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〜 記憶に寄り添う色を探して 〜 個性派フィルム3本を紹介
近年、高騰や生産終了が進むフィルムですが、その独特の質感や偶然性に惹かれて新たに始める方も増えています。本記事では、写真店で選んだ3本の個性豊かなフィルム「LomoChrome Metropolis」「LomoChrome Color ’92 Sun-kissed」「Santa Color100」を作例とともに紹介しています。これからフィルムを始めたい方や、新しい写りを試してみたい方のフィルム選びの参考にしていただければ幸いです。
著者: ONE SCENE編集部 | 作成日: 2025/10/03
教えてくれた人
はじめに
私がフィルムカメラで撮り始めた頃は手頃な価格で種類を選ぶことができたフィルムも、数年前から生産終了や価格の高騰が目立つようになり、フィルムを取り巻く環境も変わりつつあります。
その一方、デジタルとはまた違う質感の写りや仕上がりの偶然性という魅力に惹かれ、新たにフィルムカメラを始めるという方も少しずつ増えているそうです。最近でも新しいフィルムカメラが発売されたこともあり、嬉しく思っていました。
これまで数え切れきれないほど使用してきたフィルム。使い慣れていたものが減ってきたこともあり、「それなら少し冒険をして個性のあるフィルムも試してみよう」という気持ちになりました。
今回はたくさんのフィルムが並ぶ写真店でワクワクしながら選んだフィルム3本を、作例とともにご紹介します。
これからフィルムを始める方にはフィルムのバリエーションや選ぶ楽しみを。既にフィルムを愛用していて、色々なフィルムを試してみたいけれど悩んでしまう、という方にはそれぞれの写りを参考にしていただけたら嬉しいです。
LomoChrome Metropolis 35mm ISO 100-400

2019年にロモグラフィーから発売され、2021年にマイナーアップデートされたものが登場しました。オリジナルフィルムが発売されるのは5年振りだったそうです。 「LomoChrome」とはロモグラフィーが開発・販売しているフィルターや加工なしてカラーシフトを楽しむことができるオリジナルカラーネガフィルムのシリーズ名。他にLomo Chrome Purple ・Lomo Chrome Turquoiseがあります。
私が使用したものは2019年発売のもの。使用するのがもったいなく思い、いつ撮影しようかと悩んでいたところ、気がつけば2年ほど期限が切れてしまっていました。2、3年期限切れしたフィルムは何度か使ったことがありますが(きちんとした環境で保存していたもの)、気になる劣化を感じたことはありません。

撮影を始めたのは銀杏が散り始めた時季。傾いた陽に照らされた銀杏並木を散歩しました。 黄色と緑に特徴があるというフィルム。最初に撮影していたのは、ちょうど黄色い葉と緑のフェンスでした。

暖かな色合いの秋とは違い、どこかひんやりと感じるのですが、静かな秋の風景に、気持ちまでスッと落ち着きます。 陽に透けた銀杏にも、落ち葉にも、透明感のある美しさが感じられます。 影や洋服の黒が入ったことで、グッと引き締まっていますが、全体に光が回っているのでコントラストが強過ぎていないところが好きです。

秋の終わりに訪れたお気に入りカフェ。私はほおずきのタルトと珈琲、友人はベリーの乗ったパフェをいただきました。全体に低彩度であること、背景に濃い色の壁があることで、原色がよりアクセントになっていると思います。

席に座ると、つい探してしまう珈琲の中に映る空と電線。 粒状感は粗めですが、私はこのざらざらとした質感のある写真に不思議と温度や音を感じて、まるで自分がその場面の中にいるような気さえしてくることがあります。

暮らしていた函館には、歴史のある教会が点在していました。屋根の色が風景に映える元町地区はカメラを持ってよく散歩をした場所の1つです。
青味を帯びた白い教会の壁、くすんだ屋根の赤がノスタルジックな街並みを更にノスタルジックに。

雨が上がり晴れた日、散った紅葉が濡れた地面に広がって1枚の絵のようでした。 黒いアスファルトの地面に反射する光の描写が繊細です。
実際には、先ほどの銀杏の葉もこの紅葉も濃い黄色でしたし、ほおずきは濃いオレンジ色をしていました。 暖色系は他の色と比較すると特に彩度が低いようなイメージです。

逆光で写すと光が柔らかく。

部屋で影を見つけるとつい撮影してしまいます。 カーテンの隙間から差し込む光に、くっきりと映った花の影と鮮やかな花の色。ガーベラはビロードのような質感の濃い赤でしたが、朱色のように見えます。カーネーションとクラスペディアはだいぶ彩度が低くなっています。

季節は巡って、雪化粧した北海道の街。濃淡の青に冬の凛とした空気を伝えてくれているようで、このフィルムで雪の季節を写すことができて本当に良かったと思えました。

降り続いた雪が止み、よく晴れた日で、空と海の青を撮影することができました。奥行きのある青のグラデーションや冬らしい青白さをとても美しく表現してくれています。 展望台から眺めた雪の街がミニチュアの世界のように見えるのも、建物のシャープさが引き出されているからこそではないでしょうか。 空のハイライト部分は柔らかく、北海道ならではの冬の淡い空の色が伝わるようです。

雪に覆われると、まるでモノトーンのような風景に。 このフィルムの特徴でもある黒の深さが、雪の日の静寂さを感じさせる1枚になりました。


Metropolis=大都市。その名の通り、都会的で無機質なものに似合うクールなイメージを持っていたのですが、使用してみると被写体やその時の環境で柔軟に変化し、柔らかさや暖かさを兼ね備えていて、日常の風景にもおすすめできるフィルムだと感じました。
全体的に低彩度ではあるものの、赤や緑、黄色の発色が特徴的なので、上手に取り入れるとフィルムの効果を楽しめると思います。
−仕様メモ−
- 35mmカラーネガフィルム
- 撮影枚数:36枚
- ISO感度:100-400
- DXコード:なし
- 現像方法:C-41
LomoChromeシリーズのフィルムはISO感度を100-400の間で自由に設定できる使用になっており、その時の環境に合わせて撮影することができます。撮影中でもISO感度を変えることができるので、その時の状況に合わせられるのも便利ですし、気分で変えて色彩の変化を楽しんでみても良いですね。 今回私は全てISO400で撮影をしましたが、次回はその時々で設定を変えて楽しもうと思います。
DXコード:フィルムの感度や枚数などの情報をカメラに伝える電気接点のこと。CONTAX ARIAの場合、フィルムを装填するとDXコードが自動で読み取られます。DXコードのないフィルムを使用する際は、装填してから手動でISO感度を設定します。設定をしないと自動でISO100に設定されます。
C-41:Kodak社が開発したカラーネガフィルムの現像プロセスの名称。
LomoChrome Color ’92 Sun-kissed ISO400

LomoChrome Color ’92 Sun-kissedは 2023年に発売されたLomoChrome Color '92というフィルムの新バージョン。より暖色寄り、黒が引き締まった写りになって登場しました。LomoChromeと付いていますが、ロモグラフィー完全オリジナルのフィルムのためで、カラーシフトフィルムではないそうです。
「Sun-kissed=太陽を浴びた、日当たりの良い」という名の通り、暖かみのあるイエローとオレンジの色調が強調され、夕暮れの太陽のオレンジが美しく写し出されるフィルムとのこと。
私が数年お世話になっていた写真店には、仕上がりの内容に関するオーダーシステムが特になかったのですが、このフィルムを出したお店はオーダーシートがあったため、フィルムの色味を活かすようお願いをしました。 現像から戻ってきたネガにメモを添えてくださっていて、「フィルムの色味が強いので少し黄色味を抑えた」との旨が書かれていたのですが、それでも少し驚くくらい色味に特徴があって…。 でも、この驚きも醍醐味だと妙に納得できてしまうのがフィルムの面白さなのですよね。

春の終わり頃、晴れた横浜の街を歩きながら撮影しました。 色褪せたような彩度の低さと粒状感にフィルムらしいアナログな雰囲気を感じます。



くすんだ感じではありますが、赤や緑のように鮮やかな色のものが目立っています。

何気なく見上げた壁面。光と影を見つけると嬉しくなって撮影してしまいます。 シネマライクに見えるのも、このフィルムの質感の特色の1つ。

葉の間から射す太陽光も柔らかく捉えてくれました。 フィルムならではの階調の豊かさを感じます。

窓から入る光が心地よいカフェの店内での1枚。 粒状感が抑えられて、クリアな写りです。

木陰に咲いていた紫陽花。 直射日光が当たらない、明るい場所は粒子が目立ちにくいようです。

夕暮れに近づいた時間の紫陽花階段。 階段を登った先と空からの光の滲みがふわりと柔らかです。
今回LomoChrome Color ’92 Sun-kissedを使用して感じたのは、フィルムらしさがあって好きな仕上がりではありますが、本来の色を残したい場合は少し難しいかもしれないということです。 ロモグラフィー公式サイトの作例はとても鮮明な写りをしていて、比べてみると私の撮影した写真の方が赤味が強く、彩度も随分と低く感じます。そこで、普段フィルム写真の編集はしないのですが、若干ホワイトバランスを低くするなど、微調整してみました。
上の写真が編集前、下の写真が編集後の写真です。








印象の違い、感じていただけましたか?
−仕様メモ−
- 35mmカラーネガフィルム
- 撮影枚数:36枚
- ISO感度:400
- DXコード:なし
- 現像方法:C-41
元のレトロ感のある写りも好きですが、青味をプラスしたことで爽やかさを出させたかと思います。
LomoChrome Color ’92 Sun-kissedの硬すぎないコントラストと落ち着いた彩度、粒状感、光の滲み。フィルム写真の穏やかさを感じずにはいられない1本です。
Santa color100

フィンランドの「kameratori」というカメラ店がクラウドファンディングで費用を集め、販売を始めたフィルム、Santa Color 100。
コダックポートラシリーズよりも彩度が高く、エクター100よりも彩度が低い微粒子カラーネガフィルムで、力強い赤と豊かな緑色が特徴。中身はコダックのaerocolor Ⅳで、航空写真用フィルムなので鮮明な画像を作成するように作られているのだそうです。
数年前、日本のカメラ店のSNSを眺めていて、サンタクロースがカメラを構えているパッケージのかわいさと、北欧生まれという言葉に惹かれて購入しました。
撮影を始めたのは雪降る季節。

ふかふかの雪の絨毯にポツンと落ちた木の枝や落ち葉、ひょっこりと顔を出す植物。 白い世界に色づいた実。 つい撮りたくなる冬の風景です。

撮影したのはよく晴れて雪の反射が眩しいくらいの日。この1枚だけは他よりもだいぶ赤みが強く撮れていました。

積もった雪をアップで。 冷たさを感じる青も綺麗です。

Lomo Chrome Metropolisで撮影した海岸と同じ場所で、同じように雪のある景色を撮影した写真ですが、Lomo Chrome Metropolisが寒色系、Santa Colorが暖色系であることが分かります。

カフェの窓際で撮影した写真は、全体的にピンクがかり、優しい雰囲気になりました。 葉の緑色は少しこってりとした発色に。

横浜の夜明けの空。夜と朝の「あわい」の色を記録してくれていました。 実際にはオレンジ気味に染まっていったのですが、このピンク色に染まる空の色がドリーミーで、この三日月とタワーのある風景に似合っているなぁ…と。

薄暗い時間だったので少し心配していたのですが、こんなに明るくクリアに撮れていて嬉しかったです。

雪溶けが進んだ北海道でも夜明けの風景を撮影しました。 眩しい朝陽もベールがかかったように柔らかに。夕暮れもきっと暖かく写してくれる気がします。

シャープな写りですが色味は和らいでいて、街の穏やかさを感じる1枚。

ピンが甘かったのですが…仲良くしてくださっているご夫婦の息子さん。 赤の発色が鮮やかです。


全体的には、淡くピンクがかった写真が多かったのですが、色の偏りが強過ぎない印象です。 彩度の高いものはそのまま鮮やかに、それ以外はトーンが落ち着いているように感じます。
−仕様メモ−
- 35mmカラーネガフィルム
- 撮影枚数:36枚
- ISO感度:100
- DXコード:なし
- 現像方法:C-41
個人的には生産終了になってしまったFUJIFILM記録用カラーフィルム100(通称;業務用100)やKodak Proimage100など、ISO100ならではの滑らかさや柔らかさが大好きでしたが、このSanta Color100もその写りを彷彿とさせてくれます。
気持ちまで明るくなるような光と色の表現に惹かれ、また使ってみたいと思えた1本です。
おわりに
同じフィルムで撮影をしても、カメラやレンズの機種・その日その時の状況・現像方法などによって仕上がりが違います。1本のフィルムで撮影した写真全てが同じような写りになるとも限りません。現像から戻ってきて初めて眺める時の緊張感、1枚1枚に感じ想うことが、フィルム写真の楽しみでもあります。
「記憶色」という言葉がありますが、今回ご紹介したフィルムは、私たちの記憶のように少し曖昧で、懐かしい色をしていて… ある意味フィルムらしい写りのフィルムとも言えるような気がします。
冒頭で昨今のフィルム事情を述べましたが、写真店の中にはメジャーなフィルムだけでなく、バラエティーに富んだ海外製のフィルムを数多く取り揃えている店もあります。 もしフィルム選びで迷ってしまったら、パッケージデザインにグッときたものを選んでみるのもありですよ!
撮影機材 カメラ:CONTAX ARIA レンズ:CONTAX Carl Zeiss Planar T* 50mm F1.4
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