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その一瞬に何を残していくか。 撮ることを通じて、その裏にある思いを伝えていく
鳥取県・鳥取市を拠点に、フォトグラファー・ライターとして活躍されているFujitaさん。家族との日常や同県智頭町の人々の暮らしを切り取った写真からは背景のストーリーと共に、Fujitaさんが一枚一枚に込める確かな思いを感じます。デジタル時代にあえてフィルムで撮る理由も含めて、Fujitaさんがどんな瞬間にどんな思いでシャッターを切っているのかを知りたくて、お話を伺いました。
著者: Kazutoshi Fujita | 作成日: 2020/05/06 | 更新日: 2023/01/28
― はじめにFujitaさんが写真を始めたきっかけや、写真にのめり込んでいった経緯について教えてください。
大学卒業してから地元新聞社に就職し、入社6年目から9年間記者をしていました。写真を撮るようになったのは、最初の運動記者時代。スポーツ写真を仕事で撮り始めて、その後は一般記者として様々な報道写真を撮っていました。昨年からはフリーランスのカメラマン、ライターとして独立し、仕事としても撮り続けています。
写真に対して意識が変わったのは、子供(いま8歳になる息子)を撮っていたのですが、5、6年前に考え方がだんだん変わってきました。生まれてからデジタルカメラで何百、何千枚と撮っていたのですが、ふと、1枚に対する熱量というか、重みというか意識するようになったんです。「自分は何を残したいんだろう」って。子供が可愛いと思って撮るのはそうなんですが、なんというか撮ることに満足してしまっていたというか。
そこから1枚を大事に撮ってみようとフィルムカメラを始めました。何を、どう残そうー。そう意識してから写真に対する見方も変わり、技術や知識も増やしたいと思いました。
― Fujitaさんの写真を拝見していると裏側のストーリーまで見えてくるようで、まるでFujitaさんの記憶を垣間見るような感覚を覚えます。Fujitaさんがどんな瞬間に何を感じてシャッターを切っていらっしゃるか教えてください。
子供写真から撮り始め、次に離れて住む両親をフィルムで撮るようになり、これまではほとんど家族写真を撮っていたように思います。なぜかというと、大切な存在もやがて歳をとっていくからです。当然なんですけど、時間は流れていく。だからこそ、今この瞬間に生きる子供や両親は、もう二度と見ることができないんですね。その時を振り返って見ることができるのも写真だし(当然すぎることですが)、またその時に彼らを見て僕が何を考えていたかという「思い」を残すことができるのも、写真だと思っています。
子供を撮る時は、30年後に息子が僕の写真を見た時に、小さかった自分が写っていること以外に、親である僕らの目線に何かを感じてくれたら嬉しいと思っています。あくまで押し付けではないのですが。やはり撮り手というのは伝えたい何かがあるから撮るような気がするんですよね。反対に、年老いていく両親を撮り続けることは別のことももたらしてくれている気がしています。自分と親の関係や距離感、親のこと、いろんなことがわかってきます。撮ることでより「今を生きること」の大切さを感じています。
シャッターを切る瞬間は、「あ!」と思う瞬間(笑)なんですが、ちょっと考えると、その人らしさが出るとき(日常の姿、表情、仕草)。その時に、そこでどうその人が生きているのか。できるだけ周囲の様子や自然体な風景も写すようにしています。
― 続いて写真の色合いについて教えてください。Fujitaさんの写真はフィルムもデジタルもすっきりとした透明感の中に優しい印象を受けます。色合いなどの表現において、意識されていることを教えてください。
色は迷いながらだんだんと変わってきています。デジタルのパキッとした写真はあまり得意ではなく、フィルムを好きになったのも独特の空気感が出るからです。デジタルの彩度が高い色合いからフィルムの落ち着いたトーンになってきました。その中でも、単に透明感が出たりするだけでなく、できたら少し画の強さも出したいと思っています。
ドキュメンタリー的な写真が多いので、その場面を綺麗に写すだけでなく、例えばあえてローキーにしたり、シャドウを強めて明暗差を出すこともします。
フィルム(山口県の山本写真機店さんで現像・スキャニング)もデジタルも写真として懐かしさを感じる色を目指しているのですが、色の中では青や緑をどういう色にするかを特に考えます。青は青空。外で撮る場合、基本的に必ず写ってくるもので、構図の中でも広範囲をしめるので、その印象は見る人に与える影響は大きいです。現像はlightroomでやったり、短時間にやりたい時はiphoneに取り込んでVSCOを使います。
― Fujitaさんが運営されている、鳥取県・智頭町に暮らす人をテーマとしたWebマガジン「脈脈」について教えてください。立ち上げには並並ならぬ熱量が必要だと思います。Fujitaさんが「脈脈」を立ち上げた背景や想い、発信されたいことについて教えてください。
新聞社時代に担当の町で、個人的にも息子が智頭町の森のようちえん(園舎がなく、一日中森の中で過ごしながら子供の自主性を大事にする園)に通ったので、公私ともに繋がりが深かった町です。同時に、移住者も多かったり、もともと住んでいた町民も、自分らしく生きる人が多くて、僕も自分の生き方に影響を受けた町だったんです。
独立したのは、人の生き方に対してじっくりと取材をしていきたかったからで、それをまずやってみようと思ったのが智頭町でした。町や友人にも協力してもらっていて、個人的にも智頭町の人の魅力を伝えていくことで町のためになることをしていきたいと思っています。取材をしていると、知っているようでも「あ、こんな人だったんだ」とか「こんな考え方しているんだ」とか発見があって。それが自分に対するヒントになることも多いです。
でも、智頭町にあることは、実はいろんな地域にあることです。智頭町の人を見て、読者の人自身が生き方や暮らしに目を向けるきっかけになったら嬉しいです。
― 続いて、Fujitaさんが普段使っているカメラ・レンズや使い分けについて教えてください。また、デジタル時代にあえてフィルムを使う理由についても教えてください。
カメラはデジタルが、FUJIFILMのX-T3がメインで、サブ機でX-pro2を使っています。レンズは広角レンズ(10-24mmF4)を使う状況以外は、基本単焦点(23mmF1.4、35mmF1.4、56mmF1.2)です。
中でも近すぎず遠すぎずフラットに被写体に向かい合える35mm(フルサイズ換算50mm)の距離感が好きで、FUJIFILMの35mmは描写力も素晴らしいです。昔はNikonD850とシグマのArtレンズを使っていましたが、さっと撮るための機動力(重量)やFUJIFILMの色に魅せられて独立時にマウント替えをしました。フルサイズの魅力はありますが、APS-C機の絵とは思えないバランスの良いFUJIFILMにおおむね満足しています。
フィルムカメラは、中判のPENTAX 67Ⅱ、レンズは90mmF2.8の一本。35mmはフィルムを始めたきっかけとなったNikon FMをたまに使います。フィルムを使う理由は、やはり現像まで結果が見えないので、1枚を撮ることに集中できます。コストを考えると何枚も撮れない分、自分が何を撮ろうとしているか考えることが増えるからです。迷いになることもありますが、それを重ねていくことで、自分が撮るものが見えてきます。
― デジタルにおいてはFUJIFILM、フィルムにおいてはPENTAX67を愛用されていらっしゃしますが、Fujitaさんが感じるそれぞれの魅力について教えてください。
FUJIFILMはやはりその色ですね。基本的に青や緑がとても綺麗で、僕はフィルムシミュレーションではクラシッククロームを使いますが、彩度やコントラストが落ちついた印象の写真なので、基本撮ってだしでもかなり良いです。そこからフィルムっぽく寄せていく写真は現像していきます。APS-C機ミラーレスのサイズ感は被写体にも圧迫感を与えず、僕が人を撮るときの距離感にも影響していると思います。(もちろんコミュニケーションは大事ですが)
PENTAX67IIは、中判カメラなので、やはり圧倒的な立体感が魅力です。フィルムカメラの特徴でもありますが、ハイライトの粘りはかなりあるので、ハイキーに撮るのか、ローキーに撮るのか露出を決めるのが鍵です。デジタルとはなかなか言葉では表しにくいのですが、場の空気感の出方がやはり違う気がしています。あと一枚あたりおそらく250円くらい原価がかかるので、一枚の重みは違いますね(笑)。ですので、ここぞという時にガシャンと押しています。
― 最後に、Fujitaさんのベストショットと、次に狙っているカメラやレンズ、今後の抱負があれば教えてください。
ベストショットは、家族で旅行に行った時にホテルで撮った一枚ですね。
夕暮れの光がとても綺麗で、その光に照らされながら妻と息子がじゃれ合っていたんです。その姿を見て「ずっと残したい」と思い、自然とPENTAX67を手にしていました。山本写真機店さんから現像が上がってきた時には、イメージ通りに写っていてとても嬉しかったですね。やはり家族を良く撮れた時が一番嬉しいです。
次に狙っているカメラやレンズは、悩みますね・・・。X-T4もAF性能と手ぶれ補正がつき、バッテリー性能も向上したのでとても魅力的ですが、X-T3も十分いいカメラなので、センサーが変わるであろう次まで待つ可能性は高いです。中判デジタルのGFXシリーズも魅力ですが、一枚の作品をバシッと撮るイメージなので、今すぐに必要でもないかなぁと。レンズはFUJIFILMの90mmF2がほしいです。より対象を浮かび上がらせ、撮りたい場面で活躍してくれそうです。
今後も、人を撮ることや取材していくことは続けていきます。一つの被写体やテーマを追い続け、写真集を作るのが一つの目標ですね。写真は撮る人が出るので、自分の撮った写真が「あ、あの人が撮った写真」と思ってもらえるように、撮影技術もそうですが、人間的にも成長していきたいと思っています。やっぱり心が充実していないといい写真って撮れない気がしているので、これからも被写体と、自分と、向き合っていきます。
著者
Kazutoshi Fujita
1981年、鳥取県生まれ。フォトグラファー、ライター。 2019年5月まで新聞記者を務め、その後独立。人の取材を中心に鳥取県内外で活動。2020年12月には同県智頭町のローカルメディア「脈脈」(myaku-myaku.com)を立ち上げ、人の暮らしや生き方にスポットを当てた取材を続ける。今年1月には鳥取市内で同メディアの写真展「脈脈展」を開催。デジタルはFUJIFILM(X-T3,X-pro2)、フィルムはPENTAX67Ⅱを使用。
Kazutoshi Fujita
1981年、鳥取県生まれ。フォトグラファー、ライター。 2019年5月まで新聞記者を務め、その後独立。人の取材を中心に鳥取県内外で活動。2020年12月には同県智頭町のローカルメディア「脈脈」(myaku-myaku.com)を立ち上げ、人の暮らしや生き方にスポットを当てた取材を続ける。今年1月には鳥取市内で同メディアの写真展「脈脈展」を開催。デジタルはFUJIFILM(X-T3,X-pro2)、フィルムはPENTAX67Ⅱを使用。
Kazutoshi Fujitaさんの使用カメラ
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PENTAX 67IIKazutoshi Fujitaさんの使用レンズ