製品解説
スペック情報
一眼レフで現実的な最小F値を実現したレンズ
開放F1.2という明るさはCanonレフ機用レンズでは最も明るいF値となっています。その中で標準域で最も明るいレンズがEF50mm F1.2L USMということになります。
実はCanonには1989年発売のEF50mm F1.0L USMという世界一明るいレンズがありました。この「F1.0」という値は人間の瞳の明るさと言われており、カメラのレンズマウント径やフランジバックはこのF1.0というF値を実現できるように設計されています。
フルサイズミラーレスの登場時に、大口径ショートフランジバックで明るいレンズを設計可能になると言われましたが、実はレフ機マウントの口径とフランジバックでもF1.0は実現可能なのです。
しかし、この「EF50mm F1.0L USM」は幻のレンズと呼ばれています。366,000円という当時ではかなり高額なレンズでありましたが、それでも売れば売るほど赤字となるほど製造にコストのかかるレンズで、直にレンズラインアップからは外されてしまい幻のレンズとなりました。
そこから考えると2006年発売でメーカー希望小売価格185,000円というEF50mm F1.2L USMはお手頃にも思えてきます。また、EF50mm F1.0L USMがフィルター径72mmで985gという超巨大レンズであったことに対して、EF50mm F1.2L USMはフィルター径は同じ72mmですが重さは590gと約半分です。
レンズの設計では、開放F値とレンズ全体のサイズ感、製造コストと価格のバランスが求められます。そういった意味ではEF50mm F1.0L USMは限界を超えたところで作られたレンズであり、EF50mm F1.2L USMは実用においてバランスが取れたレンズと言えます。
では、EF50mm F1.2L USMの描画は
50mm F1.2は視野角や明るさが人間の目に近いレンズです。EF50mm F1.2L USMは発売の古いEF50mm F1.4 USMとは違い、開放からシャープでボケ味も美しいレンズです。
もちろん、2010年以降に発売されたレンズの様な高解像度デジタル一眼に対応した最新Lレンズに比べると開放での描写に物足りなさを感じる部分もありますが、全体的にCanonらしい高コントラストな描画となっています。
F1.2で撮影すると、ピント面は非常に薄く、ポートレートで斜めから撮影すると片方の目にしかピントは合いません。このような合焦している片方の目から、もう一つの目に向けてとろける様にアウトフォーカスする描写はF1.2でしか描けない描写になります。
また、街角スナップでも、開放で撮影することで目で見たままの、主題とする被写体にフォーカスし、何気ない一枚をドラマチックに描くことができます。他のレンズと比較しても、EF50mm F1.4 USMや撒き餌と呼ばれるF1.8 STMとは描写力は段違いで、大きなボケが広がる開放F値から積極的に使いたいレンズと言えるでしょう。
決して軽くコンパクトなレンズというわけではありませんが、Lレンズということで防塵防滴性もあり、街歩き撮影ではかなり重宝します。
気になる後継機の動向は
さて、2006年に発売されたEF50mm F1.2L USMは後継機が待たれる機種でもあります。
2018年に発売されたCanonミラーレス用のRF50mm F1.2LはEF50mm F1.2Lから大きく進化しており、レベルが全く違うレンズと言っても過言ではありません。
RF50mm F1.2Lは画角全体で高いコントラストを保ち、ボケ味も非常に美しくなっています。RF50mm F1.2Lの性能を見てしまうと、レフ機ユーザーとしてはEF50mm F1.2Lの後継機に大きな期待を寄せずにはいられません。
しかし、残念ならがRF50mm F1.2LはEF50mm F1.2Lとは全く違った設計で作成されています。レンズ群数も絞り形状も全く違います。
50mmレンズでよく使われるダブルガウスはレフ機の様にミラーの存在でフランジバックが長くなるカメラに適していますが、ミラーがないことでショートフランジバックとなっているRFマウントにおいては全く違った設計理念が採用されています。
つまりRF50mm F1.2Lの描画力はミラーレスならではのもので、レフ機ではまた違った設計のレンズで実現される必要がありますが、R5の発売でCanonプロユーザーのフルサイズミラーレスへの移行が加速される中でCanonがどこまでレフ機レンズ開発にリソースを割くかは疑問です。
Canonは大三元レンズの人気が高く、高速AF時代においては標準域は単焦点ではなく24-70mmのズームレンズが重宝されていることを考えるとレフ機用単焦点50mmはコアなアマチュア向けとも考えられます。
では50mmF1.4のLレンズ登場はどうでしょう。
EF50mm F1.4 USMというレンズがありますがLレンズとしてはF1.4は発売されていません。もし、10万円ぐらいでEF50mm F1.4Lが発売されればそれなりに人気がありそうではありますね。
実はEF50mm F1.4L IS USMの発売が2018年に噂となったことがありました。根拠のない噂ではないので、それなりCanonも開発していたと考えられますが、SONYフルサイズミラーレスの勢いを跳ね返すべくCanonもフルミラ移行が進められている最中でもあり、そのまま噂は消滅してしまいました。
もしEF50mm F1.2L後継機にRF50mm F1.2Lの性能を求めるのであれば、フルサイズミラーレス移行を検討してRF50mm F1.2Lを購入したほうが早いと言えます。上記はあくまで推測の域を出ませんが、もうしばらくレフ機を使う場合は、標準域で明るいレンズはEF50mm F1.2L USMが選択肢となるのではないでしょうか。
ネット上のユーザーレビュー
【ポジティブレビュー】
- 鏡筒の作りは剛健でヘリコイドの精度も高い
- 2000万画素前後なら十分にLレンズらしい美しい描画となる
- ガチピン写真はその場の空気感まで描写できる
- 85mmLと比べれば圧倒的に軽く街歩きでも使いやすい
発売当初に比べれば描画力に対する評価は最新のレビューでは下がっていますが、それでも十分にLレンズとしての性能を発揮してくれるレンズといえます。
【ネガティブレビュー】
- F値が変わるとピンずれして使えない
- レンズに合わせた撮影設定が必要
- 全体的な色味は緑寄りになる
- 近距離の撮影ではフリンジが目立つ
- さすがに時代遅れ感は否めない
気になったのがF値が変わるとピンずれするという事象です。これはレビュー件数も多く、ある程度持病として対処するしかなさそうです。
まとめ
高画素数、高ISO、高速AFの昨今のデジタル一眼においては50mmの単焦点はやはり開発の優先順位がさげられており、EF50mm F1.2L USMも若干時代に取り残され始めた感のあるレンズではあります。
しかし、単焦点でしか実現できない開放F1.2での標準域の撮影では必ず使われるレンズです。EF50mm F1.2L USMは発売から10年が経ち、高画素な5Dなどでは若干の物足りなさを感じる場合もありますが1Dxや6Dなどであれば十分にF1.2Lの描画を楽しむことができます。
街角スナップなどで見たままの画を撮りたいと思うのであれば、Canonユーザーにとっては不動の選択肢ではないでしょうか。
基本仕様 | |
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対応マウント | Canon EFマウント |
フォーカス | AF/MF |
フルサイズ対応 | ○ |
APS-C専用 | - |
レンズ構成 | 6群8枚 |
絞り羽根枚数 | 8枚 |
焦点距離 | |
最短撮影距離 | 45.0cm |
最大撮影倍率 | 0.15倍 |
開放F値 | F1.2〜16.0 |
画角 | 46度 |
手ブレ補正機構 | - |
防塵 | ○ |
防滴 | ○ |
サイズ・重量 | |
最大径×長さ | 85.8x65.5mm |
重量 | 580g |
フィルター径 | 72mm |
発売日 | |
発売日 | 2007年01月26日 |
製品情報
- カテゴリ
- 単焦点レンズ
- メーカー
- Canon
- タイプ
- 標準
- マウント
- Canon EFマウント