製品解説
スペック情報
イメージセンサーが、たった1200万画素しかない意味
もし、一番最初に買う一眼カメラを探しているのであれば、この記事はほとんど読む必要がありません。
α7S IIは画素数が約1220万画素しかなく、フルサイズミラーレス人気が爆発したα7第3世代の一つ前の機種ということでバッテリーの持ちもよくありません。像面位相差AFも非採用なので、AF速度もそこまで期待できないということで、写真機としては最新のミラーレスから2回りは古いスペックとなっています。
さて、そんなカメラを2015年に発売したSONYの意図は何なのでしょう。
SONYの半導体事業は元々、CCDのイメージセンサーを1970年に開発し、イメージセンサー事業をスタートしています。CCDはビデオカメラなど動画機で主に使われてきたイメージセンサーで、SONYはその技術を活かして、様々な映像事業向け動画用カメラを作ってきました。
一方で、デジタル一眼などの写真用カメラには消費電力や35mmという大きなイメージセンサーを作る上でのコストなどからCMOSイメージセンサーが使われてきました。SONYも2005年からCMOSセンサー開発に注力するようになり、コニカミノルタから一眼カメラ事業を引き継いで、自社のCMOSを搭載したデジタル一眼を発売してきました。CMOSセンサーはデジタル一眼の普及と共に進化し、動画撮影においてはCCDが有利とされてきた状況も変わってきています。
そうなってくると、元々動画カメラ事業をメインとしていたSONYとしてはミラーレス一眼でも動画メイン機が出来るのではというアイデアが出ることは必然ともいえます。そんな中で発売されたのがα7sシリーズでありα7S IIと考えられます。
デジタル写真では雑誌サイズの写真をプリントする場合は最低でも2000万画素が欲しいところです。しかし、デジタル動画となると、4K動画であれば1000万画素あればイメージセンサーの画素数としては十分となります。また、直近では、デジタル一眼はYouTubeなどの影響もあり、動画機としてのニーズも高まっています。
α7S IIは4KやフルHD動画撮影を見据えて、敢えて画素数を抑えた特殊な一眼カメラとなっています。
1200万画素のメリット
4K動画を撮影するだけであれば、1000万画素あれば十分ということはわかりますが、2000万画素のデジタル一眼で4K動画を撮影したらいけないのでしょうか。
約4240万画素のα7R IIIや約2420万画素のα7 IIIでも、もちろん4K動画は撮影できます。しかし、4K動画を撮影するなら約1220万画素のα7S IIがより高画質な動画が撮影できます。
デジタル一眼のイメージセンサーはフルサイズであれば約36mm×24mmと大きさは決まっています。画素数が増えると、イメージセンサーの中により多くの受光素子を並べる必要があります。そのため受光素子1つの大きさは小さくなります。逆に画素数が減れば受光素子1つは大きくなるのです。
受光素子1つが大きくなればより高精度に光の強さを記録できるので高画質となります。また、弱い光でも受光素子が大きければ、大きく信号を増幅する必要もなくなるのでノイズも少なくなります。敢えて画素数を減らすことで従来のデジタル一眼よりも暗い状況、少ない光でも撮影が可能になります。
これが1200万画素のメリットとなります。
しかし、受光素子を大きくして低解像度にすると写真を印刷するときの様に出力サイズが大きい場合は画素数が不足するデメリットが生じます。
低ノイズは写真でも大きなメリットに
最近、ペンを握らなくなったと思いませんか?IT全盛の社会においては紙への依存度はかなり小さくなってきています。写真においても同様で、写真をプリントするよりもパソコンで編集してSNSなどにアップする用途が多くなっています。
そうなってくると、低画素によるデメリットよりも受光素子が大きいメリットが目立ってきます。低画素であるということでα7S IIはISO感度を最高で409600まで上げることができます。写真の場合は動画と違い暗い場所でもストロボ撮影したり、スローシャッター撮影をすることでISOを抑えて撮影できますが、ストロボが使えない暗い場所の撮影ではα7S IIの暗所耐性がメリットとなります。
たとえば、
- 結婚式、照明が落ちた中でストロボで雰囲気を壊したくない場合
- イベントの舞台裏などをドキュメント撮影する場合
- 水族館など低照明下でストロボが使えない生物撮影
- 星やホタル、ローソクなどの弱い光の撮影
この様な撮影ではストロボ不要の高ISO撮影がポイントになります。
α7S IIには低照明下でも手ブレを抑える、5軸ボディ内手ブレ補正が搭載されている上、サイレントシャッターもあるので、暗闇でも手ブレを気にせず静かに撮影することができます。
多少の不満はα7S IIIとの価格差として
低画素高感度のかなりピーキーな性能なのでα7S IIは基本的には玄人向けの扱いにくいカメラです。
それを理解してもなお不満な点としては、動画向けカメラなのに液晶がバリアングルではなくて、チルトであることと、タッチ液晶ではなかったり、記録メディアがSDカードである点などがあげられます。ついでに言うと、動画の記録が30分制限となっていたり4K60pでの録画が出来ない点がありますが、これらの不満点は2020年10月9日に発売されるα7S IIIで全て解消されています。
その分、価格はα7S IIの倍です。α7S IIとα7S IIIでは動画機としては大きな差があると言えますが、一方で写真機としてはそこまで大きな差はありません。低照明での写真撮影を目的とするなら、α7S IIは手頃の価格となっています。
特に後継機が発売されたということで、中古市場が活発になりそうです。常にメイン機として使われるカメラではありませんが、他メーカーには代用できるような機種もないので1台持っておきたいと考えると、中古で安価な出品があれば要チェックです。
α7S IIの性能を引きだす「FE 70-200mm F2.8 GM OSS」
α7S IIの暗所耐性の高さを活かすなら、なるべく明るいレンズを使いたくなります。ストロボ不使用での撮影において、既存のデジタル一眼の限界を超えた、α7S IIにしか撮れない写真を撮るならなるべく明るいレンズが必要です。
そんな明るいレンズの中でも注目したいのがFE 70-200mm F2.8 GM OSSです。いわゆる大三元の望遠ズームです。
望遠撮影では同じF値でも被写界深度が浅くなりがちで、絞って使うこともありますが、絞るとシャッタースピードが遅くなるのでISO感度を高める必要があり、ノイズが目立つ写真になるということがあります。また、望遠撮影ではストロボ光が届かなかったり、そもそもストロボが使えないこともあります。
しかし、α7S IIであればISO感度をあげてもノイズを抑えられるのでより自由に撮影できます。今まで70-200が使えなかったような薄暗い場所でも、α7S IIならば積極的に組み合わせて使うことができます。
ネット上のユーザーレビュー
■ ポジティブレビュー
- カスタムボタンが多いので使い勝手は自分好みにできる
- 全画素読み出しの美しい動画はこのカメラならでは
- 暗いところでもしっかりとAFが効く
- 暗所でも立体感のある写真を撮影することができる
- どこでも手持ちで撮影できるのでカメラを持ち出す機会が増えた
サイレントシャッターと高感度、ボディ内手ブレ補正の組み合わせは動画だけでなく写真でも撮影機会を大きく増やしてくれます。
■ ネガティブレビュー
- 動画撮影は1バッテリーでは1時間がギリギリ
- EVFではホワイトバランスが狂って見える
- グリップに付いている録画ボタンが致命的に使いにくい
- パターンノイズが発生する
- グリップは相変わらずエクステンション必須だが、そのせいで三脚が使いにくい
低解像度で使い勝手は悪そうですが、そういったネガティブレビューはほとんど見られませんでした。
まとめ
α7S IIは実は宇宙空間で初めて4K動画撮影を行った民生カメラです。宇宙空間は昼夜での明暗差が大きく、α7S IIのISO 50〜409600という他のカメラにはない幅広い感度で撮影出来るという強みが活きた撮影ができます。
さすがに宇宙空間で撮影する人はそうそういないと思いますが、地上でも暗がりの中で宇宙の神秘を見つけ出すことが出来る、他のカメラには出来ない撮影が出来るカメラです。
レンズマウント | |
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レンズマウント | SONY Eマウント |
撮像素子 | |
センサーサイズ | フルサイズ(35.6×23.8mm) |
有効画素数 | 1,220万画素 |
ダスト低減機能 | ○ |
映像エンジン | BIONZ X |
画像記録 | |
記録媒体 | SDHCカード
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スロット数 | シングルスロット |
記録画素数 | 35mmフルサイズ時
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画像ファイル | JPEG/RAW |
動画 | |
4K対応 | ○ |
記録サイズ | XAVC S 4K(3840 x 2160):30p
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記録形式 | XAVC S/AVCHD規格 Ver.2.0準拠、MP4 |
ライブビュー | |
フォーカス | コントラスト検出方式 |
シャッター | |
シャッター速度 | 1/8000~30秒 |
連続撮影速度 | 最高約5.0コマ/秒 |
露出制御 | |
測光方式/測光分割数 | 1200分割ライブビュー分析測光 |
ISO感度 | 100〜102,400 |
AF | |
測距点 | 最大169点 |
ファインダー | |
視野率 | 100% |
倍率 | 約0.78倍 |
ストロボ | |
内蔵ストロボ | - |
液晶モニター | |
サイズ | 3インチ 122.88万ドット |
可動式 | チルト可動式液晶 |
I/F | |
インターフェース | USB、HDMI |
無線LAN | |
Wi-Fi機能 | ○ |
ネットワーク | |
NFC | ○ |
Bluetooth | - |
防塵・防滴 | |
防塵・防滴 | ○ |
手ブレ | |
手ブレ補正機構 | ○ |
GPS | |
GPS | - |
電源 | |
撮影可能枚数(ファインダー) | 310枚 |
撮影可能枚数(ライブビュー) | 350枚 |
動画撮影可能時間 | ファインダー使用時:約55分
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USB充電 | ○ |
使用電池 | リチャージャブルバッテリーパック NP-FW50 |
サイズ・重量 | |
サイズ | 約126.9(幅) x 95.7(高さ) x 60.3(奥行き)mm |
重量 | 584g |
発売日 | |
発売日 | 2015年10月16日 |
製品情報
- カテゴリ
- ミラーレス一眼
- メーカー
- SONY
- タイプ
- ハイアマチュアモデル
- マウント
- SONY Eマウント