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【徹底解説】ポイントを押さえれば難しくない。星空の綺麗な撮り方
星空の撮影をしたことはありますか?SNSや写真誌などで目にするような、美しい星空を撮影することはとても難しいのではと思いがちかもしれませんが、ポイントをしっかりと押さえることで、初心者でも十分に星空撮影を楽しむことができます。この記事では基本的なカメラやレンズの設定、撮影に必要な機材などを簡単にまとめました。
著者: ONE SCENE編集部 | 作成日: 2022/10/06 | 更新日: 2023/01/28
初めての方にこそ読んでもらいたい。写真家に聞く「星空撮影の撮り方」
写真を撮ったことのある人なら一度は憧れる「星空撮影」。いざやってみようと思っても、準備や設定が大変そうで断念された経験がある方も多いのではないでしょうか。
今回は、そんな星空撮影を、「事前準備(機材など)/事前チェック(天候や月齢・ロケーションなど)/設定/撮影の手順」に沿って、写真家のRioさんに伺いました。
教えてくれた方
【事前準備】星空の撮影に必要な機材と、その機材にあると良い機能
カメラ
まずは星空撮影に強いカメラの特徴を押さえておきましょう。
- 構図やピントを合わせる際に細かな部分の確認が必要となるため、ライブビュー撮影の機能が搭載されていること。
- その場の状況によって設定を細かく変える必要があるのでマニュアルモードが搭載されていること。
- 星空は暗いので高感度の撮影が可能であること。しかし感度を上げるとノイズが発生するので高感度ノイズに強いこと。
- 光を取り込む量が多いため、画質が良いセンサーサイズの大きいカメラを選びましょう(センサーサイズの大きさは、フルサイズ > APS-C > マイクロフォーサーズのようになります)。
星空撮影に特化した機能が搭載されているカメラもあります。例えば、私が持っているFUJIFILM X-S10にはライブビューの文字を暗闇でも目に優しい赤い文字で表示する「暗所モード」や暗所での撮影時に被写体を明るく表示できる「低照度優先」という機能があります。
私は星空の撮影をすることになるまで、この機能が搭載されていることを知りませんでした。ぜひご自身のカメラの機能を今一度チェックしてみてくださいね。
レンズ
星の光は弱いので開放F値が小さい明るいレンズほど良いです。
F値が小さいほど、光を取り込む量は多くなるため、F1.4〜F2.8程度のものを選んでおくと良いでしょう。
焦点距離が20〜28mmの広角レンズが使いやすく、24mm〜35mmくらいのレンズでは星空と景色を入れた星景写真も撮れますし、天の川や星座が画面全体に広がった写真も撮ることができます。35mm〜50mmのレンズは星だけを写す場合に向いています。
また、焦点距離が長くなるほど星を点で撮ることができる露光時間が短くなります。
三脚
星を綺麗に写すには10秒〜30秒くらいシャッターを開けて星の弱い光を取り込みます。シャッターを開けている間、ブレずに撮影するためには三脚が必須となります。
丈夫で安定性のあるものを選びましょう。
レリーズ
1コマずつ撮影する場合はセルフタイマーを使用してブレを防ぐことができますが、バルブ撮影や連続撮影の場合にはレリーズが必要になります。
予備バッテリー
星空撮影は構図やピント合わせをシビアに設定するので時間を費やします。また、低温時はバッテリーの消耗が早いため、予備のバッテリーをいくつか準備しましょう。
【事前準備】その他の準備 ・ 持っていると良いもの
露避けのレンズヒーターやカイロ
屋外でレンズが冷えると表面に結露が発生し、ぼやけて見えてしまうので写りに影響します。冬でなくても結露は寒暖差によって発生するので、対策としてレンズヒーターやカイロなど、レンズを温めるものを用意しておきましょう。
手元や足元を照らすためのライト
カメラの操作をしやすいようにヘッドライトがあると便利です。目に優しい赤色のライトがおすすめです。
周りに他の撮影者がいる場合は、撮影の妨げにならないよう、カメラのディスプレイやライトなどから漏れる明かりには細心の注意を払いましょう。
レンズフィルター
星空の撮影で一般的に使用されているのが光を拡散する効果のあるソフトフィルターです。明るい星をぼかし、大きく見せることができます。
表現の好みでフィルターを使わずシャープに写したい場合もあるので、必須ではありません。その他、光害カットフィルターやハーフNDフィルターなど、撮影したいイメージに合わせ用意しましょう。
赤道儀
地球の自転によって星は日周運動をしています。星を点像に写すためにシャッタースピードを短くし、その分ISO感度を上げると高感度ノイズが発生してしまいます。
シャッタースピードを長くしても星を追尾し、点像に写すための機材として「赤道儀」と呼ばれるものがあります。本格的な星空撮影にチャレンジする場合には用意したい機材です。
【事前チェック】天候/月
天候をチェック
綺麗な星空撮影の1番の鍵と言えるのはやはり天候です。基本的には雲の割合が0〜1の快晴がベストです。
普通の天気予報では晴れ予報になっていても、雲のかかり具合まではなかなか分かりません。私は「SCW-天気予報」というサイトの雲予測マップでチェックしました。
撮影当日でも予報は変化します。常に最新の予報を確認しておきましょう。
月の状態をチェック
月の入りから月の出ていない時間帯や、新月の前後の日が撮影に向いていますが、月の状態で撮れる写真が異なります。
月明かりが無い、または弱い時、星は明るく写りますが、風景は黒く写りシルエットになります。
月明かりがある時は、明るさの弱い星の写りは薄くなりますが、風景を明るく撮ることができます。満月前後では空が明る過ぎてしまうので、三日月から半月くらいが良いでしょう。
星雲や天の川のような淡い天体を撮影するには新月前後や月の出ていない時間帯が理想的です。
月齢や月の位置によって撮れる写真が違うので、日毎、時間毎で撮影方法を工夫して楽しみたいですね。月の出入りや月齢を詳しく調べることができるアプリがあるので、ぜひ活用してみてください。
【事前チェック】ロケーション/時期選び
星空撮影のロケーションに適した条件
- 僅かな星の光を捉える暗い場所
- 街明かりなど人工の灯りを避けた場所
- 空気が澄んだ標高の高い場所
市街地に近い場所では人工の光による「光害」が原因で星が見えにくくなります。
「光害カットフィルター」を使用すると、光害の主成分であるナトリウム灯や水銀灯の波長だけをカットしてくれます。
まずは自宅から足を運ぶことができる場所で何度か練習し、慣れることをおすすめします。
昼間に行ってロケハンをしておくと夜間は見えづらい足元の確認や構図決め、その場所のどの位置に三脚を立てて撮影すると良いかなどを把握できます。夜間は風景の見え方が昼間と全く異なります。実際私も普段から行き慣れているはずだった場所でいざ星景写真を撮ろうとした時、入れたい風景がどの辺りにあるのか分からなくなりました。
また安全面を考慮するうえでもロケハンは重要です。道路に近い場所では長時間露光をしている間に通った車のライト等が写り込んでしまうことがあります。周囲の光を少しでも避けるためにレンズフードを装着しましょう。
時期
冬は空気が澄んでいるので星が見えやすく撮影に向いていると言えますが、天の川を一番綺麗に明るく撮ることができる時期は7月〜8月頃にかけてとなります。
季節により星が見える方角や位置も変化するので、星空を撮影しながら四季の変化を楽しみたいですね。
カメラの設定
マニュアル露出
シャッタースピードや絞り値、その他様々な設定を調整しながら撮影するので、撮影モードはマニュアルが基本です。
マニュアルフォーカス
星空は暗いのでオートフォーカスやプログラムAEでのピント合わせは困難です。レンズに付いているAF/MF切り替えで変更する場合とカメラ側のメニューから変更する場合があります。
F値
絞らず開放で。はじめは1番明るいF値に設定しましょう。(F値の数値が小さいほど、明るくなります。)
ISO感度
周囲や風景の明るさなどその時の環境、状況に合わせて調整します。
基本的にはISO800〜6400の間。写真を明るくしたい場合はISO感度を上げるかシャッタースピードを遅く、暗くしたい場合はISO感度を下げるかシャッタースピードを早くします。
上の2枚は編集前の撮って出しの写真です。右がISO3200、左がISO6400で撮影したものです。感度設定の違いにより明るさが変化します。
ホワイトバランス
好みの表現になるように変えてみましょう。もし寒色系がお好みでしたら、蛍光灯色や電球色、色温度設定で4000K前後に。
シャッタースピード
星は常に動いているので、長秒露光をすると動いた分、線状に流れて写ってしまいます。星を点像に撮るにはより露光時間を短くしなければなりません。
目安としては15秒前後が良いでしょう。また焦点距離が長い(画角が広い)レンズほど、固定撮影で星を点に写す限界の露光時間が短くなってしまいます。
ファイル形式(RAW+JEPG)
RAW形式にしておくと、後からの編集で調整の幅が広がります。
手ぶれ補正OFF
三脚を使用する場合、手ぶれ補正がONになっていると、誤作動を起こして星が点に写らない場合がある為、手ぶれ補正はOFFにしましょう。
長秒時ノイズ低減OFF
露光時間が長くなると、センサーが熱を持ちノイズが発生する場合があります。特に気温が高い時期はノイズが発生しやすくなります。
長秒時ノイズ低減機能をONにしておくと、撮影後にシャッターを開いておいた時間と同じ時間、ノイズ低減処理が行われます。OFFにして撮影を行うとその時間が省けるのでスムーズですが、ノイズが目立つ場合は撮影後に画像処理を行う必要があります。
SONY α7 IIの設定画面では「長秒時NR(ノイズリダクション)」と表示されているように各メーカーによって呼び方は異なります。
適正露出はカメラ、レンズ、その時の状況で大きく違ってきます。ヒストグラムを見ながら判断することをおすすめします。
ここまでの設定は、事前に準備できることです。そして、撮影場所に着いたら、まずは暗さに目を慣らすと小さな星も見えるようになってきます。
撮影の手順
では撮影に移りましょう!
ピントを合わせるために明るい星を見つけたらカメラを向けます。
ライブビュー画面に切り替え、星をフォーカスポイントに合わせたら拡大し(フォーカスポイントの中に星が出てくるように合わせるのは慣れるまで少し大変かもしれません…)フォーカスリングを回しながら星が点になるようピントを合わせます。
一度無限遠にしてから徐々にピントを合わせ、星が点になるところを見つけましょう。
画面上で星を見つけられない場合は…
- 一旦ISO感度を上げて明るくする
- 遠くにある街灯など、目視できるものでピントを合わせてみる
ピントを決めてからパーマセルテープ等(粘着力が強過ぎない物)でズームリングとピントリングを固定すると、続けて撮影する場合にピントのズレなどを防ぐことができます。
ピントが合ったら、セルフタイマーやレリーズでシャッターを切ります。
撮影したらその場で再生し、拡大表示をして星が点になっているかどうかや構図などのチェックをお忘れなく。設定の調整をしながらベストな写真になるよう、沢山撮影して練習を重ねましょう。
星の撮影に慣れてきたら風景を入れた星景写真を楽しんでみたいですね。初めは身近な建物や鉄塔などで十分です。
星景写真を撮影する際、戸惑ったことがあります。それは辺りが非常に暗い場所では風景が見えず、構図を決めにくいということでした。そういった場合は一旦ISO感度を風景が見えるくらいまで高くし、構図を決めてからISOを戻します。または一度試しに撮影して写真を確認してから調整すると良いでしょう。
今回私は星座や月に関するアプリ「Sky Guide」を使用しました。
いつどの方角にどんな星座、天の川が見えるのか、今夜綺麗に見える星は何か、その星に関する説明などを調べることができ、小さなプラネタリウムを見ているかのように楽しむことができます。
様々なアプリがあるので、夜空のことを知るためにも、このようなアプリを活用してみると良いかも知れません。
ちなみに、 私は「月のこよみ 2023」という書籍を持っています。月の満ち欠けや月齢だけではなく、私たちの暮らしと月の関係が楽しくなるような、何だか心が安らぐ内容になっています。毎月の星空の図や、流星群、星座、季節のお話なども載っています。こういった書籍で星空のことを知っていくと、星空の撮影がまた楽しくなると思います。
作例紹介
新月期に撮影した写真をご紹介します(私の好みの雰囲気に少しだけ編集しました。全てフィルターは使用しておりません)。
西の空に見えた天の川。天の川は時間や季節で見え方が違います。夏は直立、春は横になります。
おおぐま座の一部である北斗七星が湖面にも映りました。ひしゃくの形をしているので見つけやすいですね。
木星がとても明るく輝いていました。撮影しているうちに雲が増えてきて木星と重なってしまいましたが、雲の流れと相まってふわりとした感じになりました。
カメラを真上に向けて撮影した天の川。
肉眼では見えにくい湖面に反射した星の明かりや山の輪郭もハッキリ見えます。
雲のある青空が好きなのですが、同様に雲のある夜空は情緒を感じます。快晴でなくても、星空を引き立ててくれるような雲のある空の日は素敵な写真になると思いました。
星の軌跡(日周運動)を撮影
星の軌跡の撮影方法には「バルブ撮影」と連続撮影した画像を合成する「比較明合成(コンポジット)」などがあります。
バルブ撮影はフィルムカメラ時代からの撮影方法で、カメラをバルブ(BLUB/B)モードに設定し、数分から数十分シャッターを開けたままにして撮影します。シャッターを長時間開けたままにする為、ISOを低くして撮影します。したがって暗い場所での撮影に向いています。暗い星は写すことができず、比較明合成よりも写る星の数が少なくなります。
比較明合成はインターバル撮影や連写モードで複数枚撮影をした写真の中から明るい部分を合成していく方法です。街中などの明るい場所での撮影が可能です。比較明合成の機能が搭載されているカメラもあります。
今回はバルブモードで星の軌跡の撮影をしました。レリーズを使わず、カメラメーカーが提供するアプリを使用し、スマートフォンからリモートでシャッターの操作をできるようにしました。
しっかりと三脚に固定して撮影スタートです。
おおぐま座の北斗七星とカシオペア座の間にある北極星を中心にして星が円を描くように撮影しました。
途中で不要なものが写ってしまった場合も比較明合成の場合は後から編集でカットすることができますが、バルブ撮影はそうもいかないので15分という短い時間でも緊張しながらの撮影です。「一発撮り」と呼ばれることに納得です。中心から向かって少し右側に飛行機が写り込んでいました…。
今回の撮影地は車で行くことができる場所でしたが、公共交通機関を使用される方は帰りの時刻に気をつけてくださいね。
そして
- カメラの取扱説明書をよく読むこと
- カメラの設定ボタンの位置を覚えて、暗闇でもスムーズに操作できるくらいにすること
この2つ、当然のようですがとても大切です。
今回使用した機材
カメラ :SONYα7 II・FUJIFILM X-S10 レンズ:FE24−70mm F2.8 GM・XF18-135mm F3.5-5.6 R LM OIS WR 三脚:K&F Comcept
SONY α7 II(ILCE-7M2)
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SONY FE 24-70mm F2.8 GM SEL2470GM
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FUJIFILM XF18-135mmF3.5-5.6 R LM OIS WR
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まとめ
星空の撮影、楽しんでいただけましたでしょうか。
記事を書いた私も星空の撮影は経験がありませんでした。ですので、初心者の私が実際に星空撮影を行って感じたこと、思ったことをありのまま記しました。
普段使いきれていなかったカメラの機能を活かせるのはこういう時だったのか…と知るくらいの初心者です。
もしかしたら設定をするだけでも疲れてしまうのでは…と思うかもしれません。それでも星について調べているうちに、昔覚えた星の名前を思い出したり、星の動きに興味が湧いてきたりするものです。そして実際に満天の星を実際に見た時は思わず「わぁ」と言ってしまうくらい感動します。
星空を眺めることも、流星群の日には流れ星を探すことも昔からとても好きでしたが、それだけで十分だと思っていました。撮影した写真の出来栄えはもちろん気になりますが、写っている星たちをじっくりと眺めているうちに、星団や惑星のことも気になってきます。そして、また星空の撮影をしたいと思ったことに自分でも驚いてしまったのですが、やはりそれほど深く魅了されるものがあります。
これまでの記事にも繰り返し書いてきたのですが、写真の表現は自由で、正解不正解はないと思っています。
ぜひご自身なりの表現で、四季折々の星空の撮影を楽しんでみてください。
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