製品解説
スペック情報
ボリュームゾーンとD7500
“ボリュームゾーン”とは、市場において最も販売数が多い価格帯のことで、エントリーモデルやミドルクラスモデルの一部を合わせたものとなっています。一眼カメラにおいては10万円前後がボリュームゾーンですが、D7500は発売時点で14万円、その後価格が落ち着いて10万円を少し下回る価格となっているので、まさにボリュームゾーンのカメラといえます。
D7500はポジション的にミドルクラスといえるカメラで、エントリーモデルからのステップアップや、本格的にカメラをはじめる人の最初の一台といった位置付けです。ボリュームゾーン内とはいっても上の方の価格帯のため、単に最初の一台として使いやすい一眼レフというだけではなく、長年カメラを使ってきている人が買い替えても満足する性能といったものが求められますが、上位機種であるD500と同等の画像処理エンジン、8コマ/秒の高速連写、レンズ横ファンクションボタンや2つのコマンドダイヤル、上位機種と同等の操作性、高い防塵防滴性の確保など、既存のNikonユーザーにも満足できる使用感となっています。
レンズ交換式カメラは基本的に各社、交換レンズのマウントが違うので、一度カメラを買ってレンズを揃えていくと、同じメーカーのものを使い続けることになりますが、D7500を最初の1台にすれば、Nikonの上位機種にステップアップしても何の違和感なく操作ができるため、まさにNikon入門に適したカメラといえます。
Nikon D7500 / Nikon AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR
出典:flickr(@Herbert Frank)
Nikon D7500
出典:flickr(@Pasquale Paolo Cardo)
Nikon D7500 / Nikon AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR
出典:flickr(@Herbert Frank)
Nikon D7500 / Nikon AF-S DX NIKKOR 18-300mm f/3.5-5.6G ED VR
出典:flickr(@Herbert Frank)
Nikon一眼レフ/ミラーレス一眼相関図(2020年1月時点)※マッピングはCanon製品との対比で作成(運営者主観になりますので、参考程度にご覧ください)
D7200の後継ではない
D7500は型番的にいえばD7200の後継となりますが、コンセプトが大きく変更されているため、実際には後継機といえなくなっています。元々、D7000番台のカメラはNikon DXフォーマット、APS-Cプロ機であるD300やD500のサブ機という位置付けで、いわゆるハイアマチュアモデルでした。
ところが、D7500はより中間層向けの機種へとコンセプトを変更、エントリーモデルと上位モデルを繋ぐミドルクラスとして発売されたのです。そのため、D7200からはスペックダウンしてしまっている機能もあります。
大きな変更点としては、カードスロットがシングルになっているところと、バッテリーグリップが非対応となっているところです。この2つの機能はプロユースとして致命的ともいえるもので、プロがサブ機として使うには物足りないと不満が漏れる部分になります。また、画素数がダウンしていたり、ボディがマグネシウム合金ではなく炭素複合繊維を使ったことでプラスティッキーな質感となっていたりという点でも、D7200の後継機を期待していたユーザーからは不満の声が上がりました。
しかし、4K30p録画や動画撮影時の電子手振れ補正、タッチパネル式チルト液晶など、動画性能は大幅にスペックアップしていて、今まで動画性能で他社に後れを取っていたNikonにおいては、写真だけでなく動画も撮影するというユーザーが手を出しやすいカメラとなっています。
また、マグネシウム合金を使わず、軽量高強度な炭素複合繊維のモノコック構造とすることで、防塵防滴性や堅牢性は確保しながらも、小型化・軽量化することに成功しています。ボリュームゾーンの一眼レフということで、既存のNikonユーザーだけでなく、新規ユーザーも取り込むというコンセプトが感じられるカメラとなっています。
ライバル機Canon EOS 80Dとの比較
D7200からのコンセプト変更によって、Canon EOS 80Dと消費者ターゲットが丸被りとなったD7500。EOS 80DはD7500発売の前年、2016年に発売され、動画の撮りやすい一眼レフ機として、当時のYouTube人気とも相まって人気機種となりましたが、D7500は1年遅れての販売ということで、連写性能では大きくリードしており、動画もEOS 80DのHD60pに対して4K30pまでの対応と、性能面ではEOS 80Dを一歩リードする形となりました。
価格は同価格帯なので、D7500の方が一眼レフとしてはコストパフォーマンスが高いといえますが、YouTube撮影においては液晶の違いが差をつけました。YouTube撮影などで自撮りをする場合、チルト液晶とバリアングル液晶では大きな差が出ます。
そのため、YouTubeにはバリアングル液晶のEOS 80Dを推す動画が多くアップロードされ、販売台数に差が出る結果となったのです。ボリュームゾーンにおけるNikonの苦戦は、EOS 80Dのバリアングル液晶のような、時代に即した細かいニーズの吸い上げによるものなのかもしれません。また、ライバル機がYouTubeという超巨大コンテンツを味方にしてしまったことは、D7500が過小評価されてしまう一因ともいえます。
しかし一方で写真機として見れば、D7500は連写性能、連続撮影可能枚数、ISO感度、AF測距点などでEOS 80Dを上回っています。連写撮影がメインであれば、先のD500などへのステップアップを考慮に入れて、D7500からNikonマウントを選ぶというのもありではないでしょうか。
Nikon D7500
8コマ/秒の連写速度があれば、決定機を逃す可能性はかなり少ない
Nikon D7500
薄明かりが残った難しい星空撮影も、しっかり設定すればノイズ感なく撮影可能
Nikon D7500
白飛びしやすい白毛の猫も、かなりギリギリのところまでしっかり描写している
Nikon D7500
ISO2500でもノイズは全く気にならない。
型番資源の無駄遣いがNikonのボリュームゾーンにおける問題
ミドルクラスの一眼レフ機としては、Canon EOS 80Dに勝りこそすれ劣りはしない性能をもつD7500ですが、発売当初はなかなか評価が上がりませんでした。その大きな理由としては、Nikonによる「型番資源の無駄遣い」です。
デジタルカメラが登場して、たかだか20年。毎年モデルチェンジが行われる機種は少ないので、5~7世代ほどしかモデルチェンジしていないにもかかわらず、Nikon Dシリーズは型番に使える数字が少なくなってきています。それもそのはず、Nikonは桁数でカメラのグレードを管理していて、数字が大きくなっていくシステムを型番の基本としていますが、7000→7200→7500といった感じで飛び飛びなので、型番に使える数字が枯渇しかかっているのです。
そもそもD7500はD7200からの正常進化ではなく、FXフォーマットが生まれたことによるコンセプト変更を含めた別モデルともいえるもので、型番を全く違うものに変更しても良いとも思えるモデルチェンジなのですが、前述の様にNikonの型番資源にはあまり余裕がないので、別の型番を使えないのです。そのせいでD7500はD7200の後継機種としてみなされ、大幅進化を期待したNikonユーザーからなかなか高い評価を得られないこととなってしまったわけですね。
しかしD7500は発売から数年経過し、価格もこなれてくれば、2000万画素という必要最低限の画素数を確保しつつ、4K動画、チルト液晶、上位機種譲りのボタン配置や操作性などで非常にコストパフォーマンスの高い一眼レフとなっています。名が体を表していないせいで不遇の評価となっていますが、今一度スペックと価格をチェックして再評価したいカメラですね。
おすすめレンズ、AF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR
はじめて一眼レフを手に入れたとき、まずやるべきことは何でも写真に撮ってみるということ。一回でも多くシャッターを押すことで、一眼レフに慣れ、構図や設定のコツを掴むことが大切です。
そこでおすすめなのが、AF-S DX NIKKOR 18-140mm f/3.5-5.6G ED VR。ボディと一緒に購入できる所謂キットレンズで、その中でも高倍率のズームレンズです。本格的な望遠撮影にはちょっと足りないテレ端140mmですが、そこに物足りなさを感じるようになったら、100-400mmなどの超望遠ズームレンズを購入すれば望遠撮影は一通りカバーできます。ワイド端は18mmで、ちょっとした広角撮影には十分。
この一本をD7500に装着しておけば、スナップ撮影ではかなり多様な写真を撮ることができるでしょう。もちろんこの一本では、超広角撮影や超望遠撮影、マクロ撮影など、特殊な用途まではカバーできませんが、用途にあわせてレンズを買い足していけば、一眼レフライフが充実していきます。まずは18.0-140.0 mm f/3.5-5.6で、一回でも多くシャッターを押してみましょう。
ネット上のレビュー
■ポジティブレビュー
- D750のサブ機としては十分なAF速度と連写速度。
- APS-Cとは思えないほどノイズ耐性が高い。
- 一日1500枚程度の撮影では全く問題ないバッテリーの保ち。
- アクティブDライティングを、オートでJPEG撮って出しできる画質の良さ。
- ローパスフィルターレスなので、かなりシャープな描写が楽しめる。
発売当初こそ、D7200からスペックダウンなどと言われましたが、購入者の満足度は高いということがレビューから見て取れます。
■ネガティブレビュー
- やはり7200は名機。D7500へ買い替えたが不満が多い。
- レンズ横ファンクションボタンが窮屈で押しづらい。
- ストラップ取り付け部分が三角環ではなく、かなり違和感がある。
- シャッター音が他のNikon機よりも安っぽい。
- シングルスロットやボディの質感など、チープさが気になる。
ネガティブなレビューの多くは、他のNikon上位機種や先代D7200との比較でマイナス面が目立ってしまっている様子です。
まとめ
D7500はD7200からの大幅機能アップを期待したNikonユーザーや、YouTubeという時流に乗ったEOS 80Dというライバル機によって、過小評価となってしまった感のある一眼レフ機ですが、発売から時間が経過し不当な値下がりをしている今となっては、コストパフォーマンスの高い一眼レフということもいえます。
写真をずっと続ける趣味とするならば、入門機からスタートするよりもD7500からスタートし、次にD500やFXフォーマット機、フルサイズミラーレスなどを手に入れたときはD7500をサブ機として使えば、充実した一眼ライフを送ることができるでしょう。
長く使うに値する十分なスペックでありながら、手を出しやすい価格となっているカメラ、それがD7500です。
レンズマウント | |
---|---|
レンズマウント | Nikon Fマウント |
撮像素子 | |
センサーサイズ | APS-C(23.5×15.7mm) |
有効画素数 | 2,088万画素 |
ダスト低減機能 | ○ |
映像エンジン | EXPEED 5 |
画像記録 | |
記録媒体 | SDHCカード
|
スロット数 | シングルスロット |
記録画素数 | ・撮像範囲[DX(24×16)]の場合:
|
画像ファイル | JPEG/RAW |
動画 | |
4K対応 | ○ |
記録サイズ | 3840×2160(4K UHD):30p
|
記録形式 | MOV/MP4 |
ライブビュー | |
フォーカス | TTL位相差検出方式 |
シャッター | |
シャッター速度 | 1/8000~30秒 |
連続撮影速度 | 最高約8.0コマ/秒 |
露出制御 | |
測光方式/測光分割数 | TTL開放測光方式 |
ISO感度 | 100〜51,200 |
AF | |
測距点 | 最大51点 |
ファインダー | |
視野率 | 100% |
倍率 | 約0.94倍 |
ストロボ | |
内蔵ストロボ | - |
液晶モニター | |
サイズ | 3.2インチ 92.2万ドット |
可動式 | チルト式液晶 |
I/F | |
インターフェース | microUSB2.0、miniHDMI |
無線LAN | |
Wi-Fi機能 | ○ |
ネットワーク | |
NFC | - |
Bluetooth | ○ |
防塵・防滴 | |
防塵・防滴 | ○ |
手ブレ | |
手ブレ補正機構 | - |
GPS | |
GPS | - |
電源 | |
撮影可能枚数(ファインダー) | 950コマ |
撮影可能枚数(ライブビュー) | |
動画撮影可能時間 | |
USB充電 | - |
使用電池 | Li-ionリチャージャブルバッテリー EN-EL15bまたはEN-EL15aまたはEN-EL15 |
サイズ・重量 | |
サイズ | 135.5x104x72.5 mm |
重量 | 640g |
発売日 | |
発売日 | 2017年06月09日 |
製品情報
- カテゴリ
- デジタル一眼レフ
- メーカー
- Nikon
- タイプ
- ミドルモデル
- マウント
- Nikon Fマウント