製品解説
スペック情報
α9という新しいカテゴリー
SONYはずっと、フルサイズミラーレスをα7という名称で発売しており、世代が変わればα7Ⅱ、α7Ⅲという様にローマ数字を、画素数やISO感度などに特化した機種にはsやRといったアルファベットを付与していました。
そんな中、新たに「9」という数字を冠し、登場したのがα9です。「9」はミノルタ時代から最上位機種に使用される数字で、α7シリーズとは一線を画すカメラという位置付けです。では、α7シリーズとは何が違うのでしょう。
積層型CMOSのメリットを活かした機能
最も大きな特徴はイメージセンサーにあります。SONYはデジタルカメラだけでなく、一般向けや業務用のビデオカメラ、更には他社用など、様々な機種のCMOSイメージセンサー開発・販売をしてきました。
その技術の蓄積の結晶ともいえるのが裏面照射型CMOSセンサーで、第3世代のα7シリーズが他社をリードする部分でもあります。更にα9では、裏面照射型CMOSにメモリ層を内蔵し、受光した光データをイメージセンサー内で一度記憶できるようにしました。この積層型CMOSのメリットを活かした機能が、ブラックアウトフリーの高速連写とアンチディストーションシャッターです。
レフ機で連写した場合、シャッターが開いている間はミラーアップしているので、ファインダーがブラックアウトして被写体を確認することができません。ミラーレス機の場合も、メカシャッターが降りている間、イメージセンサーに光が当たっていないので、やはりブラックアウトしてしまいます。そしてミラーレス機の電子シャッターの場合。物理的にはイメージセンサーに光が当たり続けているので、ブラックアウトを起こさないようにできるのですが、実際には受光信号の読み出し速度の問題でラグが発生するので、ブラックアウトしてしまいます。
α9は積層型CMOSで、読み出し速度をα7IIの20倍とすることでこの問題を解決し、ブラックアウトフリーの高速連写を実現しました。
そして、電子シャッターのもう一つの問題である、ローリングシャッター現象も解決。電子シャッターでは、撮影の前後もイメージセンサーに光が当たり続けているので、画像読み出しのラグが大きく、動いている被写体を撮影した場合、画像を読み出す間に被写体が動いてしまい、歪みが生じていました。α9は積層型CMOSによるアンチディストーションシャッターによって、ローリングシャッター現象も極限まで少なくなっています。
このように高速連写撮影への憂いがなくなっただけでなく、電子シャッターによってレフ機よりも更に速い20コマ/秒の速度と無音連写が可能になったことで、他社のプロ向けレフ機に対抗することができるようになりました。
価格と画素数の反転現象
ただしこの積層型CMOSは、α9のコストパフォーマンスにデメリットをもたらしているともいえます。α9発売の半年後に発売されたα7RⅢは、積層型ではない裏面照射型CMOSで、α9よりも高画素機でありながら低価格となりました。この価格と画素数の反転現象は他社でも起こっており、Canonでは「EOS-1D X Mark II」よりも「EOS 5D Mark IV」の方が低価格で画素数は多い、という現象が起きています。
しかし、1Dと5Dは全く違うボディ設計となっている上に、1Dが堅牢性や連続撮影、スタミナ面でプロ仕様となっているのと比べると、α9とα7RⅢにはそれほど大きな差がなく、連写速度や無音シャッターでの連写、AFポイント数などに差がある程度。
そのため、α9とα7RⅢのどちらを選ぶかは、連写性能か画素数、どちらを選ぶかが大きなポイントとなります。そういった点でα9は、最上位機種であるものの、純然たるフラッグシップとは言い切れない部分もあり、急速に進化を続けるフルサイズミラーレスならではのジレンマともいえるでしょう。
今後発売されるであろうα9 Ⅱは、SONYの技術が詰まったフラッグシップ機となるのでしょうか。楽しみなところです。
α9は10年使えるのか
世界初のフルサイズミラーレスプロ機といえるα9ですが、1つ、大きな課題があります。
それは、10年使えるかということ。Canon 1D、Nikon D5といった一眼レフプロ機は過酷な撮影環境を想定して作られているので、かなり高い堅牢性を備えており、プロ機は4年に1度のオリンピック毎にモデルチェンジしますが、10年愛用しているというプロカメラマンも多くいます。
α9はどうなのでしょう。こればっかりは、ある程度の台数が世に出て、現場の声が増えなければわかりませんが、スペックに、防塵防滴に”配慮した”と書かれているあたりはユーザーとして不安を覚えます。Nikon D5は火に入れたり凍らせたりしても動くという、びっくり動画がYouTubeにアップされていますが、α9にそこまでの性能は期待できないでしょう。もちろん、そこまでのエクストリームな性能は不要ですが、多少過酷な環境でも信頼できるカメラ作りをSONYには期待したいですね。
α9に最適化されたレンズ「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」
α9はα7RⅢよりも低画素機となっていますが、それによってブレ耐性があるというメリットも。高解像度機は高解像度であるが故に、どうしてもブレが目立つ傾向にあり、特にブレやすい望遠撮影などでは、高解像度になればなるほどカメラをしっかり固定して、シャッタースピードを速くしなければなりません。
そういう点を考えると、解像度が高いという理由だけでα7RⅢを選ぶと失敗する可能性もあります。望遠撮影がメインであれば、α9の方が解像度が低くても解像感のある写真を撮りやすく、また、動く被写体であれば、高速連写で決定的な瞬間を押さえることが可能です。
そんなα9専用ともいえるSONY純正レンズが「FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSS」。このレンズは先に挙げたような撮影を行うのに最適ですし、1Dや5Dと比較すると圧倒的にコンパクトなα9は、100-400という大きく重いレンズを装着しても十分な機動力があります。
野鳥を探して動き回る必要があるときや、サーキットの様々な場所で撮影をしたいというときなどには、その機動性が大きな武器となるでしょう。そもそもα9はα7RⅢと比較すると低画素というだけで、2000万画素以上あるわけですから、巨大ポスターでも作らない限りは十分な画素数で、小さな鳥でもトリミング可能な画質で撮影することができます。
以下、FE 100-400mm F4.5-5.6 GM OSSではありませんが、「FE 400mm F2.8 GM OSS」で撮影された野鳥の作例を紹介します。
ネット上のレビュー
■ポジティブレビュー
- ミラーレス機の有利性を生かしたミラーレス機。
- 無音シャッターと高速連写を堪能するなら唯一無二の選択肢。
- ファームアップで購入時の不満は続々改善されていくことが好感。
- プロ機の性能がありながら、軽量コンパクトで持ち運びがとても楽になった。
- 無音シャッターで音を気にせず連写できるので撮影の幅が広がった。
やはりミラーレス機の特性を生かしきったプロ機ということに高評価が集まっています。発売時の不満点がファームアップで改善されるというのもミラーレスならではといった感じです。
■ネガティブレビュー
- 角ばったデザインなので、ボディの角の傷が気になる。
- 価格に対して満足感が低い。高級機なのにデザインが安っぽい。
- RAWのデータ量が大きいので扱いにくい。
- レンズ取り外しボタンの位置がとても使い勝手を悪くしている。
- シャッターボタンのリアクションにラグがあるときがあり信頼できない。
デザインと操作性に対する不満が多く見られました。α9はプロ機と言ってもコンパクトなミラーレス機なので大きなボディの1DやD5に比較すると所有感が薄いと言えるかもしれません。
まとめ
半年後に発売されたα7RⅢが、高画素機でありながらミラーレス機らしく価格も抑えられ、高次元でバランスの良いカメラであるために、α9は若干影の薄い存在となってしまいました。
しかし、秒速20コマの高速連写はレフ機にはない性能で、α9でしか撮れない写真というものもあります。更に、ミラーレス機ならではのコンパクトさでありながら、積層型CMOSによるEVFの連写耐性やローリングシャッター耐性は、まさにハイエンドモデルといえる性能です。
しかし、秒速20コマの高速連写はレフ機にはない性能で、α9でしか撮れない写真というものもあります。更に、ミラーレス機ならではのコンパクトさでありながら、積層型CMOSによるEVFの連写耐性やローリングシャッター耐性は、まさにハイエンドモデルといえる性能です。
望遠連写を多用する動物撮影やスポーツ撮影を主とする撮影スタイルならば、α9は選択肢の筆頭となることでしょう。
レンズマウント | |
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レンズマウント | SONY Eマウント |
撮像素子 | |
センサーサイズ | フルサイズ(35.6×23.8mm) |
有効画素数 | 2,420万画素 |
ダスト低減機能 | ○ |
映像エンジン | BIONZ X |
画像記録 | |
記録媒体 | SDHCカード
|
スロット数 | ダブルスロット
|
記録画素数 | 35mmフルサイズ時
|
画像ファイル | JPEG/RAW |
動画 | |
4K対応 | ○ |
記録サイズ | XAVC S 4K(3840 x 2160):30p
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記録形式 | XAVC S/AVCHD規格 Ver.2.0準拠、MP4 |
ライブビュー | |
フォーカス | ファストハイブリッドAF(位相差検出方式/コントラスト検出方式) |
シャッター | |
シャッター速度 | 1/32000~30秒 |
連続撮影速度 | 最高約20.0コマ/秒 |
露出制御 | |
測光方式/測光分割数 | 1200分割ライブビュー分析測光 |
ISO感度 | 100〜51,200 |
AF | |
測距点 | 最大693点 |
ファインダー | |
視野率 | 100% |
倍率 | 約0.78倍 |
ストロボ | |
内蔵ストロボ | - |
液晶モニター | |
サイズ | 3インチ 144万ドット |
可動式 | チルト可動式液晶 |
I/F | |
インターフェース | マイクロUSB、HDMIマイクロ |
無線LAN | |
Wi-Fi機能 | ○ |
ネットワーク | |
NFC | ○ |
Bluetooth | ○ |
防塵・防滴 | |
防塵・防滴 | ○ |
手ブレ | |
手ブレ補正機構 | ○ |
GPS | |
GPS | - |
電源 | |
撮影可能枚数(ファインダー) | 480枚 |
撮影可能枚数(ライブビュー) | 650枚 |
動画撮影可能時間 | ファインダー使用時:約105分
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USB充電 | ○ |
使用電池 | リチャージャブルバッテリーパック NP-FZ100 |
サイズ・重量 | |
サイズ | 約126.9(幅) x 95.6(高さ) x 73.7(奥行き)mm |
重量 | 588g |
発売日 | |
発売日 | 2017年05月26日 |
製品情報
- カテゴリ
- ミラーレス一眼
- メーカー
- SONY
- タイプ
- プロモデル
- マウント
- SONY Eマウント