Nikon NIKKOR Z 85mm f/1.2 S

明るさと描写性能に注力した最高峰ポートレートレンズ

85mmという焦点距離のレンズは、ポートレートレンズとしての役割を担うことが多いこともあり、各社ともに基本的にはハズレのない、高性能レンズがラインナップされています。NikonのZマウントにしても同様、2019年にリリースされたNIKKOR Z 85mm f/1.8 Sは、単焦点レンズとしては中庸なF1.8というF値のレンズにも関わらず、プロユースも考慮した高級ラインのS-Lineシリーズとして手掛け一線を画す描写力を実現しています。

そんなNIKKOR Z 85mm f/1.8 Sよりも一段明るいF1.2を誇る単焦点レンズNIKKOR Z 85mm f/1.2 Sは、そのスペックがゆえに非常に大きく重いレンズとなっています。とはいえ、全長141.5mm、フィルター径は82mm、重さは1160g。先にリリースされた同じF1.2シリーズのNIKKOR Z 50mm f/1.2 Sと比べて70gほどしか重くなっていないことを考えると、F1.2に応じた重量過多にはならないように努めていることがわかります。

NIKKOR Z 85mm f/1.8 S自体、ボケの表現にもこだわった中望遠レンズらしい性能にはなっていますが、F値が低いからこそ可能な表現力というものがやはりあって、そういった理由からもNIKKOR Z 85mm f/1.2 Sのリリースを待ち望んでいた人は多かったことでしょう。

F1.2ならではの強いボケ味の表現力を活かすべく、二重ボケや非球面レンズによる玉ねぎボケも軽減。F1.2がもたらす大きなボケ味によるきれいなグラデーションが効いた絵作りを楽しむことができます。

EDレンズや2枚の非球面レンズで収差もしっかり軽減。嫌なフリンジが出にくく、積極的に開放での撮影が行えます。定評のナノクリスタルコートも採用しているので逆光耐性も強力。自然光が差し込むドラマチックなシチュエーションでもストレス無く撮影に応じられそうです。

スチール＆動画でも活躍する操作性

レンズにあるスイッチ類はAF／MFの切り替えとファンクションボタンのみとシンプル。段差が設けられたフォルムは、目視をしなくてもピントリングやコントロールリングの把握に役立ちます。コントロールリングはクリックレスなので、絞り値やISO感度や露出補正を割り振れば、動画撮影中にも露出コントロールが可能。

ステッピングモーターを2つを搭載したマルチフォーカス方式のAFは高速で静か。動画撮影や、ウェディング、クラシックコンサート、収録現場での記録撮影などの静寂な場面でのスチール撮影でも支障をきたしません。

S-Lineということで質感良好。もちろん防塵防滴性能が備わっているので、シーンにとらわれない撮影が可能です。

ユーザーレビュー

■ ポジティブレビュー

• 開放から最高レベルの写り
• ボタン配置や形状が良く操作しやすい
• コントロールリングのトルク感の塩梅が良い
• 玉ボケの仕上がりも良好。F2.2にすると口径食もほぼみられなくなる

重さは数字通りしっかり感じるものの、操作性の良さがカバーして取り回しが良いという意見。

■ ネガティブレビュー

• 高い
• 色収差が目立つときがある
• 携帯性は良くない

スペックを考えれば致し方ないのですが、NIKKOR Z 85mm f/1.8 Sとの価格差が大きいので高額に感じる人が多いようです。

まとめ

非常に重くて高額なNIKKOR Z 85mm f/1.2 Sですが、他の追従を許さない描写性能のZマウントがS-Lineとして手掛けたレンズということで、格別な性能の良さは約束されています。Zマウントユーザーでポートレートを生業としている方はもちろん、これからそうなりたいと思っている人にも、NIKKOR Z 85mm f/1.8 Sでワンクッション置くことなく、このレンズに飛び込むことをオススメします。