PENTAX 17

フィルムカメラプロジェクトの最初の1台

RICOHは2022年にPENTAXブランドでのフィルムカメラの開発検討を行う「フィルムカメラプロジェクト」の開始を発表しました。フィルムカメラプロジェクトの発表は、新しいフィルムカメラ開発の発表であると同時に、失われつつあるフィルムカメラのノウハウを多くのカメラファンと共有、継承しようという思いで発表されました。

しかし、「なぜこのタイミングでフィルムカメラ？」と思う方もいるでしょう。今、カメラ業界はミラーレスカメラを中心に動いています。ミラーレスカメラにいかに最新技術を盛り込み、一眼レフでは出来なかった、ユーザーを惹きつけるカメラを発売し、自社のユーザーを増やしていくかという競争が激しく行われています。

もちろん、その流れが本流であることには間違いないのですが、フィルムカメラへの憧れをもつカメラファン層も一定数存在し続けており、しかも、近年では若年層でも広がりを見せつつあるのです。

単に高解像な写真であればスマートフォンでも撮影できるようになり、ミラーレスカメラは電子シャッターによる高速連写で、一眼レフではプロ機でしか撮れなかったような瞬間を切り取ることも比較的容易となりました。そんな中で、デジタル加工など一切入る余地がなく、ただ、その場の光をフィルムに残す、フィルムカメラの独特な世界観に興味を惹かれる根強いファンがいます。

しかし、市場には新品のフィルムカメラは少なく、フィルム撮影をはじめるには中古カメラを選択するしかないというユーザーもいます。中古カメラは修理をしてくれるメーカーも少なく、メンテナンスを自分で行う必要があり、ハードルが高くなります。

RICOHはそんなファンの声に応えるためにフィルムカメラプロジェクトを通じて、PENTAX 17を生み出しました。

ハーフサイズフォーマットのこだわりの詰まったカメラ

PENTAX 17はハーフサイズフォーマットのフィルムカメラです。ハーフサイズフォーマットとは、35mm判フィルムの１コマを分割して撮影するもので、32枚撮りのフィルムなら、倍の72枚撮影できます。

「せっかくならフルサイズが良い」という声もありそうですが、ハーフサイズは、近年手に入りにくく高価になりつつあるフィルムを節約できるというメリットがあります。多くの世代にフィルム撮影を楽しんでもらうためにランニングコストの削減ということもPENTAX 17のコンセプトに含まれてます。

ハーフサイズフォーマットを選択したことで、PENTAX 17は通常の横位置で撮影した場合、縦長の写真となります。一眼レフやミラーレス一眼を普段使っている人にとっては、この点は違和感を感じる人が多いかと思われますが、スマートフォンで撮影している人にとっては縦長写真というのは寧ろ自然に受け入れられるかもしれません。

その影響で、ファインダーが縦長となっていますが、このファインダーがPENTAX 17のデザインの特徴とも言えます。PENTAX 17のデザインは全体的にクラシカルなヘリテージデザインとなっていますが、その軍艦部の中心に縦長のファインダーが設置されていることが、一眼レフのペンタプリズムにも通じるような親近感もあり、カメラファンの心を掴みます。

軍艦部はPENTAXのカメラらしい、ダイヤルなど必要な機能がギュッとつまっており機能美があります。デザインにはPENTAXも非常に拘っていて、外装に使われるネジはマイナスネジを使うという徹底ぶり。近年の工業製品は電動ドリルで締め付けやすいように噛み合わせの良いプラスネジが使われるのですが、手組を象徴するようなマイナスネジを使うことで、ヘリテージデザインとの調和がなされています。

またこのマイナスネジから思い起こされる「手組み」「マニュアル」という部分も17のコンセプトとなっています。フィルム巻き上げや巻き戻しもあえてマニュアル操作とすることで、「カメラを操作する楽しみ」を体感できます。

ゾーンフォーカスを楽しむ

PENTAX 17は最新のデジカメの様にシャッターを押すだけでピントがバッチリあった写真が撮れるカメラではありません。

まず撮影をはじめるためには、フィルムをセットし、被写体との距離に合わせてゾーンフォーカスを設定し、ピントを合わせてシャッターを押し、それを現像してはじめて写真を確認することができます。

ファインダーはアルバダ式ブライトフレームファインダーと呼ばれるもので、ファインダー内に構図を決めるための視野枠が表示されてはいますが、必ずしもそのままの視野で写真が収められるわけでなく、思い通りの構図とするためにはファインダーの癖を掴む必要があります。

ピント合わせは、AUTO設定のときはパンフォーカス、いわゆる画角全体にフォーカスが行くように被写界深度が設定されますが、それ以外のモードではゾーンフォーカスでピントを合わせる必要があります。ゾーンフォーカスでは、被写体との距離を目安としてフォーカスダイヤルを回し設定することで、ピントを合わせます。

ハーフサイズフォーマットなので、比較的、被写界深度は深いのですが、現像されるまでピントが合っているか確認することは出来ないので、ここでもカメラの癖を掴む必要があります。最新のデジカメに求められる失敗写真を少なくする、いわゆる「歩留まりの良さ」とは真逆とも言える、なんとも手間のかかるカメラがPENTAX 17です。

しかし、そんな「手間」を「楽しみ」と思えるカメラファンにはなんとも魅力的なカメラがPENTAX 17です。

愛用者のコメント

ポケットに入るくらいのコンパクトなので、どこにでも持っていけちゃうのが良いところ。ハーフサイズなので1ロールで倍シャッターを切ることができ、まさに日常遣いにぴったりな一台だなと思います。気兼ねなく思いっきりシャッターを切れます。

オート機能もついているので、何にも考えずにカメラ任せで気軽に撮ることができる点も最高です。こんなにコンパクトで簡単なのに写りはシャープで非常に良いカメラだと思います！

日々の生活の記録や旅の記録におすすめの一台です。

ユーザーレビュー

■ ポジティブレビュー

• この時代に、こだわりの詰まったフィルムカメラを発売してくれることが嬉しい
• これぞ職人が作ったカメラと言った感じ
• 25cmで接写するときはストラップで距離を測ることができる
• 適度な粒状感が、デジタルではなく流石フィルムと思わせてくれる
• 片手持ちできるサイズ感

やはりこの時代に新しいフィルムカメラが登場するということに多くの称賛の声があがっていました。

■ ネガティブレビュー

• フィルムの扱いに慣れていないせいか、フィルムがひっかかったことがある
• 普通の一眼に慣れていると、ハーフサイズは縦なので慣れが必要
• ゾーンフォーカスは練習が必要
• AUTOではパンフォーカス撮影しかできないので残念
• ダウンロードした説明書を熟読しないと撮影ミスにつながる

フィルムカメラに慣れていないと思わぬ失敗などが出てしまうことはあるようです。

まとめ

フォーカスはほぼカメラ任せで、高速連写などを駆使し、繊細な操作テクニックなどを必要とせずにただ構図作りに集中できるカメラが昨今のミラーレス一眼。

そんなミラーレス一眼全盛期の中、AFもなく、連写も出来ず、現像するまで撮影結果のわからないフィルムカメラの新発売。しかも、PENTAXが退職した職人の意見等を取り入れてまでこだわりをもって作ったフィルムカメラ、PENTAX17。

過去のフィルムカメラユーザーだけでなく、あらたにアナログ的な撮影の魅力に惹かれた若きユーザーも虜にする、カメラを操る魅力にあふれたフィルムカメラがPENTAX17です。