製品解説
愛用者の作例(1)
スペック
「CanonのEFオールドレンズ」と呼べる存在
Canon EOS 5D Mark III / EF50mm F1.4 USM
EF50mm F1.4 USMは一言で言い表すなら「EFオールドレンズ」です。
発売日が1993年というレンズが未だにCanonのレンズラインアップにならんでいることは驚きですが、それだけ基礎設計の良さが際立っているということでしょう。
光学設計的には典型的な「ダブルガウス」と呼ばれる設計で、凸凸凹というレンズの組み合わせを絞りを挟んで左右対称に構成されており、レンズの構成が左右対称であることから歪曲などの収差に強いという特徴があります。
なお、レンズ設計はダブルガウス以外にもテッサー、ヘリア、ゾナーなど様々な設計方式がカメラの歴史の中で生まれています。
いずれも、いかに光の屈折のズレである収差を抑えるかということに心血を注いで開発されていますが、その中でもバックフォーカスの長さにメリットがあるということで一眼レフ時代においてはダブルガウスがメインの光学設計となりました。もちろん、特殊な集光が必要な広角や望遠、ズームレンズではダブルガウスとは別の光学設計が用いられますが、標準域の単焦点ではダブルガウスは長年定番の光学設計になっています。
余談になりますが、ガウスレンズはシンプルなレンズ構成で収差を抑えられることと、長いバックフォーカスがメリットとなりますが、ミラーレス時代になりバックフォーカスは短くなる傾向にあるので、今後はガウスレンズ以外の50mm単焦点も増えてきそうです。
さて、EF50mm F1.4 USM発売当時のカメラ業界の状況ですが、実は、50mmの単焦点は元々キットレンズとして開発されてきました。現代の様に高性能なAFが当然の機能となる以前は、ピント合わせがしやすい明るい単焦点が初心者ライクとされていたからです。カメラの性能が進化し、ズームレンズの機動性が重要視されるにつれ、キットレンズは単焦点から標準ズームになりました。
50mmの単焦点は市場の主戦からは外れていき、Canonでは1993年発売のEF50mm F1.4 USMが20年以上経っても更新されずにラインアップされ続けることとなりました。発売日1993年という古いレンズは、低解像度のデジカメ初期時代には使い勝手の良い明るいレンズでしたが、高解像度化が進むにつれてガウスレンズの弱点とされるコマ収差による描画の甘さが目立つようになりました。
しかし、これが逆にレンズの個性としてオールドレンズのように長く愛されるレンズとなりました。「オールドレンズの様」と言っても、EF50mm F1.4 USMはAFにはマイクロUSMを採用しているので、AFも十分機能します。
さすがに最新レンズのAF速度とまではいきませんが、オールドレンズみたいにAFが使えないので撮影しにくいということはありません。AF任せで手軽にオールドレンズ感を楽しむことができます。
EF50mm F1.4 USMの特徴的な描画とは
EF50mm F1.4 USMはF2.8程度まで絞ると、描画の甘さも消え、十分な解像力を発揮します。一方で、F1.4という明るい開放F値を生かして撮影すると、特に周辺部の描画が甘くなります。
周辺減光も見られたり、ボケ描写も滲むようなちょっとブレがあるようなボケで、オールドレンズにも似た描画となります。そういった点ではF1.4という明るさを生かしたシャープな描画を目的とする場合はこのレンズはあまりおすすめとはならないでしょう。どちらからというと柔らかな描写がほしいという場合に最適のレンズとなるため、雰囲気重視のポートレートなどは適しているといえます。
また、逆光耐性についても特殊なレンズコーティングなどはされていないので、フレアやゴーストを避けて撮影するというよりも、フレアやゴーストを生かして撮影したほうがこのレンズらしい写真が撮れそうです。
レンズフードはES-71 IIが別売りで設定されていて、フレアやゴーストをかなり軽減してくれると好評です。別売りということで、逆光が気になるならフード購入は効果的ですが、敢えてフレアやゴーストを活かすなら不要となりそうです。
Canon EOS 5D Mark III / EF50mm F1.4 USM
後ろの玉ボケをご覧いただくと分かりますが、開放ではかなり特徴的な後ボケとなっています
Canon EOS-1Ds Mark III / EF50mm F1.4 USM
特徴的な描画はモノクロにも応用が効きそうです
Canon EOS 70D / EF50mm F1.4 USM
F2以上に絞れば中心部はかなりシャープなのでポートレートでも使えます
Canon EOS 70D / EF50mm F1.4 USM
絞り羽は8枚で、玉ボケは真円にはなりません
Canon EOS 5D Mark III / EF50mm F1.4 USM
滲むようなボケ味は物撮りでも使えそうです
EF50mm F1.8 STMとはどちらを買うべきか
EFオールドレンズとしてファンも多いEF50mm F1.4 USMですが、初心者にとってはEF50mm F1.8 STMとどっちを買えばよいかは悩みの種ともなります。
製品 | Canon EF50mm F1.4 USM | Canon EF50mm F1.8 STM |
---|---|---|
価格 | 新品:38,800円〜 中古:15,700円〜 | 新品:15,045円〜 中古:11,900円〜 |
焦点距離 | 50mm | 50mm |
F値 | F1.4〜22.0 | F1.8〜22.0 |
最短撮影距離 | 45.0cm | 35.0cm |
絞り羽根枚数 | 8枚 | 7枚 |
手ブレ補正 | - | - |
防塵 | - | - |
防滴 | - | - |
重量 | 290g | 160g |
発売年月 | 1993年06月 | 2015年05月 |
単純に型名だけ見ると、EF50mm F1.4 USMは開放F値がより明るく、AFモーターも高性能なUSMとなっています。その分価格も高くなっています。
ポートレートなどで少しでも明るいレンズが欲しいという場合や、USMのAFスピードが欲しいという場合は価格差も性能なりということでEF50mm F1.4 USMを選択することとなりそうです。
しかし、実際のレンズ性能はどうかというと、メーカーページに掲載されたMTF曲線を見比べるとわかりますが、EF50mm F1.8 STMはレンズ周辺部でもコントラストは高くキープできるように設計されています。全体的な解像感は最新の設計が生かされているEF50mm F1.8 STMの方が高く、価格も加味すればより初心者向けレンズであるといえるでしょう。
EF50mm F1.4 USMは近年の高解像度化したデジタル一眼ではどうしても解像感不足は否めませんが、その一方で、解像感不足はレンズの味として現れることも事実です。
EF50mm F1.8 STMを買ってしまうと、どうしてもEF50mm F1.4 USMまで購入することは敬遠されてしまいますが、EFレンズの中でも特徴ある描写であるEF50mm F1.4は一度は使ってみたいレンズであることは事実です。安直にEF50mm F1.8 STMに飛びついてしまうと、EF50mm F1.4 USMの描写の味に気づくのが遅れてしまうというデメリットもあります。
EF50mm F1.8 STMは他のレンズとは違い中古売却してもあまり予算の足しにはならないので、両方買って50mmの単焦点が2本、というのはレンズ沼の匂いがしてきます。
EF50mm F1.8 STMはよく「レンズ沼の入り口」とも言われますが、様々な撮影に対応してレンズをそろえる予定があるなら、撒き餌に寄り道せずに特徴ある描画のEF50mm F1.4 USM、あまりレンズを揃える予定がないならEF50mm F1.8 STMで50mm単焦点は完結とするのが良いかもしれません。
ポートレートなどで少しでも明るいレンズが欲しいという場合や、USMのAFスピードが欲しいという場合は価格差も性能なりということでEF50mm F1.4 USMを選択することとなりそうです。
しかし、実際のレンズ性能はどうかというと、メーカーページに掲載されたMTF曲線を見比べるとわかりますが、EF50mm F1.8 STMはレンズ周辺部でもコントラストは高くキープできるように設計されています。全体的な解像感は最新の設計が生かされているEF50mm F1.8 STMの方が高く、価格も加味すればより初心者向けレンズであるといえるでしょう。
EF50mm F1.4 USMは近年の高解像度化したデジタル一眼ではどうしても解像感不足は否めませんが、その一方で、解像感不足はレンズの味として現れることも事実です。
EF50mm F1.8 STMを買ってしまうと、どうしてもEF50mm F1.4 USMまで購入することは敬遠されてしまいますが、EFレンズの中でも特徴ある描写であるEF50mm F1.4は一度は使ってみたいレンズであることは事実です。安直にEF50mm F1.8 STMに飛びついてしまうと、EF50mm F1.4 USMの描写の味に気づくのが遅れてしまうというデメリットもあります。
EF50mm F1.8 STMは他のレンズとは違い中古売却してもあまり予算の足しにはならないので、両方買って50mmの単焦点が2本、というのはレンズ沼の匂いがしてきます。
EF50mm F1.8 STMはよく「レンズ沼の入り口」とも言われますが、様々な撮影に対応してレンズをそろえる予定があるなら、撒き餌に寄り道せずに特徴ある描画のEF50mm F1.4 USM、あまりレンズを揃える予定がないならEF50mm F1.8 STMで50mm単焦点は完結とするのが良いかもしれません。
ユーザーレビュー
■ ポジティブレビュー
- 古い設計でも2〜3段絞れば悪くはないレンズ
- うるさくないボケでなかなかの表現力
- 使う頻度は少ないが、コレクションには必須のレンズ
- STMと比べればUSMはやはり速い
- 開放の柔らかい描写と絞ったシャープな描写の両方が楽しめる
汎用性の高いレンズというよりも、やはり個性を生かした撮影に使われるレンズといった印象です。
■ ネガティブレビュー
- EFレンズなのに根本的に不具合が発生しやすいレンズ
- 開放ではまったく使い物にならない
- グリスの調整をしないAFは故障しやすい
- 明るいレンズが欲しくて買ったが、あまり使わない
- USMというほどのAFスピードや正確性はない
設計が古いレンズということで、AFもUSMというほどの性能ではなく、故障率も高いという点には留意しておく必要がありそうです。
まとめ
デジタル一眼は今や4000万画素を超えるところまできて、そのためのレンズも高い解像力が求められるようになりました。解像感の高い写真が美しいことは言うまでもありませんが、解像感を突き詰めるとレンズの個性は薄れていくということにもなります。
EF50mm F1.4 USMは発売日が古くても新品で購入できるレンズで、AFも搭載されていますが、どこかオールドレンズの様な味わいある描画を楽しむことができるレンズです。
Canon EOS-1V / EF50mm F1.4 USM
Canon EOS-1V / EF50mm F1.4 USM
Canon EOS-1V / EF50mm F1.4 USM
Canon EOS-1V / EF50mm F1.4 USM
touchさんのストーリー
基本仕様 | |
---|---|
対応マウント | Canon EFマウント |
フォーカス | AF/MF |
フルサイズ対応 | ○ |
APS-C専用 | - |
レンズ構成 | 6群7枚 |
絞り羽根枚数 | 8枚 |
焦点距離 | 50mm |
最短撮影距離 | 45.0cm |
最大撮影倍率 | 0.15倍 |
開放F値 | F1.4〜22.0 |
画角 | 46度 |
手ブレ補正機構 | - |
防塵 | - |
防滴 | - |
サイズ・重量 | |
最大径×長さ | 73.8x50.5mm |
重量 | 290g |
フィルター径 | 58mm |
発売日 | |
発売日 | 1993年06月01日 |
価格情報2022.06.30 更新
製品情報
- カテゴリ
- 単焦点レンズ
- メーカー
- Canon
- タイプ
- 標準
- マウント
- Canon EFマウント
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Canon EF50mm F1.4 USM | Canon EF50mm F1.8 STM | SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art [キヤノンEF用] | Canon EF50mm F1.2L USM | Canon EF40mm F2.8 STM | SIGMA 30mm F1.4 DC HSM | Art [キヤノンEF用] | |
価格 | 新品:38,800円〜 中古:15,700円〜 | 新品:15,045円〜 中古:11,900円〜 | 新品:81,240円〜 中古:52,800円〜 | 新品:147,218円〜 中古:108,200円〜 | 新品:20,426円〜 中古:10,978円〜 | 新品:32,780円〜 中古:15,000円〜 |
焦点距離 | 50mm | 50mm | 50mm | 50mm | 40mm | 30mm(35mm判換算:45mm相当) |
F値 | F1.4〜22.0 | F1.8〜22.0 | F1.4〜16.0 | F1.2〜16.0 | F2.8〜22.0 | F1.4〜16.0 |
絞り羽根枚数 | 8枚 | 7枚 | 9枚 | 8枚 | 7枚 | 9枚 |
手ブレ補正 | - | - | - | - | - | - |
重量 | 290g | 160g | 815g | 580g | 130g | 435g |
発売年月 | 1993年06月 | 2015年05月 | 2014年04月 | 2007年01月 | 2012年06月 | 2013年03月 |