Voigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8 [ソニーE用]

球面収差コントロールが面白い、新しくもクラシカルさを感じさせるレンズ

Voigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8はフォクトレンダーのブランド使用権を持つコシナが2025年6月に発売したレンズ。マウントはSONY Eマウント対応で、AF作動はしないMFレンズですが、電子接点を使った通信には対応しているので、社外レンズですがボディ内手ぶれ補正を活用したり、Exif情報を写真に記録することができます。

Voigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8はVMマウント用に発売されたHELIAR classic 75mm F1.8の光学系を使って開発されたレンズ。レンズの外観は他のVoigtlanderと同様にクラシカルな印象。絞りリングとフォーカスリングにはローレット加工が施されていて、目盛の刻印も古きフォクトレンダーを想起させます。

外観のアクセントとなっているシルバーのリングは球面収差コントロールリング。HELIAR classic 75mm F1.8のレンズ群などの基本構成はそのままで球面収差をコントロールできる仕様となっています。

球面収差は解像力を下げるため、ほとんどのレンズでしっかりと補正するようになっています。しかし、Voigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8は球面収差の補正をコントロールして、意図的に写真に取り入れることができます。調整幅はアンダーコレクション(補正不足)からノーマル、オーバーコレクション(補正過剰)の幅で調整可能。

アンダーコレクションでは球面収差が大きく出るので全体がソフトフォーカスのような柔らかな描写となります。ノーマルでは最も解像力が高く、PORTRAIT HELIARの描写力で被写体を鮮明に描き出します。オーバーコレクションではボケが輪郭ボケとなり、オールドレンズのようなボケ感を楽しめます。

1本の単焦点レンズで様々な表情を見せてくれるレンズがVoigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8です。

純正レンズとは明らかに違う性能が魅力

Voigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8は元々、VMマウント用のレンズをベースにEマウントに対応させたレンズですが、SONY Eマウントには純正レンズとしてFE 85mm F1.8、FE 85mm F1.4 GM IIといった焦点距離が近い単焦点レンズがあります。

Voigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8はVMマウント用のレンズをベースとしていることでポートレートでよく使われる85mmではなく、75mmというやや画角が広い焦点距離を採用しています。これによって、純正の85mmより背景をやや広くとった、撮影場所の雰囲気も伝わるポートレート撮影ができます。

焦点距離にも違いがありますが、光学性能にも大きな違いがあります。純正レンズはピント面のシャープな描写と柔らかく広がる自然なボケ味が特徴。一方で、Voigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8は、3群6枚というシンプルなレンズ構成故に、解像力は高いものの全体の描写はクラシカル。

被写体をまるで映画の主人公のように温かみのある光で描きます。映画のスクリーンに投影された画を見るような、特徴的な描写は球面収差コントロールによってその強弱を調節できることも特徴。被写体の肌感などを忠実に再現するのであれば純正レンズ、温かみのある空気感を重視するのであればVoigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8といった選択になります。

また、描写以外にも特徴的なポイントがあります。Voigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8はAF駆動を持たないMFレンズ。 フォーカシングは常にフォーカスリングを動かす必要がありますが、コシナはこのフォーカスリングの動きのフィーリングにこだわって設計をしています。硬すぎず、柔らかすぎず、指先のフィーリングが正確に反映されるフォーカスリングの動きは、普段MF操作になれていない人でも快適なMF操作が可能です。リングの操作感にもコシナのこだわりが詰まっています。

ユーザーレビュー

■ ポジティブレビュー

• 収差をコントロールするという新たな挑戦が面白い
• 純正レンズにはない柔らかな描写がお気に入り
• レンズの操作性は高く、どのリングも手に馴染む
• 収差コントロールでボケ味が変わるので撮影の幅が広がる
• オールドレンズの様なデザインが所有欲を満たしてくれる

収差コントロールが撮影の幅を広げてくれて、新たな楽しみを生み出してくれます。

■ ネガティブレビュー

• 収差コントロールの扱いが難しい
• 収差コントロールでは周辺減光も同時に発生するので注意
• MFレンズとしてはちょっと重い
• 75mmはやはり慣れないので85mmの方が使いやすい
• 収差調整をしたあとはピントと露出の再調整が必要

注目の収差コントロールですが調整にはクセのある部分があるので慣れも必要なようです。

まとめ

歴史あるフォクトレンダーの名を継ぎ、3群6枚という非常にシンプルなレンズ構成で魅力的な画を描き出すVoigtlander PORTRAIT HELIAR 75mm F1.8。

コシナはそこに球面収差コントロールという新たなギミックを加えて、最新のレンズにはない、収差を活かした描写という新しい画作りを可能としています。

まるでオールドレンズを思わせる年輪状に広がるボケや、柔らかな描写。その強弱をコントロールすることで、単にオールドレンズを使う撮影とは違う、新たな撮影の面白さを生み出してくれるレンズです。