TAMRON 90mm F/2.8 Di III MACRO VXD (Model F072) [ニコンZ用]

伝統を引き継ぎアップデートされた新時代のタムキュー

もともとマクロレンズは文献複写という明確な目的を持ったレンズであるため、どのメーカーのマクロレンズも基本的にはシャープで歪みのほとんどでない描写性に優れている反面、ボケ味が硬いなど表現性に乏しいというのが通例でした。

そんな中登場したのがTAMRONの初代タムキューである90mm F2.5。ポートレート撮影でも通用する柔らかく美しい描写も兼ね備え、マクロ域だけでなく90mmという焦点距離もいかんなく活用できる「ポートレート・マクロ」として人気に。伝統の礎を築くこととなります。

90mm F/2.8 Di III MACRO VXDにおいてもその伝統を継承。TAMRONにとって初めての12枚の絞り羽で円形絞りを実現したところからも、このシリーズにおける表現力の重要性がうかがえます。それに加えて、レンズ構成の12群15枚の中に非球面レンズを使わず球面レンズのみで構成し、非球面レンズならではの年輪ボケを出にくくしているのも特筆ポイントでしょう。

オールラウンダーさを強めた使い勝手の良い仕様

全長126.5mmと、開放F2.8の中望遠マクロレンズとしては比較的コンパクト。重量も約630gと軽めなので取り回しはいいです。フードに窓付きのものを採用し、PLフィルターやクロスフィルター、動画撮影における可変NDフィルターといったその都度操作しないといけないフィルターも使用しやすくので、より表現を追求しやすい仕様となっています。ちなみに、フィルター径は67mmとTAMRONが展開するフルサイズミラーレス用レンズシリーズと同じ径にされているので、TAMRONレンズを多く取り入れている人であればフィルターを共有することができます

AFには VXDリニアモーターフォーカス機構を採用し、素早く正確なピント合わせを実現。当然、等倍域までカバーしているためピントのレンジがかなり広いのですが、フォーカスリミッタースイッチを搭載しているため、撮影中に大きくピント位置を変化させても素早く対応することができます。

マクロ域におけるシビアなピント面の追い込みも、軽さの中にトルク感を加えたMF操作を実現することでカバー。簡易の防滴構造と防汚コートで、環境をあまり気にすることなく、さまざまなシチュエーションで撮影を楽しむことができます。

ユーザーレビュー

■ ポジティブレビュー

• 造りが良い
• フィルター操作用の窓がとても使いやすい
• AFの速度と精度は申し分なし。MFも操作しやすい
• 逆光耐性もマクロレンズとしてはしっかりしているのでシチュエーションにこだわらずつかいやすい

全体的に評価が高く、クオリティの高さがうかがえる仕様。逆光を利用したハイキーな写真でもコントラストを維持した画作りが行え、描写性能は申し分なしといったところ。

■ ネガティブレビュー

• 操作性はシンプルなのはいいが、AF/MFスイッチがなかったのは残念
• 開放での周辺光量落ちが気になる
• 解像性能は他社のマクロレンズに劣る

マクロ撮影ではAFでは対応できない部分をMFで即座に対応したいので、手元スイッチは欲しかったところ。解像性能の比較でSIGMA製の同タイプレンズが挙げられていましたが、画作りの方向性が違うので、好みで評価は分かれそうです。

まとめ

ミラーレス機に完全対応した新時代の“タムキュー”90mm F/2.8 Di III MACRO VXD (Model F072) 。かつてのタムキューと比べて少々値段は高くなっていますが、それでも純正レンズよりもリーズナブルなので、Nikon ZマウントやSONY Eマウントを使用している方はぜひご検討のほど。マクロレンズならではの切れ味鋭い描写の中に繊細さを交えたやさしい表現を盛り込みたい方、ポートレートレンズと併用したい方にオススメです。