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Nikon AI Nikkor 50mm f/1.2S

Nikon AI Nikkor 50mm f/1.2S

1981年の発売から現在まで、製造が継続されているレンズです。開放付近の柔らかな描写と、f/5.6以降に顕著となるシャープさを併せ持ち、ポートレートから風景撮影までこなせるレンズとして人気の高い一本です。新品で購入できる点も魅力ですが、手頃な中古の存在も見逃せません。今回は、AI Nikkor 50mm f/1.2Sの魅力や作例、中古市場についてご紹介いたします。

オールドレンズ / Nikon / 標準
新品:
54,800円〜(8)
中古:
37,800円〜(60)
フィルムカメラの全盛期から、現代のデジタルカメラとの組み合わせでもその実力は色褪せない、万能型の大口径標準レンズ。

Nikon AI Nikkor 50mm f/1.2Sの外観
出典:flickr(@ lecates)

Nikon F3 / AI Nikkor 50mm f/1.2S
出典:instagram(@neontetra25)

Nikon Df / AI Nikkor 50mm f/1.2S
出典:flickr(@ Atsushi Ozawa)

Nikon D800 / AI Nikkor 50mm f/1.2S
出典:flickr(@ Atsushi Ozawa)

Nikon F3 / AI Nikkor 50mm f/1.2S
出典:flickr(@ chia ying Yang) 


1.柔らかさとシャープさという背反する二面性を高レベルで実現した銘レンズ

 
全体的な描写傾向としてはAI Nikkor 50mm f/1.4Sと同様の「開放で柔らかい、絞ってシャープ」なレンズと言えますが、f/1.2という開放f値により、50mm f/1.4Sよりも更なる柔らかさが際立つレンズです。しかし、単なる柔らかいだけのレンズでは無く、開放付近ではその柔らかさの中にもしっかりとした芯が感じられ、絞って使えばキレのあるシャープな描写が得られる点が、このレンズ最大の特長でしょう。
 
過去には開放付近の柔らかさが強調され、ニッコールのシャープさが感じられないレンズとの評も有ったようですが、このレンズの評としては些か不十分に感じます。

これには、大口径レンズの宿命として、逆光時のフレアやゴーストが顕著に出てしまう場合も有ることや、フィルムカメラのファインダーでは、被写界深度が浅さからピントの“山”が掴み難い等の理由から生まれた、極端な意見と思われます。

長い発売年月の間に、フレアやゴースト対策の一つとして、レンズコーティングが変更され(初期は青色や紫系が目立つコーティングから、現行は緑系のコーティングに変化)、デジタルカメラの、モニター画面上のピント確認機能や、なによりも、写真の楽しみ方自体が多様となり、フレアやゴーストも一つの「表現」と捉える動きが活発になった事で、ようやくこのレンズが正しく評価される土壌が出来上がったと言えるでしょう。
 
そのように考えると、登場が早すぎたレンズであるかも知れませんが、ニコン自身がこのレンズの真価を確信していたからこそ、約40年というロングセラーに繋がったのかも知れませんね。
 

2.ニッコール標準レンズの兄弟

 
当時の50mm前後の焦点距離を持つAI-Sニッコールレンズのラインナップとして
 
  • AI Noct-Nikkor 58mm f/1.2S(1982)
  • AI Nikkor 50mm f/1.2S(1981)
  • AI Nikkor 50mm f/1.4S(1981)
  • AI Nikkor 50mm f/1.8S(1981)
  • AI Micro-Nikkor 55mm f/2.8S(1981)
 
が挙げられます。カッコ内の数字は発売された西暦年を表します。
この中で、入門型一眼レフ用の標準レンズ的な色合いが強いAI Nikkor 50mm F1.8Sや、マクロ撮影を主なフィールドとするAI Micro-Nikkor 55mm F2.8Sを除き、AI Noct-Nikkor 58mm f/1.2とAI Nikkor 50mm f/1.4SとAI Nikkor 50mm f/1.2Sの関係性について、簡単に考察してみることにしましょう。
 
2-a ルーツとしてのAIニッコール
 
AI-Sニッコールとなる前のAIニッコール時代は
 
  • AI Noct Nikkor 58mm f/1.2(1977)
  • AI Nikkor 55mm f/1.2(1977) → AI Nikkor 50mm f/1.2(1978)
  • AI Nikkor 50mm f/1.4(1977)
 
のラインナップでした。
 
この中でNoct Nikkor を除くf/1.2のモデルのみ、焦点距離が55mmから50mmへ、レンズ構成も5群7枚から6群7枚へ変更されています。
Ai Nikkor 55mm f/1.2を更に以前のNew Nikkor 55mm f/1.2(1975)の系譜と捉えて考えたとしても、AI Nikkor 50mm f/1.2Sの約40年という発売年数に比べて、些かモデルチェンジサイクルが早すぎる気がしますが、この辺りの事情は
 
  1. f/1.2の標準レンズのラインナップを堅持しつつ、
  2. 最終的に焦点距離を「50mm」とした、f/1.2を開発・発売する
 
であった模様です。
 
当時は「50mm」という焦点距離でf/1.2を実現するレンズ設計はハードルが高く、業界の盟主としてニコン自身が満足できるレンズを世に送り出すには、少々時間が必要だったのでしょう。
 
このようにニコンの標準 f/1.2レンズは数度のモデルチェンジで熟成され、AI Nikkor 50mm f/1.2Sをもって完成されたと言えますが、AI Nikkor 50mm f/1.2Sにとってやや不運であったとも言えるのが、長兄的なAI Noct-Nikkor 58mm f/1.2Sと弟分的なAI Nikkor 50mm f/1.4Sの存在でした。
 
2-b “モンスターレンズ” AI Noct-Nikkor 58mm f/1.2S
 
AI Noct-Nikkor 58mm f/1.2Sは、夜想曲(ノクターン)を由来とした「Noct」の名が示すように、夜景や天体撮影用の大口径標準レンズという位置づけで登場したレンズで、その中身は「熟練技術者の手による研磨型非球面レンズを搭載し、専用の検査工程を経て出荷された」“モンスター”とも呼べる性能のレンズでした。

当然、それらのコストを反映し、AI Nikkor 50mm f/1.2Sの約3倍の価格設定となり、決して一般的な標準レンズという位置づけではありませんでしたが、このレンズの存在がAI Nikkor 50mm f/1.2Sよりも“更なる上位レンズが存在する”というイメージを構成した事は否めないと思われます。
 
2-c “優等生” AI Nikkor 50mm f/1.4S
 
先程も述べましたが、AI Nikkor 50mm f/1.2Sの描写傾向は、AI Nikkor 50mm f/1.4Sと近い存在と言えるでしょう。

ただ、AI Nikkor 50mm f/1.4Sはその無理の少ない設計から、ボケ具合やフレアやゴーストの発生もAI Nikkor 50mm f/1.2Sに比べて良い意味で「おとなしく」、更には小型・軽量かつ、カメラに装着した時のまとまったデザイン感の良さや、f/1.4という実用上充分な明るさを備えている点、事実上のカメラセット標準レンズとして設定された良心的な価格という部分も評価され、ユーザーにとってバランス良くニッコールを体感できる“優等生的な”存在であったと思われます。
 
2-d “モンスター”と“優等生”の狭間で
 
モンスター”と“優等生”に挟まれて、肩身の狭い感もあるAI Nikkor 50mm f/1.2Sですが、絞り羽根の枚数はAI Noct-Nikkor 58mm f/1.2Sと同じ9枚(AI Noct-Nikkor 58mm f/1.2やAI Nikkor 50mm f/1.4Sは7枚)で有る事や、AI Nikkor 50mm f/1.4Sと併売される形でその後40年もラインナップに残した点を考えると、むしろニコンの本命標準レンズはAI Nikkor 50mm f/1.2Sなのかも知れません。

皮肉にも、兄弟レンズの特長が「わかりやすかった」為、その性能が霞んで見えた時代も有ったのかもしれませんが、先述の通り、デジタルカメラ時代の到来や、写真の楽しみ方の多様性を迎え、今後は間違いなく評価が高まっていくレンズであると思われます。
 

3.中古市場とAIとAI-Sについて

 
現行販売レンズでもあり、希望小売価格は82,500円、ニコンダイレクトでの販売価格は74,250円(税込)となっております。
中古市場では20,000円台からの商品も見受けられますが、30,000円~50,000円前後の値付けが多く見られ、人気の高いニッコール標準レンズという事も有り、取扱店ではやや強気の価格設定が行われていると思われます。購入検討の際には、量販店でのポイント還元やキャッシュレス決済のキャンペーン等を含めた新品の実質価格を念頭に、時間をかけて複数の店舗を回り、良質の中古を探すといったスタンスが適しているでしょう。
 
気を付けたいのは、安価なAI Nikkor 50mm f/1.2Sだと思って購入すると、前モデルのAI Nikkor 50mm f/1.2だったという場合です。
カメラ店ではこのような混同は起こらないと思われますが(それでも、念のため確認を)、カメラに詳しくない出品者がオークションに出品している場合は要注意です。

AI Nikkor 50mm f/1.2Sの場合、絞り羽根の枚数(7枚→非S 9枚→S)、マウント面のくぼみ(くぼみ無し→非S くぼみ有り→S)、最小絞り値の塗色(青→非S 橙→S)で判断可能と思われますので、オークション上での質問や、詳細な画像の提供が受けられる場合は、是非とも活用をお勧めします。


作例紹介


Nikon D300 / AI Nikkor 50mm f/1.2S
出典:flickr(@ nosha)

Nikon D200 / AI Nikkor 50mm f/1.2S
出典:flickr(@ nosha)


ネット上のユーザーレビュー


柔らかさの中にも芯のある、ニッコール特有のボケ味に言及する声が多く見受けられました。現行品ではありますが、基本設計は40年前のレンズという事で、最近のレンズにはない描写感を推す声も多く聞かれます。この点をもってクセのあるレンズとの評もありますが、好意的に捉えられたニュアンスとしての評価でしょう。同じく、現行品である故にオールドレンズでありながら、修理対応に関しても安心できるといった魅力も人気の要因の模様です。
 

まとめ

 
やや不遇な立ち位置の為、評価の低い時代を経験したレンズであるかも知れませんが、ニコンが40年もこのレンズを造り続けている事が、何よりもこのレンズの優秀さを示しています。

50mmという焦点距離の為、ポートレートではモデルとの撮影距離に若干気を配るシーンが有るかも知れませんが、開放付近の柔らかさは50mmレンズとは思えない魅力を醸し出してくれます。

また、風景撮影では絞り込んだ時のシャープさを活かし、広角レンズのような大胆な構図にも挑戦できると思われます。フィルムカメラの時代には、「50mmを使いこなしてこそ、他の焦点距離のレンズを使いこなす事が出来る」等とよく言われました。絶対的な正解では無いかも知れませんが、裏を返せば50mmの万能性はこの時代から認識されていた証左と言えるでしょう。

機会が有れば、是非AI Nikkor 50mm f/1.2Sを使いこなし、新たな表現を追い求めてみませんか。このレンズはそんな期待にきっと応えてくれるレンズでしょう。
基本仕様
対応マウントNikon Fマウント
フォーカスMF
レンズ構成6群7枚
絞り羽根枚数9枚
焦点距離

最短撮影距離50.0cm
最大撮影倍率0.12倍
開放F値F1.2〜16.0
画角46度
防塵-
防滴-
サイズ・重量
最大径×長さ68.5x47.5mm
重量360g
フィルター径52mm
発売日
発売日1981年01月01日