektogonが「万能型オールドレンズ」である所以です。
 
実際の撮影シーンでは、身近なスナップやポートレート、やや引いた状態での風景撮影から、料理にフォーカスしたテーブルフォトやマクロ撮影にまで対応出来る上、Carl Zeiss Jenaの名に恥じないしっかりとした描写性能がそれぞれのシーンに活かされた作例をご紹介します。

【スナップ】

FUJIFILM X-T1 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Artur Malinowski)

【ポートレート】

PENTAX K-5 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Hiroyuki Takeda)

PENTAX K-5 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Hiroyuki Takeda)

【風景】

FUJIFILM X-T1 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Artur Malinowski)

PENTAX K-5 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Hiroyuki Takeda)

PENTAX K-5 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ Hiroyuki Takeda)

【テーブルフォト】

Canon EOS 50D / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ wakanmuri)

【マクロフォト】

SIGMA SD1 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ keiichiro shikano)

Panasonic LUMIX DMC-G5 / Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4
出典:flickr(@ A_Peach)

作例を通して、MC Flektogonの描写は、広角レンズにありがちな湾曲した歪みは感じられず、近接撮影時の背景も自然な感じを保ちながら、柔らかく滑らかにボケる様子が伺えます。

ひと昔前のマクロ機能付きと称して発売されていたレンズの中には、遠景側か近景側のどちらかが明確に崩れる事が多かったのですが、MC Flektogonは全域に渡ってシャープな描写と滑らかなボケ具合を両立し、「万能」の評価が大げさでは無い、驚異的な性能を持つオールドレンズと感じていただけたと思います。


ネットユーザーの声・レビュー

 
Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4は「Carl Zeiss Jenaの最高傑作」や「オールドレンズの王様」のような声が聞かれ、ほぼ否定的な評価は見られないようです。

実際に撮影した上でのレビューでも、オールドレンズらしい描写ながら“甘さ”のようなものは感じないといった意見が多く、その描写性能は多くの人を満足させている様子です。

以前より銘レンズとして名を馳せていたMC Flektogonですが、ミラーレス機の普及により、フィルムカメラの時代に比べて使用できるカメラの選択肢が広がった事で、改めてその実力が再確認されたレンズとも言えるでしょう。


中古相場

 
これまでご紹介してきたオールドレンズに比べると、やや高めの相場感となっているレンズです。オークションで運が良かった場合には30,000円前後での落札も見られるようですが、総じて40,000円近くの落札相場でまとまっており、コンディションや付属品の内容等によっては40,000円を超える場合も少なくありません。専門店での中古価格も40,000円以上の価格が標準的な値付けの模様です。

海外オークションでは、日本円で約10,000円台での出品も見られますが、入札が進むにつれ、落札時にはそれなりの金額で取引される事が予想されます。また、安いと思って海外オークションで落札しても、代行業者を利用した場合には必要な手数料に加え、高額の国際送料を考慮すると、国内で購入するより高額になる可能性には要注意です。

また、多くの海外出品者と私達の考える「コンディション評価」には未だに大きな隔たりが存在しますので、リスク回避の点からも専門店で良質の中古を探した方が良いかも知れません。
 
MC Flektogon 35mm F2.4には、生産時期の違いにより数タイプのモデルが確認されています。ネット上では細かく4~5タイプに分類されている様子ですが、ここでは購入時の参考となる相違点をご紹介します。
 
【最短撮影距離と最小絞り値に関して】

MC Flektogon 35mm F2.4の最初期型の最短撮影距離は19cm、以降の型は20cmとされています。MC Flektogonのピントリング上は最短距離を示す数値が「0.2」となっていますが、「0.2」表示を超えてもピントリングが回る為、ネット上での解釈も18cm~20cmと分かれている様子です。

他の相違点としては、最初期型の最小絞り値はF16、以降の型はF22となっていますので、最小絞り値で最初期型かどうかを判断する方が確実でしょう。
 
【絞りauto連動切り替えスイッチ付きや電気接点について】

MC FlektogonもMCPancolar同様に絞りauto連動切り替えスイッチ付きや電気接点付きのモデルが存在します。

特に電気接点付きのモデルの場合、マウントアダプタのネジ穴に接点が食い込んで取り外しが出来なくなる可能性が考えられます。この点が不安な場合は、購入を検討する個体の製品名が[electric MC Flektogon]となっていないか、確認を忘れずに行いましょう。

Carl Zeiss Jena electric MC Flektogon 35mm F2.4の外観
出典:flickr(@ keiichiro shikano)


まとめ

 
普段から持ち歩くカメラにセットして「撮り歩き」に最適な一本のCarl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4。素直に考えると撮り歩きに「便利」なのは標準系の大口径ズーム等が候補なのでしょうが、時にズームレンズの「便利」さは撮影時のポジションやアングル決定時に安易な選択を採ってしまうマイナス要因になっている事も少なくありません。

優秀な描写や単体で近接撮影が可能な点に加えて、Carl Zeiss Jena MC Flektogon 35mm F2.4ですが、それらに加えて撮影者の「腕」をも上げてくれるレンズとして「万能」の評価が与えられているのかも知れませんね。
基本仕様
対応マウントM42マウント
フォーカスMF
レンズ構成6群6枚
絞り羽根枚数6枚
焦点距離

最短撮影距離20.0cm
最大撮影倍率
開放F値F2.4〜22.0
画角63度
防塵-
防滴-
サイズ・重量
最大径×長さ
重量245g
フィルター径49mm
発売日
発売日1972年01月01日