2001年に発売されたEOS-1Dから、MarkII、画素数に重きをおいた1Dsなどと進化をし、2012年に画素数と高速連写を両立させたプロ機として1Dxが発売されました。そしてその進化系、後継機として一眼レフ最高速連写14コマ/秒という性能をひっさげて2016年に発売されたのが、EOS-1D X MarkIIです。
Canon EOS-1D X Mark II / EF24-70mm F2.8L II USM
EOS-1D X MarkIIは高嶺の花か、単なる高いところの徒花か
EOS 1Dシリーズは、プロ向けフラッグシップモデルとして高機能一眼レフであることはもちろん、その価格からアマチュアカメラマンにとっては高嶺の花とされてきました。
EOS-1D X MarkIIはリオオリンピック前の2016年4月に発売され、次期モデルが発売されるのは東京オリンピック前の2020年春と予想されますが、新機種発表直前の時期となっても、価格は発売時の65万円からわずかに2割程度の値下がりしかしていません。
EOS-1D X MarkIIの少し後に発売された、CanonハイアマチュアモデルのEOS 5D MarkIVが半値近くまで値下がりしていることを考えると、ほとんど価格の下がらないEOS-1D X MarkIIが市場でいかに評価されているかがわかります。
Canon EOSシリーズ相関図(2020年10月時点)
EOS-1D X MarkIIの画素数は2020万画素で、6000万画素のフルサイズミラーレスが発売される昨今となっては、さすがにやや画素数不足と感じざるを得ません。しかし、新聞は150dpiで印刷するため、2000万画素あればA1まで印刷可能ということで、プロが使っても十分な画素数とはいえます。
画素数だけ見ると物足りなく感じますが、EOS-1D X MarkIIの魅力はそこではありません。EOS-1D X MarkIIの魅力は、瞬間を逃さない14コマ/秒の高速連写と連写中にAFを外さない精度と追従性、そして写真を完成させる高い描画力です。
プロの撮影では良い写真を高確率で量産することが求められ、特にスポーツ写真や報道写真、ネイチャー撮影などでは撮り直しができないため、撮影成功率は最重要となりますが、EOS-1D X MarkIIはとにかく失敗しないカメラであるといわれているのです。
またEOS-1D X MarkIIは、画素数以外がCanon最高数値となっていることはもちろん、過酷な撮影に耐えるための防塵防滴性や耐久性など、プロが使うためのタフネス性も備えています。
Canon EOS-1D X Mark II / EF28-300mm F3.5-5.6L IS USM
Canon EOS-1D X Mark II / EF70-200mm F2.8L IS II USM + 1.4x III
連写速度ではEOS-1D X MarkIIが2コマ上回りましたが、ISO感度では最高常用感度でD5が上回っています。AF測距点はEOS-1D X MarkIIが61点、D5が153点と、一見D5が大きく上回っているように見えますが、D5は選択可能な測距点が55点ということで、実質的には大差ありません。フルサイズレフ機は、ファインダー撮影時のAF測距点がAPS-C機よりも中央に集まっているので、61点あればほぼ自由に測距点を選ぶことができます。
写真機の性能としてはがっぷり四つといったところですが、動画性能においてはEOS-1D X MarkIIが4K60pでの撮影が可能で、ここはD5を大きく引き離しています。動画性能ではEOS-1D X MarkIIに限らず、Canonがライバルを大きく引き離すところ。
一眼レフ動画を本格的にやるのであれば、EOS-1D X MarkIIは魅力的な選択肢となります。近年は報道写真やネイチャー撮影でも、写真だけでなくレフ機で動画を撮影するカメラマンが多く、EOS-1D X MarkIIはそういった要望に応えています。
そもそもα9はバッテリーグリップが外付けなので、防塵防滴に関してもレフ機フラッグシップモデルに比べると不安があります。ただし、この撮影可能コマ数については、EOS-1D X MarkIIがD5に負けている部分でもあり、フルサイズミラーレスに押されがちなレフ機の優位性を示すには、Canonも後継機でD5と同程度の撮影可能コマ数を確保しなければならないところでしょう。
気になる記録メディア問題は後継機で解決するのか
EOS-1D X MarkII、D5、α9で性能を競い合うということはユーザーとして大歓迎ですが、1点だけ問題なのが記録メディアで、EOS-1D X MarkIIはCFかCFast、D5はCFかXQD、α9はSDと、各社記録メディアが違うのです。
しかし、この解決策としてCFexpressという統一規格があり、次期フラッグシップモデルでは各社CFexpressで統一されるとの噂もあります。EOS-1D X MarkIIに採用されているCFは旧規格なので転送速度が足りませんが、CFastは転送速度が高いのでCFexpressとの互換性が確保されれば、後継機を購入した際に記録メディアを共有でき、便利になりますね。
フラッグシップ機の購入を検討するときは、記録メディアの動向もチェックする必要があるでしょう。
おすすめレンズ「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」
EOS-1D X MarkIIの様なフラッグシップ機は、目的に合わせてレンズを選べば、美しい写真を量産することが可能です。あえて目的ではなくカメラに合わせてレンズを選ぶとすれば、おすすめはEF100-400mm F4.5-5.6L IS II USMではないでしょうか。言わずと知れたCanon白レンズの代表的な1本ですね。
どんな撮影環境にも耐えるEOS-1D X MarkIIに100-400mmを装着すれば、今までは一眼レフを持っていくことを躊躇うような、水しぶきや粉塵が舞う場所でも、思いっきりシャッターを切ることができます。明るい超望遠単焦点も魅力的ですが、ズームレンズの方が限られた撮影ポジションでも構図の自由度が上がります。
Canon EOS-1D X Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
Canon EOS-1D X Mark II / EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM
100-400mmとの組み合わせは、過酷な環境であることが多いネイチャー撮影で大活躍。
ネット上のレビュー
■ポジティブレビュー
確実に写真を撮影して帰ってくることができる
ホールド部分が深くなり、グリップ感が良くなった
小気味良いシャッター音が、プロ機を使っている実感を与えてくれる
1Dxと比較して正常進化が感じられ、レフ機の完成とも思える出来
踏襲されたボタン配置で、マニュアルなしでも操作ができる
ポジティブレビューの多くが、1Dシリーズの継続ユーザーによる投稿の印象を受けました。
やはり信頼と安心のCanonフラッグシップ機といったところでしょうか。
■ネガティブレビュー
ペンタ部が伝統のちょんまげデザインで、ちょっとかっこ悪い
価格の割には満足感が少ない
連写時にセンサーにオイル?の様な汚れが飛ぶことがある
色味が変わっていて、元の色味に戻す作業が面倒臭い
7Dと比較するとフォーカスエリアが狭く、構図を作る時にちょっと不便
カメラの価格としては、デジタルカメラが登場した時代に比べればかなり安くなったとはいえ、別格の高価格であるEOS-1D X MarkIIなので、費用対効果としての満足感を求めるユーザーによるネガティブレビューが多く見られるように感じます。
まとめ
EOS-1D X MarkIIの後継機がMarkIIIとなるのか、新しい型番となるのかはわかりませんが、EOS-1D X からMarkIIへの進化がそこまで劇的ではなく正常進化であったように、MarkIIからMarkIIIへの進化も、画素数アップと記録メディアの変更による細かいアップグレードが主たる変更点となるでしょう。
後継機のMarkIIIへの興味は尽きませんが、現実的にフルサイズのタフネス高速連写機の購入を検討するのであれば、EOS-1D X MarkIIは価格が下がった今でも十分高価ですが、選択肢となりえます。妥協なき性能を追求した高嶺の花が垂れ下がってきた今こそがチャンスといえるかもしれません。