向き合い、葛藤を抱えながら。 写真を撮る意味・発信する意味を模索し続けていく

― はじめに、chiyoさんが写真を始めたきっかけや、写真にのめり込んでいった経緯について教えてください。

一眼レフを買ったのはお友達に撮ってもらった一枚の写真がきっかけでした。

元々絵を描くのが好きだったこともあり、子供が生まれる前からずっと絵日記をつけていたのですが、予想以上に目まぐるしい双子育児、ゆっくり絵を描く時間もなくなり、その頃はかなりストレスを溜めていたように思います。

そんな中で出会った同じ双子ママさんが撮ってくれたのは、泣いていた娘が私に抱かれてふと泣き止んだ瞬間でした。私の肩越しに涙目のまま真っ直ぐカメラを見つめた視線に無性に心が動いたのを覚えています。その一枚がきっかけとなり、今私の手元にカメラがあります。

それからは絵日記代わりに写真を撮るようになりました。カメラを買って最初の一年くらいは本当に毎日のように撮っていたと思います。撮った写真はInstagramに投稿することで、全国の双子ママさんだけでなく、写真が好きなママさんパパさん達とも繋がりがもてるようになりました。

皆さん本当に素敵な写真を撮っていらっしゃって、「こんな写真が撮ってみたい！」のオンパレードで！！目にする度に私も私も！と欲が出始めました。

奮発してちょっといいレンズを買ってみて、そうしてどんどん写真の世界にハマっていったように思います。今では頭の中が写真のことでいっぱいでちょっと苦しいくらいです(笑)

― お子さんのハッとするような表情や仕草を捉えた写真や、とても真似できないような切り取り方に驚かされます。お子さんの成長にchiyoさんの写真に対する追求心や美意識が相まって、今の写真に辿り着いたかと思います。chiyoさんの写真に込める想いや、写真を続けることで生まれた変化などについて教えてください。

そんなふうに思っていただきとても光栄です！ありがとうございます！

私はカメラを始めた頃から、撮ったらInstagramに投稿して誰かに写真を見てもらうことがセットでした。お母さんになってから、すごく頑張っても、ひたすらサボっても、特に誰かに褒められるでも叱られるでもない。自分を評価するのは自分でしかない毎日に、なんとなく孤独や物寂しさを感じていた私にとってInstagramは評価のある場所でした。

良くも悪くもいいねやフォロワー数が形として見えてしまう。もっといいねって言って欲しくて、もっとたくさんの人に自分の写真を見てもらいたくて、より印象的な一枚を目指すようになりました。

日記代わりだったありのままの記録写真から、私の意図を反映したフィクションを含む表現写真へ。そこに至るにはここでは話しきれないような葛藤があって、それは今もずっとあって..写真を撮る意味、発信する意味を模索し続けています。

写真に込める想いは私の長い長い葛藤そのものなのかもしれません。できればなにか確固たる芯のようなものを語りたかったのですが、恥ずかしながらずっと迷っていますとしか言えないんです。

ただ最近やっと、写真を発信すること＝Instagramだけではないと言うことに気付きました。頭が硬くて応用の効かない私には、そんな当たり前のことがとても新鮮で(笑)これからはまた新しい迷いと付き合うことになりそうですが、今はそれがとても楽しみです！

― 先ほどの質問とやや重複するのですが、chiyoさんの切り取り方のセンスに驚かされます。chiyoさんが愛おしい・美しいと感じる瞬間が詰まっていると思うのですが、chiyoさんはどんな瞬間に魅力を感じますか。また、写真家でも写真家でなくても影響を受けた方はいらっしゃいますか。

魅力を感じる瞬間は本当にその時々ではあるのですが、我が子を写す時はちょっと憂いをおびた瞬間に惹かれることが多いです。また、そのように演出することもあります。

私は子供達がふと見せる負の表情に、あぁこの子達は私のお腹から生まれただけの他人なんだなぁと思うことがあるんです。「他人」と言う言葉を使うとなんだか辛辣に感じるかもしれませんが、全然マイナスな意味ではなくて。

笑顔の理由は話してくれるけど、泣いている理由は教えてくれなかったりするように、泣き顔や寂しそうな顔をしている子供達は、私の知らないところで自分で何かを感じとって、小さいなりに表現している。

もう立派なひとりの人なんだなぁと..。それを感じる瞬間は私にとってたまらなく魅力的です。

あ、もちろん笑顔も大好きですしいっぱい撮っています！我が子以外でもなんだかちょっと寂しいねって思うような光景はキュンとくるものがある気がします。

影響を受けた写真家さんはたくさん、本当にたくさんいらっしゃいます！その中でもいつも1番に名前を挙げさせていただいているのはたしろゆりさん。たしろさんの作品を目にしたことで、もっと表現することに挑戦したい！と感化されました。私にとっては親鳥のような方です。

あと、ファッション誌を写真集代わりに見るのが好きです。小物や背景の色遣いだったりモデルさんの立ち方だったり、よく子供達と一緒に今度こんな写真撮ってみたいねー！って話しながら見ています。

― 続いて色合いなどの写真表現について教えてください。chiyoさんの写真は静けさの中に光が浮かび上がり、どこかフィルム写真のような風合いを感じます。撮影時や現像時に意識されていることや大切にされていることについて教えてください。

フィルムのようだと感じていただけたこと、すごく嬉しいです！

実はピント合わせがすこぶる苦手で。基本マニュアルフォーカスで撮っているのですが、全然子供達のスピードについていけません。そのせいで意図せずブレたりボケたりという写真を量産してしまうのですが、意外とその中にお気に入りが見つかることが多いです。そういった曖昧な写真はフィルムっぽさとも通じる部分があるように思います。

でも逆にフィルムで撮る時は頭の中でチャリーンとお金がおちる音がしちゃうので、なるべく失敗しないように慎重に撮っています(笑)

現像の際は、少し前までシャドーにほんのりグリーンをのせていたのですが、最近はオレンジをのせるのがお気に入りです。

― chiyoさんがメインで使用されているカメラ・レンズについて、それぞれの機材を選ばれた経緯や使い分け方、またお気に入りの点について教えてください。

メインのカメラはPENTAX K-1を使用しています。

カメラを買うぞ！と決めた時、そのきっかけとなった双子ママさんがCanonユーザーだったこともあり、CanonのKissシリーズを買う気満々でした。そのつもりでヨドバシへ行ったら、店員さんから「PENTAXなら防塵防滴の機能がついて、ちょっとお釣りがきますよ！」と勧められ、言われるがままPENTAXを購入したんです。

後から気づくのですが、PENTAXのカメラは欠点も多くて。オートフォーカスが遅いので子供を撮るのにあまり向かないし、選べるレンズも他社さんに比べて圧倒的に少ない。でもそんなちょっと残念な部分にこそ魅力が詰まっていると思っています！

使っているレンズは主にPENTAX FA limitedシリーズ(31mm,43mm,77mm)と中一光学SPEEDMASTER 85mm F1.2と、RIKENON 50mm f2(オールドレンズ)。

それぞれとても特徴のあるレンズで、特に中一光学さんのレンズはなかなかお店で実物に触れる機会もなく、オートフォーカスもついてない、購入するのに勇気のいるレンズだったのですが、元々オートフォーカスなんて期待してないし..まいっか！という気持ちで買えたのはPENTAXだったからかなと(笑)。結果的にこのこが今1番のお気に入りレンズです！

limitedシリーズはシャープさより味わいを重視して作られていたり、魅力的なオールドレンズも多い。私の写真にフィルムっぽさを感じていただいた理由のひとつはPENTAXだからなんじゃないかなと思っています。

宝くじが当たってもやっぱりPENTAX K-1を買います！大好きです！

― 最後に、chiyoさんのベストショットと、次に狙っているカメラやレンズ、今後の抱負があれば教えてください。

悩みましたがベストショットはこちら。

この写真は私の元に駆け寄ってきた娘が転んでしまった時のものです。擦りむいて本当は痛いのをグッと堪えて「なくのがまんしたよ」と涙をこぼしながら話す娘があまりにも娘らしくて、写真を撮ってもいいかな？と聞きました。

いいよと写ってくれたことも、その後晴れやかな表情でまた駆けて行った後ろ姿も。彼女の今の記録であり、一緒に作り上げた作品でもある。そんな大好きな写真です。

次に欲しいレンズはPENTAXのマクロレンズ！実は虫を撮るのが好きで..いつか虫の写真を集めたブックを作りたいと画策しています！あとストロボもそろそろほしい...頑張ってへそくり貯めなきゃです！