Canon RF70-200mm F2.8 L IS USM Z

白と黒が特徴づける「Z」の存在意義

Canonの望遠Lレンズといえば、「白レンズ」。これは一眼レフ時代からの変わらぬ伝統ともいえるもので、当然、ミラーレスマウントのRFレンズにも引き継がれてきました。なぜ白いのかというと、屋外で使用するときの遮熱効果を狙ったもので、白い遮熱塗装を施すことで炎天下でもレンズが熱を持ちにくくするという効果があるためです。

2024年11月発売の新レンズ、RF70-200mm F2.8 L IS USM Zも望遠レンズということで当然白レンズなのですが、黒バージョンも存在するという珍しい仕様になっています。RF70-200mm F2.8 L IS USM Zが２色展開となったことは大きく2つ理由があります。

1つは、鏡筒がRF24-105mm F2.8 L IS USM Zと共通であることが大きな理由となっています。動画撮影時、リグなどに固定した際、レンズ交換で重量バランスが変更されないようにRF24-105mmと新しいRF70-200mmは共通外装、操作系でデザインされています。RF24-105mm F2.8は標準ズームレンズということで黒い外装なので、RF70-200mm F2.8も共通部品を使って黒いバージョンを用意することはそこまでコストが掛かりません。

もう1つの理由は実用的な理由で、屋外撮影が多いカメラマンにとっては、先述同様、遮熱という意味で白が必要。逆に屋内で照明を使う撮影が多い場合や動画機材を組んだ場合は目立ちにくく反射が少ない黒が好まれるという理由です。

こういった実用的な理由でRF70-200mm F2.8 L IS USM Zは白黒両バージョンが用意されました。

そして、その理由から見てわかる通り、RF70-200mm F2.8 L IS USM Zはより動画撮影を意識した作りとなっています。ZはRF24-105mm F2.8 L IS USM Z同様にパワーズーム アダプターに対応していることを示唆しており、PZ-E2やPZ-E2Bを装着して電動ズームによる滑らかなズーミングを実現できます。

その他にもRF24-105mmと共通の鏡筒であることからわかる通り、インナーズームを採用していて、ズーミング時の重量バランスが変わらないように設計されています。共通の鏡筒という点ではアイリスリング、絞りリングが搭載されていることも動画向きと言えます。

近年のミラーレス一眼は動画撮影にも重点が置かれていることや、CanonはEOS R5 Cの様にミラーレスから派生したシネカメラを発売したりと、RFマウントのシネカメラを積極的に発売しています。

そういった理由から動画を強く意識したレンズとしてRF70-200mm F2.8 L IS USM Zが発売されました。

Zと非Zが同時に存在する意義とは

Canonは2019年11月にRF70-200mm F2.8 L IS USMを発売しています。RF70-200mm F2.8 L IS USM Zは70-200mm F2.8の後継、II型としてではなく「Z」型ということで、同時に2種類の70-200mm F2.8がRFマウントに存在することになりました。

非ZのRF70-200mm F2.8 L IS USMはアウターズームを採用したことで、全長がコンパクトで軽量、価格もZより10万円ほど安いというメリットがあります。一方、RF70-200mm F2.8 L IS USM Zは２色展開やインナーズームで重量バランスが変わらないということや、さらにエクステンダーが使えるというメリットもあります。

同じRF70-200mm F2.8ですが、すでに見た目から大きく違い、片やコンパクトで携帯性重視、片や固定時のバランス重視と個性が大きく違うので使用目的に合わせて選択するレンズと言えます。

光学性能でいうと、もちろん新発売のRF70-200mm F2.8 L IS USM Zが高い光学性能を持っています。スーパーUDレンズが追加されていて、絞り羽根も9枚から11枚に増えており、性能面もブラッシュアップされていますが、Zと非Zを比較するうえで、決定的といえるほどの違いはありません。

Zと非Zは焦点域と開放F値こそ同じですが、使用目的が異なるレンズと認識すると良さそうです。

ユーザーレビュー

■ ポジティブレビュー

• やはりインナーズームは防水性など安心感がある
• ズームの回転角もちょうどよく扱い扱いやすい
• エクステンダーが使えるF2.8はポイント高い
• Lというと白だけど、黒もかっこいい
• 他社並の軽さで文句なしのレンズ

近年は繰り出しレンズが多いので、インナーズームが好評となっています。

■ ネガティブレビュー

• 黒だと、105mmと見分けるマーカーが必要になりそう
• 最小絞りがF22までしかないのが残念
• 絞りリングは不要なので静止画版で価格を抑えたレンズがほしい
• この価格がLレンズのスタンダードだとアマチュアには購入し辛い
• ユーザーを絞った挑戦的なレンズといった印象

近年の高騰し続けるレンズ価格はレンズ選びの大きなネガティブ要素となっています。

まとめ

インナーズームを採用し、堅牢で安心感のある鏡筒というLレンズらしさ。RF24-105mm F2.8 L IS USM Zと同一デザインの鏡筒を採用し、望遠Lレンズでも黒い鏡筒をラインナップさせるというユニークさ。

RF70-200mm F2.8 L IS USM Zは近年の動画撮影のニーズに応えるため既出のレンズとは似て非なるアプローチをとりました。

万能レンズは器用貧乏となりがちですが、RF70-200mm F2.8 L IS USM Zは「動画」という1つのニーズに集中して設計されることで、ユーザーのニーズにガチッとハマる、Specialなレンズとなっています。