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自分らしい写真表現を。「富士フイルムのフィルムシミュレーション」全18種類を紹介
フィルム時代から80年以上に渡って色彩表現を追求・研究してきた富士フイルム。長年培ってきた色彩表現をフィルムシミュレーションという形で現代に蘇らせました。そんな富士フイルムの技術の結晶を作例を通じてご紹介します。
著者: ONE SCENE編集部 | 作成日: 2022/01/08 | 更新日: 2023/01/28
フィルムシミュレーションの特徴を知って、自分らしい表現を
フィルムシミュレーションとは、FUJIFILM Xシリーズ、GFXシリーズに搭載されている「色調(色彩の濃淡・強弱)や階調(柔らかさ・硬さ)をコントロールする」機能のこと。フィルムの開発を始めて以来、80年以上に渡り色の研究を続けてきた富士フイルムの技術の結晶です。
そんなフィルムシミュレーション全18種類について、フィルムカメラを含めFUJIFILMのカメラを愛用されているRioさんに各シミュレーションの特徴を作例を交えて教えていただきました。
教えてくれた方
フィルムシミュレーション全種類を紹介
まずは全18種類を並べてみて
続いて、個々のフィルムシミュレーションについて、相性の良い作例と共に特徴を紹介していきます。
✱Provia/スタンダード
18種類のフィルムシミュレーションの中でも特に自然な再現力を持ち、スタンダードという名の通り、どのような場面でも安心して撮影できるモードです。富士フィルムの色が存分に味わえます。
✱Velvia/ビビット
18種類のシミュレーションの中で最も鮮やかな色彩。美しい色合いの風景や植物に出会った時、オーバーにならない程度にその魅力を際立たせてくれます。くすみを抑えた健康的な色とコントラストのメリハリが目を引く一枚に。
✱Astia/ソフト
Velviaよりもソフトではありますが、十分に鮮やかなので色再現を重視したいときにお勧めです。階調が柔らかなので人肌も優しく再現してくれます。
また豊かな階調は雨や雪などしっとりとした風景にも向いているそうで、冬枯れたピンクのバラに積もった雪を撮影してみました。朝の光に照らされ、間も無く少しずつ溶けるだろう雪が伝わる気がします。
✱クラシッククローム
ドキュメンタリー調な低彩度でグッと締まった描写は一気に独特な雰囲気を作ってくれます。硬めの階調が木々の陰影の細部まで表し、立体感を感じます。
他のモードでは青空にマゼンタを加えることでヌケを良くするそうですが、クラシッククロームは青がシアン系に出るそうで、空と水面の青に爽やかな印象を受けました。一方逆光の光は柔らかく、シーンで使い分けるとまた違った一面が味わえるでしょう。
✱クラシックネガ
「記憶色」とは記憶に残った色・心地の良い色・実際よりも少し濃い色と言われています。その「記憶色」よりも更に深く懐かしい色に、ふと心を奪われる方も多いのではないでしょうか。
何気ない日常の切り取りもノスタルジックに、また最近人気のエモーショナルな情景に変わります。
✱PRONeg.hi
暗い曇りの日でも、メリハリのある階調と鮮やかな発色で引き締まった写真になります。光の少ない屋内や色の綺麗さを保ちつつ陰影を表現したい時などにおすすめです。
フィルムシミュレーションの中でもPro Neg 系が一番測色に近いそうです。
✱PRONeg.std
強い光も柔らかくふんわりと描写してくれます。彩度は控えめなので肌の色も優しい色に。コントラストが強すぎず、逆光でのポートレートは爽やかな光の捉え方になり、好みの雰囲気になりました。
PROVIAよりも抑えめの彩度ではありますがとても自然。潰れがちな黄色も落ち着いた色味になり、水仙の副花冠も綺麗に再現されました。
✱ETERNA/シネマ
富士フィルムの映画用フィルムをベースにしたという、映像を邪魔しない低彩度で主張し過ぎない描写のシミュレーション。
ラチチュードが広いので白飛び・黒飛びしづらく、例えば1枚目の写真では他のモードでは明るくて見えない遠くの山のシルエットが写り、夕日の色が抑えられて少し切ない雰囲気にも感じられます。フィルターのかかったような柔らかな空気感が映画のワンシーンの様に表現してくれます。
✱ETERNA/ブリーチバイパス
クラシッククロームより低彩度、高コントラスト。どこか冷たさや切なさを感じるドラマチックな雰囲気になります。
冬の朝に写した濃紺の海。ブルーグレーの空に広がる雲へ反射して拡散する光、遠くの毛嵐と水面の煌めきが鮮明に描写され、臨場感を与えてくれます。
✱モノクロ(スタンダード、+Ye、+R、+G)
ACROSよりも控えめなコントラストと階調。グラデーションがとてもきれいで質感までも伝わってきます。
暖かみを感じさせ、光も影も優しい雰囲気に。
積もった雪が朝陽を浴びて青白く光り、電柱の影は青色に見えました。フィルターの補色が濃くなるので、くっきりとした1枚に。青空は濃厚になるので、晴れた日の空を表したい時にぜひ使いたいです。
ほどよいコントラストと階調が肌の色や光をナチュラルに見せてくれます。
✱ACROS(スタンダード、+Ye、+R、+G)
超微粒子・高感度のフィルム「ACROS」を冠したフィルムシミュレーション。階調のトーンカーブが滑らかで、グレー部分がとても美しく感じました。しっとりとした艶めきの描写に見惚れてしまいます。
ACROSの中でも中間のコントラスト。散歩しながら何気ない場面を撮るのも楽しい。
青空や海の青が濃厚に、一方赤は薄くなります。コントラストがはっきりとしているので、どの色を活かしたい場面なのか考える必要もありそうですね。
モノクロのグリーンフィルターよりもひきしまった印象。光と影を繊細に表現してくれます。
✱ セピア
記憶の中にある懐かしい場面を思い浮かべた時のよう。光の射す光景は暖かく、ゆったりとした時を感じます。
自分だけの表現を。カスタム設定について
シミュレーションは以上となりますが、搭載された複数のパラメーターで粒状感・階調・カラーなどを細かく調整でき、より自分の考えるイメージに近づけることが可能です。
またRAW撮影をしておくと、カメラ内現像や富士フィルムのRAW現像ソフト「Fujifilm X RAW STDIO」で後からフィルムシミュレーションの変更や編集をすることができます。
それぞれの特徴を活かして目的やイメージによって使い分けるのもよし、普段使いならこだわらずに好きなモードでパシャパシャと撮る楽しみを味わいたいと思いました。
試しに、ETERNA/ブリーチバイパスの設定で「シャビーシック」のイメージにカスタムしてみました。
エテルナブリーチバイパスの表現を活かしてシックが意味する落ちつきを保ちつつ、ホワイトバランスやトーンカーブなどを変えることでアンティーク調の温かみが加わりました。雑貨や花のテーブルフォトに似合いそうです。
フィルムシミュレーションの選択・設定方法について
フィルムシミュレーションの選択・設定は非常に簡単で、以下の手順で設定することができます。
カメラ内現像について
RAW撮影したファイルをPCに移動せず、カメラ内で設定を変えてjpgファイルで保存(現像)することができます。変更できる機能は限られますが、カメラ内で現像するので画質の精度が高いそうです。またjpgファイルでの保存でスマートフォンに転送することがスムーズになります。
今回は分かりやすく夜景がシネマチックなイメージに変わるよう、現像してみました。
最後に、FUJIFILM・フィルムシミュレーションの魅力について
多くのフィルムを生産してきた富士フィルムの色の表現に加え、比較的ラチチュードが広いのを実感でき、フィルムカメラを愛用している私にとっては嬉しい発見と驚きが詰まったカメラです。
撮影に出かける時は最低カメラ2台と替えのレンズを持つので、X-S10のコンパクトさと軽さは躊躇せずカバンに入れられるポイントになっています。且つグリップのホールド感がしっかりとしているので、片手で持って歩くのが自然なスタイルになっているくらいです。
これまではチルト式モニターのカメラを使用することが多かったのですが、X-S10はバリアングル式なので液晶を自由に動かすことができ、個人的にはテーブルフォトを俯瞰で撮ることがより快適になりました。18種類のフィルムシミュレーションにはそれぞれにこだわりを感じる魅力があり、正直使い分けにいつも迷ってしまいます。
私は普段フィルムカメラをメインで使用しているのですが、それはまるで今日はどのフィルムをカメラに入れていこうかと悩む時にわくわくするのと同じような感覚なのです。
1度入れたフィルムは枚数を撮り終えるまで取り替えることができないので、選ぶ際に少しシビアになってしまうこともありますが、フィルムシミュレーションならシーンや気分によっていつでも替えられる気軽さがあります。
それぞれに世界観があり、モードによっては一枚の写真の世界観ががらりと変わって見える楽しさを味わえる…
しかし不思議とその写真から伝わる自分の中の‘心地良さ’や大切にしたいと思う根底の部分は変わらない気がしています。故にオーバーなレタッチが苦手な私にも違和感がない。 そして撮って出しでお気に入りの1枚になる。そんなところも私がフィルムカメラの好きな理由と通じるものがあります。
以前はX-T2を使用しており、X-S10を我が家に迎えたのはまだ数ヶ月前。
もっと一緒の時を過ごし、これからめぐる季節とともにどんな風景を残せるのだろう…
そう思いを馳せる今日この頃です。
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