製品解説
スペック
α9 IIはプロカメラとなりうるのか
CanonやNikonの一眼レフはEOS-1D XシリーズやD1桁シリーズが最上位モデル、フラッグシップモデルとして君臨しています。報道やスポーツ撮影などで、一瞬を逃さない高速連写と、過酷な環境でも耐えうる高い信頼が特徴です。
フルサイズミラーレスモデルを主戦場とするSONYではα9シリーズがこれにあたります。シリーズといっても、2019年に発売されたα9 IIが2世代目で、まだまだ報道やスポーツ撮影ではCanonとNikonが2大勢力となっています。
元々、一眼レフカメラはプロの仕事道具であり、プロが使うカメラはアマチュアにも人気となることからこの2メーカーはフラッグシップモデルにメーカーのリソースの多くを費やしています。
一方のSONYは若干毛色が異なります。SONYのフルミラは一眼レフよりもコンパクトで手軽にハイクオリティ撮影が出来るということでα7IIIやα7RIIIなどがアマチュアを中心に人気のカメラメーカーとなりました。
そのため、CanonやNikonとは違い、SONYのカメラは実用性重視というよりもスペック重視な印象を受けます。
実際にα7IIIやα7RIIIのスペックは商業写真やモデル撮影などには最適で、アマチュアだけでなく、そういった撮影を主とするプロカメラマンにも人気です。α9 IIはメカシャッターで10コマ/秒とEOS-1D XシリーズやD1桁シリーズなどに一歩譲る性能ですが、電子シャッターなら20コマ/秒の高速連写が可能となっています。
EOS-1D X Mark IIIも電子シャッターなら20コマ/秒の撮影が可能ですが、EOS-1D X Mark IIIのライブ撮影とα9 IIを比較すると、α9 IIの方が長く連写の連続撮影が可能となっているので、連写性能は一眼カメラトップクラスと言えるでしょう。
また、瞳AFなどのAFトラッキングも良好で、動く選手を追いかけるスポーツ撮影などでは歩留まりが良くなります。一方で、ローリングシャッター現象は起きやすく、モータースポーツや電車撮影などではこの点はネックとなることもあります。
とはいえ、このコンパクトボディで20コマ/秒の連写をバッファ詰まり気にすることなく使えるというのは稀有な存在のカメラと言えるでしょう。ただし、コンパクトボディなので、物理ボタンも少なく、レイアウト的に手の大きい人や手袋の状態では使いにくいといった弱点もあります。
さらに、ミラーレス最大の弱点、電池もちを補うにはバッテリーグリップを外付けする必要があり、一体型のとEOS-1D Xシリーズなどに比べると剛性などの信頼性に不安もあります。
そういった点から、プロが求める高い実用性についてはCanonやNikonの一眼レフフラッグシップモデルに一歩譲る性能と言えますが、価格と連写性能については申し分ない性能となっています。特に価格で言うと、EOS-1D X Mark IIIやD 6がアマチュアユーザーを置き去りにしたような価格設定となっていることを考えればα9 IIはまだ手の届く位置にあるといえます。
瞳AFで追従させながら高速連写できるというのは動物撮影では大きなメリットです
ISO 12800でもノイズ感はあまりなく良好です
ローリングシャッターに注意が必要ですが、流し撮りもお手の物
α7シリーズとは違い、低解像度なので暗がりでの撮影にメリットが出てきます
もちろん動きモノだけでなく、風景などでも十分な描写力があります
α9からの進化点は
スポーツ撮影などに求められる連写性能を追求するα9シリーズですが、その第2世代はどの様に進化したのかを具体的に見ていきましょう。
まず外観から見てみると、ボタン配置などはα9もII型もほぼ同じですが、ボディサイズはII型はα7RIVに近く、グリップ感などが改善されています。α9がフラッグシップ相当の機種であるにも関わらずバッテリーグリップを別体としてる点は、ボディデザインを他機種と同じにして、開発リソースを内部性能に集中させるという狙いもありそうです。
インターフェイス面では、USB Type-Cに対応、有線LANの高速化、メモリはSDXC UHS-IIに対応することで時代に合わせた最適化がされています。電子ビューファインダー性能は、α9同様に電子シャッター撮影時はブラックアウトフリーとなっていて、高速連写でも見えやすいEVFとなっています。
α9 IIになってメカシャッターの連写が5コマ/秒から10コマ/秒と性能アップしましたが、ブラックアウトフリーを考えると電子シャッターがメインの連写機と考えた方が良さそうです。
α9からの変更点としてはあとは、手ブレ補正が5段から5.5段に進化したなどがありますが、カタログスペック的には全体的に注目するような数字はないことで、「足踏み」というレビューも見られます。
しかし、AF-ONボタンが大きくなったり、グリップが握りやすくなるなど、使用感のブラッシュアップに加え、ファームアップで続々と操作感の向上が図られるなど、より実用面で改良されています。
α1との住み分けは
SONYは2021年03月にα1という新たなフラッグシップモデルを発売しました。奇しくもコロナ禍によって東京オリンピックが延期されたことで、α1は夏季オリンピックイヤーに使われる可能性もあるフラッグシップモデルとなりました。
α1とα9 IIを簡単に比べると、α9 IIの連写性能をさらに引き上げ、映像エンジンなどの強化によって解像度を倍にした機種がα1となっています。他にも細部の違いはあるものの、これらの機種は、解像度の違いで使い分けられるカメラとなります。
高解像度の高速連写は魅力的ではありますが、高解像度のデジタル写真は扱いが難しいという側面もあります。移動通信システムとして5Gがもてやはされていますが、まだまだ4Gが通信のメインです。
概算ですが、α9 IIの様な2400万画素でRAWだと30MB、JPEGだと6MB程度、α1の様な5000万画素だとRAWで60MB、JPEGで15MG程度の画像になります。速報性が求められる報道の現場などでは送信に時間のかかる高解像度は不要なのでα9IIの方が適していると言えそうです。
一方でスポーツ撮影などでは、速報性が求められる場合もあれば、決定的瞬間を高解像度で撮影することが求められることもあります。東京オリンピックではα1とα9 IIがケース・バイ・ケースで使い分けられる様子が見られるかもしれません。
アマチュアこそα 9II! FE 50mm F1.8と組み合わせても面白い写真が
EOS-1D X Mark IIIは買いますか?新品価格80万ですよ。
プロカメラマンであれば、どんな環境でもガシガシ使えるEOS-1D Xの様なカメラは必須ですが、アマチュアで80万で買ったカメラを壊すかもしれない環境でガシガシ使う人はどれくらいいるでしょう。
α9 IIは新品価格50万円程度で、なんとか趣味の出費の範囲内とも言えそうです。お財布事情は人それぞれですが、一般的な金銭感覚からいくと、アマチュアがギリギリ手が届くのはα9 IIではないでしょうか。
α9 IIの魅力はやはり電子シャッターで秒間20コマという連写性能。一瞬を切り取る性能は一眼カメラ最高水準でEOS-1D X Mark IIIをも凌ぎます。連写性能を活かして、動物撮影やスポーツ撮影などに積極的に活用したいカメラです。
そんなα9 IIにはFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSSのようなGマスターの望遠レンズも適していますが、FE 50mm F1.8の様な、いわゆる撒き餌レンズでも素敵な写真となります。FE 50mm F1.8の様な明るいレンズではシャッタースピードの変更幅が広いので、α9 IIの連写性能と合わせて決定的な瞬間を捉えることができます。
ユーザーレビュー
■ ポジティブレビュー
- プロの使用に合わせた渋いブラッシュアップに好感
- AFエリアの広さ、F追従性能はさすがSONYのミラーレス
- 野鳥撮影では1日1バッテリーで撮影できた
- 室内の暗い撮影では低画素に抑えたことがメリットになる
- α7RIVと使い分けたくなるカメラ
実用的な進化が信頼感へとつながる高評価がみられました。また、AF追従ではミラーレスのメリットも多分にありそうです。
■ ネガティブレビュー
- α9からの進化が感じられず残念
- 3600万などの高画素機にしてほしかった
- α9の価格が下がりそうなので、そっちを買ったほうが良さそう
- コンパクト過ぎて熱暴走が心配
- 相変わらず操作のレスポンスが悪い
噂が先行してしまって、α9 IIのスペックには肩透かしとなったユーザーの声が多くみられました。
まとめ
ミラーレスの浸透は、スポーツ撮影や報道撮影ではまだまだ緩やかといえます。それはやはり、信頼性や電池もちなどクリアする課題がまだ多いからということもあります。
α9 IIもCanon、Nikonのフラッグシップ一眼レフシェアを崩すカメラとまではなりませんでした。しかし、プロの現場ではまだ一眼レフが必要だとしても、アマチュアの現場では違います。
連写性能でいえばCanon、Nikonのフラッグシップ一眼レフを凌ぐものがあり、価格でも大きくメリットがあるα9 IIは、「とにかく連写で一瞬を逃したくない」というアマチュアカメラマンの声にしっかりと応えてくれる性能のカメラです。
レンズマウント | |
---|---|
レンズマウント | SONY Eマウント |
撮像素子 | |
センサーサイズ | フルサイズ(35.6×23.8mm) |
有効画素数 | 2,420万画素 |
ダスト低減機能 | ○ |
映像エンジン | BIONZ X |
画像記録 | |
記録媒体 | SDカード
|
スロット数 | ダブルスロット
|
記録画素数 | 35mmフルサイズ時
|
画像ファイル | JPEG/RAW |
動画 | |
4K対応 | ○ |
記録サイズ | XAVC S 4K(3840 x 2160):30p
|
記録形式 | XAVC S/AVCHD規格 Ver.2.0準拠 |
ライブビュー | |
フォーカス | ファストハイブリッドAF(位相差検出方式/コントラスト検出方式) |
シャッター | |
シャッター速度 | 1/32000~30秒 |
連続撮影速度 | 最高約20.0コマ/秒 |
露出制御 | |
測光方式/測光分割数 | 1200分割ライブビュー分析測光 |
ISO感度 | 100〜51,200 |
AF | |
測距点 | 最大693点 |
ファインダー | |
視野率 | 100% |
倍率 | 約0.78倍 |
ストロボ | |
内蔵ストロボ | - |
液晶モニター | |
サイズ | 3インチ 144万ドット |
可動式 | チルト可動式液晶 |
I/F | |
インターフェース | マイクロUSB、USB Type-C、HDMIマイクロ |
無線LAN | |
Wi-Fi機能 | ○ |
ネットワーク | |
NFC | ○ |
Bluetooth | ○ |
防塵・防滴 | |
防塵・防滴 | ○ |
手ブレ | |
手ブレ補正機構 | ○ |
GPS | |
GPS | - |
電源 | |
撮影可能枚数(ファインダー) | 500枚 |
撮影可能枚数(ライブビュー) | 690枚 |
動画撮影可能時間 | ファインダー使用時:約110分
|
USB充電 | ○ |
使用電池 | リチャージャブルバッテリーパック NP-FZ100 |
サイズ・重量 | |
サイズ | 約128.9(幅) x 96.4(高さ) x 77.5(奥行き)mm |
重量 | 593g |
発売日 | |
発売日 | 2019年11月01日 |
価格情報2022.06.30 更新
製品情報
- カテゴリ
- ミラーレス一眼
- メーカー
- SONY
- タイプ
- プロモデル
- マウント
- SONY Eマウント
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価格 | 新品:498,000円〜 中古:319,000円〜 | 新品:292,120円〜 中古:177,770円〜 | 新品:792,000円〜 中古:680,727円〜 |
センサーサイズ | フルサイズ(35.6×23.8mm) | フルサイズ(35.6×23.8mm) | フルサイズ(35.9×24mm) |
有効画素数 | 2,420万画素 | 2,420万画素 | 5,010万画素 |
連続撮影速度 | 最高約20.0コマ/秒 | 最高約20.0コマ/秒 | 最高約30.0コマ/秒 |
4K対応 | ○ | ○ | ○ |
手ブレ補正 | ○ | ○ | ○ |
撮影可能枚数 | 500枚 | 480枚 | 430枚 |
重量 | 593g | 588g | 652g |
発売年月 | 2019年11月 | 2017年05月 | 2021年03月 |
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センサーサイズ | フルサイズ(35.6×23.8mm) | FUJIFILM G Format(43.8mm×32.9mm) | FUJIFILM G Format(43.8mm×32.9mm) | FUJIFILM G Format(43.8mm×32.9mm) | マイクロフォーサーズ(17.4 mm × 13.0 mm) | FUJIFILM G Format(43.8mm×32.9mm) | FUJIFILM G Format(43.8mm×32.9mm) |
有効画素数 | 2,420万画素 | 5,140万画素 | 5,140万画素 | 5,140万画素 | 2,037万画素 | 10,200万画素 | 10,200万画素 |
連続撮影速度 | 最高約20.0コマ/秒 | 最高約3.0コマ/秒 | 最高約3.0コマ/秒 | 最高約3.0コマ/秒 | 最高約60.0コマ/秒 | 最高約5.0コマ/秒 | 最高約5.0コマ/秒 |
4K対応 | ○ | - | - | - | ○ | ○ | ○ |
手ブレ補正 | ○ | - | ○ | - | ○ | ○ | ○ |
撮影可能枚数 | 500枚 | 400枚 | 445枚 | 400枚 | 870枚 | 430枚 | 740枚 |
重量 | 593g | 690g | 819g | 740g | 849g | 821g | 1,155g |
発売年月 | 2019年11月 | 2018年11月 | 2021年09月 | 2017年02月 | 2019年02月 | 2021年02月 | 2019年06月 |