製品解説
スペック情報
プロの信頼を得たα7R III
前述の通り、SONYは2006年コニカミノルタの引き継ぐ形でデジタル一眼市場に参入しました。SONY初の一眼レフ発売当初こそ話題になりましたが、その後はさっぱり。当時の一眼レフ市場はCanonとNikonの2社で8割を超えるシェアがあり、SONYの一眼レフの性能うんぬんではなく、あえてレンズマウントを変えてまでSONYの一眼レフを買おうというユーザーはほとんどいませんでした。
「販売店にパンフレットさえ置かせてもらえなかった」と、当時のSONY一眼レフ担当営業者は語っています。
御存知の通り、一眼カメラはレンズマウントにメーカー間の互換性がないので、CanonのEFマウントレンズを持っていれば、よっぽどの理由がない限り、次に買うカメラもCanonになります。わざわざ手持ちのレンズを売って他社のカメラに乗り換えるというユーザーはほとんどいません。特にプロカメラマンは多くのレンズを持っているので、アマチュアカメラマンよりもこの傾向は強くなります。
α7R IIIはそんなプロやハイアマチュアカメラマン向けのカメラですが、多くのカメラマンにSONY一眼へ乗り換えさせることに成功しました。SONYは2強にはもはや歯が立たない一眼レフのAマウントではなく、ミラーレス用のEマウントを主力とすることでレンズマウントという壁を突破しました。
レフ機よりもフランジバックが短いミラーレスでは、マウントアダプターを介することでレフ機のレンズを使うことができます。もちろんSONYは純正でCanonやNikonのレンズが使えるマウントアダプターを発売していませんが、SONYミラーレスで採用されているEマウントは設計情報が公開されているので、他社レンズメーカーがマウント解析などをせずに開発できるので、すぐに社外マウントアダプターが発売されました。
通常、レンズマウントの情報は自社のレンズシェアを守るために公開されることはありませんが、SONYはEマウントを発表してすぐ、レンズラインアップが少ないことを逆手に取り、マウント情報を公開することで社外レンズでEマウントレンズラインアップを補完しつつ、マウントアダプターで他社レフ機レンズも自在に使えるようになりました。
SONYのフルサイズミラーレスに乗り換えた多くのカメラマンがCanonやNikonの手持ちのレンズ資産をマウントアダプターでα7R IIIに装着して使っています。
万能こそ正義
手持ちのレンズが使えるからというだけでα7RIIIにプロカメラマンが乗り換えるわけではありません。α7RIIIが人気となったのは「万能」だからです。今までのレフ機ラインアップでは、スポーツ撮影、野生動物撮影、報道写真などで高速連写が必要な場合はCanonはEOS-1D X Mark II、NikonならD5を選びます。
風景写真やポスター写真などで高画素写真が必要な場合はCanonなら5Dシリーズ、NikonならD850を選びます。α7RIIIは約4240万画素という高画素かつ、最高約10コマ/秒の連写がAF・AE追従で使うことができます。
すでにα7IIIで像面位相差による高速AF、瞳AF、ボディ内手ブレ補正とかなりの万能性を示していました。しかし、α7IIIは2420万画素で既存のレフ機を上回るものではなく、はじめてデジタル一眼を購入する人にとっては魅力的な選択肢でも、デジタル一眼を買い換えるユーザーには必然性を感じない選択肢でした。
α7RIIIは4240万画素という多くのレフ機を上回る高画素機となったことで、それを求めるユーザーに必要性を生み出しました。まさに万能カメラです。
もちろん連写はEOS-1D X Mark IIの14コマ/秒には及ばず、画素数はEOS 5Dsの5300万画素には届いていませんが、この2台を買い揃える価格でα7RIIIは4台買えるというコスパの良さです。高速連写が最優先、高画素が最優先というカメラマンであれば先程あげたようなレフ機が必要ですが、連写速度も画素数も高いレベルでバランスをとりたいと考えるカメラマンであればα7RIIIを選ぶというのは納得です。
画質は安心のSONY品質
いくら万能デジタル一眼といっても、画質に問題があればプロは食いつきません。もちろんそこも問題なしです。デジタル一眼レフでは苦戦したSONYですが、CMOSセンサーのシェアは2018年は40%を超えるなどダントツのシェアとなっています。
CMOSセンサーはデジタル一眼以外にモバイル端末、パソコン、セキュリティ、医療などなど様々な分野で使われていますが、SONYは高いシリコンウェーハ加工技術で高い信頼を得ています。その加工技術によって生み出された裏面照射型CMOSセンサーは従来のCMOSよりもセンサーが光を受けることが出来る面積を広くすることができます。
α7RIIIにも裏面照射型CMOSセンサーが搭載されており、SONYのCMOS技術はローパスフィルターレスにも応用されています。ローパスフィルターはデジタルカメラの宿命とも言えるモアレや偽食を軽減させる効果があります。
現代の受光センサーは色を認識することができないので4つのセンサーで緑と青と赤の光量を測定して合成することで1つの色を作ります。しかし、合成するので輪郭部分など大きく色が変わる部分では本来と違う色が出てしまうので、ローパスフィルターで若干ボカしてあげる必要があります。SONYは独自のCMOS技術によってα7RIIIではローパスフィルターレス仕様でも偽食やモアレを抑えることを可能としており、高解像度を生かしてエッジの効いたシャープな写真を描くことができます。
SONYは一眼カメラでは新参者の様に見る目もありますが、CMOS技術においては、センサーを自社開発していないNikonにはもちろん、自社製センサーを開発するCanonに対しても勝るとも劣らないものがあります。
おすすめレンズSIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM
フルサイズで動きモノを撮影しようと思うと、カメラ本体だけで50万もするフラッグシップ機を購入しなければなりませんでした。さらにフルサイズはAPS-Cよりも画角が広いので同じ焦点距離でも引き寄せ効果が弱いので、より長い焦点距離のレンズが必要となります。
α7RIIIは決して安いカメラではなく、むしろデジタル一眼の中では高級なカメラですが他社のフラッグシップ機に比べればかなり予算に余裕をもって購入できます。さらにSIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSMはSONY純正の同じ様な焦点距離のFE 200-600mm F5.6-6.3 G OSS SEL200600Gの半額程度で購入可能です。
手頃な超望遠レンズということで、動体撮影を趣味とする人ならAPS-Cレフ機などと組み合わせて使ったことがある人も多いと思います。レフ機のレンズがマウントアダプターで装着出来るということもミラーレスのメリットです。
α7RIIIを手にしたら超望遠の高速連写でスポーツや野鳥撮影に挑戦してみても良いでしょう。
ネット上のユーザーレビュー
■ポジティブレビュー
- 細部までしっかり描くのはさすが高画素機といった感じ
- カスタムボタンが多いので操作性は自由自在
- 先代に比べてバッテリーはようやく使えるレベルまで向上
- オールドレンズとの組み合わせにはサイズ感もボディ内手ブレ補正も最適
- ミラーレスでもAF速度は不安なし
レビューを書いた人の多くが他社マウントからの乗り換えで、α7RIIIで多くのEマウントユーザーが生まれたことが伺えます。
■ネガティブレビュー
- 購入時点でピントずれな上に修理代を請求された
- レンズがでかいので結局はコンパクトではない
- 操作時に古いパソコンみたいにいちいちラグがあって待たされる
- 高性能だが出力される写真に深みがない
- レンズ交換ボタンの場所が悪い
高性能なα7RIIIですが、やはりカメラとしての完成度をあげるにはSONYにはまだ時間が必要なようです。
まとめ
α7RIIIの発売後、Nikon ZシリーズやCanon EOS Rシリーズと2大メーカーがフルサイズミラーレスに参入してきましたが、瞳AFやボディ内手ブレ補正、AF/AE追従での連写などいずれもα7RIIIの万能性には届かず、SONYにフルサイズミラーレスとして一日の長があることを示すこととなりました。
既にα7RIVが発表されていますが、α7RIIIは発売から2年でお払い箱になるようなカメラではなく、Canon EOS-1DxやNikon D5の様に4年、それ以上と長く使っても時代遅れを感じさせないような機能の充実っぷりがあります。後継機の発売は価格下落でコスパアップにもつながるので、α7RIIIでフルサイズミラーレスに移行する好機となっています。
既にα7RIVが発表されていますが、α7RIIIは発売から2年でお払い箱になるようなカメラではなく、Canon EOS-1DxやNikon D5の様に4年、それ以上と長く使っても時代遅れを感じさせないような機能の充実っぷりがあります。後継機の発売は価格下落でコスパアップにもつながるので、α7RIIIでフルサイズミラーレスに移行する好機となっています。
レンズマウント | |
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レンズマウント | SONY Eマウント |
撮像素子 | |
センサーサイズ | フルサイズ(35.9×24.0mm) |
有効画素数 | 4,240万画素 |
ダスト低減機能 | ○ |
映像エンジン | BIONZ X |
画像記録 | |
記録媒体 | SDカード
|
スロット数 | ダブルスロット
|
記録画素数 | 35mmフルサイズ時
|
画像ファイル | JPEG/RAW |
動画 | |
4K対応 | ○ |
記録サイズ | XAVC S 4K(3840 x 2160):30p
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記録形式 | XAVC S/AVCHD規格 Ver.2.0準拠 |
ライブビュー | |
フォーカス | ファストハイブリッドAF(位相差検出方式/コントラスト検出方式) |
シャッター | |
シャッター速度 | 1/8000~30秒 |
連続撮影速度 | 最高約10.0コマ/秒 |
露出制御 | |
測光方式/測光分割数 | 1200分割ライブビュー分析測光 |
ISO感度 | 100〜32,000 |
AF | |
測距点 | 最大425点 |
ファインダー | |
視野率 | 100% |
倍率 | 約0.78倍 |
ストロボ | |
内蔵ストロボ | - |
液晶モニター | |
サイズ | 3インチ 144万ドット |
可動式 | チルト可動式液晶 |
I/F | |
インターフェース | マイクロUSB、USB Type-C、HDMIマイクロ |
無線LAN | |
Wi-Fi機能 | ○ |
ネットワーク | |
NFC | ○ |
Bluetooth | ○ |
防塵・防滴 | |
防塵・防滴 | ○ |
手ブレ | |
手ブレ補正機構 | ○ |
GPS | |
GPS | - |
電源 | |
撮影可能枚数(ファインダー) | 530 |
撮影可能枚数(ライブビュー) | 650 |
動画撮影可能時間 | ファインダー使用時:約100分
|
USB充電 | ○ |
使用電池 | リチャージャブルバッテリーパック NP-FZ100 |
サイズ・重量 | |
サイズ | 126.9(幅) x 95.6(高さ) x 73.7(奥行き)mm |
重量 | 572g |
発売日 | |
発売日 | 2017年11月25日 |
製品情報
- カテゴリ
- ミラーレス一眼
- メーカー
- SONY
- タイプ
- ハイアマチュアモデル
- マウント
- SONY Eマウント