Canon RF45mm F1.2 STM

F1.2の世界をより身近にしてくれるレンズ

RF45mm F1.2 STMは、EOS R6 Mark IIIと同時発表されたレンズです。開放F1.2という圧倒的な明るさを持ちながらLレンズではなく、価格は10万円を切る設定。一眼レフ時代と比べてレンズ価格の高騰が続く中で、手を伸ばしやすい高性能レンズが純正から登場したことは多くのユーザーにとって朗報と言えます。

まず注目したいのは焦点距離。45mmという画角は、50mmよりわずかに広く、35mmよりも少しタイト。標準域の中でも絶妙な立ち位置にあり、ポートレートでは自然なパースで表情を美しく写し込みつつ背景も程よく取り込めます。スナップでも、被写体との距離感を保ちながら臨場感ある画作りができ、まさに「日常を美しく切り取る」ための最適解とも言える画角です。

そして、最大の魅力はやはりF1.2の明るさ。開放では背景がとろけるようにボケ、被写体がふわりと浮かび上がるような描写になります。特にポートレートでは、ピントを合わせた瞳だけがシャープに残り、周囲が柔らかく溶けるような“夢のような”表現が可能です。

描写傾向は、名玉として知られる「EF50mm F1.2L USM」を連想させるクラシカルな味わい。開放ではわずかに柔らかく、絞るごとにシャープさが増していく特性を持ち、最新レンズに増えがちな“全面シャキッと路線”ではなく、あえてゆるやかな描写変化を残しています。MTF曲線でも、中心はしっかり解像しつつ周辺にかけて緩やかに落ちていき、この特性が写真に奥行きと温かみを与えます。

またAFにはステッピングモーター（STM）を採用しており、静かで滑らかな駆動が動画撮影でも有効。USMに比べると追従速度は控えめで、動体相手では迷うこともありますが、価格帯を踏まえれば十分納得できる性能です。

さらに、F1.2とは思えないほどコンパクトなサイズも魅力。全長約70mm、重さ346gという軽快さで、EOS Rシリーズの小型ボディと組み合わせると、まるで高級コンデジのような携行性を実現します。散歩でも旅先でも気軽に持ち出せる、まさに日常と相性の良い一本です。

一方で注意点もあります。最短撮影距離は0.45mとやや長く、テーブルフォトでは少し距離が必要。逆光には強いタイプではなく、シーンによってはフレアやゴーストも出やすい傾向があります。しかし、これらの個性を“味”として楽しめるユーザーにとってはむしろ魅力に映る要素でもあります。

このレンズの登場は、CanonがRFマウントの世界をより多層的に広げようとしている証拠でもあります。価格の壁が高かったF1.2領域を開放しつつ、描写の「味」を大切にする方向性──RF45mm F1.2 STMはその象徴とも言える存在です。

RF45mm F1.2 STMが示す未来

EOS R6 Mark IIIと同時に発表されたRF45mm F1.2 STMですが、この2つの相性は非常に興味深いものがあります。一言で表すなら「完璧と余白の対話」。

EOS R6 Mark IIIは3250万画素センサー、7Kオープンゲート記録、最大8.5段の手ブレ補正と、極めて隙のないスペックを備えた中核モデル。一方のRF45mm F1.2 STMは、大口径でありながら軽く、価格も抑えられ、描写にはあえて“余白”を残したレンズ。この組み合わせによって、確実な結果を残しつつ、レンズが生む偶然の美しさを楽しむという、豊かな撮影体験が生まれます。

そしてもう一つ注目したいのが、2025年末〜2026年初頭に噂されているクラシックスタイルの新モデル「EOS RE-1」。AE-1をオマージュしたレトロなデザインや巻き上げレバー風スイッチなど、撮影の“儀式”を重視したミラーレスと噂されています。クラシカルな雰囲気を持つRF45mm F1.2 STMの登場は、このRE-1の存在をより現実味のあるものへと変え、オールドレンズオマージュの流れがCanonから再び強まる期待感を高めています。

ユーザーレビュー

■ ポジティブレビュー

• 価格、サイズ、性能、F1.2の革命ともいえるレンズ
• 日常使いとしてちょうど良いサイズ感
• キャラ立ちした個性的なレンズ
• フォーカスリングは扱いやすく操作性は高い
• APS-Cでは72mmなのでポートレートで使えそう

サイズ、価格、そして描写の味に多くの高評価が集まっています。

■ ネガティブレビュー

• AFはトラッキング時に迷う傾向がある
• 開放では周辺光量落ちがかなり目立つ
• 口径食が出るのでキャッツアイ状の玉ボケになりやすい
• AFの速度や精度が微妙で動画向けてはない
• ボケ感は滑らかとは言い難い

描写に個性的な部分があるので、ボケ感など万人受けするものではないようです。

まとめ

RF45mm F1.2 STMは、F1.2の大口径ながら10万円以下、重さ346gという軽量設計で大きな注目を集めるレンズです。開放から柔らかさとシャープさが同居する独特の描写が魅力で、EF50mm F1.2L USMを思わせる“味”を現代に再解釈したような一本。

AFの迷いや周辺減光、最短撮影距離の長さなど課題も残りますが、それらも含めて“個性”として楽しめるレンズであり、完璧さよりも情緒や奥行きを求めるユーザーには唯一無二の存在となります。