Canon RF50mm F1.4 L VCM

3本のハイブリッドレンズが静止画と動画の新しい撮影スタイルを支える

2024年7月に発売されたRF35mm F1.4 L VCMに続いて、2024年12月に発売される２本のレンズ、RF24mm F1.4 L VCMとRF50mm F1.4 L VCM。この３本は同一の鏡筒デザイン、今までのRFとは違う、VCMという新しいAF駆動方式を採用し、動画での使用を意識した設計をしています。

鏡筒と同一デザインとしたことは、ジンバル撮影などへの配慮。VCM、ボイスコイルモータを採用したことは、フォーカスを動画に最適化するための配慮。

動画撮影では、フォーカス駆動音をマイクが拾わないように静音性が高いAFモーターが求められますが、VCMは従来の回転モーターや振動モーターと違い、磁界の中をコイルが動く方式なので摩擦が少なくノイズの少ないモーター。そのため、静音性が高く、動画撮影時も駆動音をマイクが拾ってしまうこともほぼありません。

また、VCMはパワフルなモーターなので、より重いフォーカスレンズ群を動かすことが可能。フォーカスブリージングを抑えつつも、素早いAF動作ができます。ピント位置の変化で画角が変わってしまうフォーカスブリージングは、一眼動画撮影では問題となるポイントなので、各社レンズ設計やカメラボディのデジタル補正などで対応していて注目ポイントとなっています。

Canonのハイブリッドレンズは、VCMによって補正するという手法をとってきました。24mm、35mm、50mmの３本のF1.4レンズは従来同様、静止画撮影で使われる一眼レンズという性能はそのままで、VCMと同一デザインによって動画でも使いやすいレンズとなっています。

そんな中で、RF50mm F1.4 L VCMはよく使われる画角でもあることから非常に人気のレンズ。発売順からすると、35mmの鏡筒に、24mmと50mmを合わせこんだようにも思われますが、光学性能的には１番評価が高いレンズとなっているのが50mm。キレのあるシャープなピント面が周辺部まで得られ、ピント面から自然なボケが広がります。

よく目にする、50mmという使用頻度の高い画角だからこそ、高い光学性能が特徴となるレンズがRF50mm F1.4 L VCMです。

3本の50mmの比較で用途が明確に

RF50mm F1.4 L VCMの発売で、CanonのレンズラインナップにはRF50mm F1.2 L USM、RF50mm F1.4 L VCM、RF50mm F1.8 STMという３本の50mm単焦点レンズが並ぶことになりました。見てわかるとおり、それぞれ明るさが違うレンズですが、明るさ以外にもそれぞれが個性的なレンズとなっています。

RF50mm F1.8 STMは言わずとしれた「撒き餌レンズ」。非常に安価なレンズで入手性が高く、なおかつ単焦点レンズらしい高解像な描写が得られるレンズ。単焦点レンズを選ぶときの最初の１本として人気です。

RF50mm F1.2 L USMは最も高価なレンズですが、F1.2という明るさで、とにかく高い描写にこだわりたいというカメラマンに最適なレンズ。しかし、RF50mm F1.2 L USMはやはりその価格と、レンズサイズがネックとなり、万人が使いやすいというわけではありませんでした。

RF50mm F1.4 L VCMは動画、静止画、両方にちょうど良いというだけでなく、プロやハイアマチュアにとっても、初心者にとってもちょうど良いレンズ。レンズサイズはRF50mm F1.2 L USMが約950gであることに対して、RF50mm F1.4 L VCMは約580gとかなり軽く、価格も10万円の開きがあります。

光学性能的には、RF50mm F1.8 STMも価格から見ると大健闘といえる性能ですが、やはりCanonが誇るLレンズとなると一味違います。F1.8 STMとF1.4 L VCMを比較すると、ピント面のキレやボケの柔らかさで歴然とした違いが生まれます。

F1.8 STMはズームレンズと比較すれば当然よくボケるものの、ややボケが固く騒がしい印象。F1.4 L VCMは自然で柔らかなボケ味で単焦点レンズの魅力を堪能することができます。

多くのカメラマンにとって、まさにちょうど良いレンズがRF50mm F1.4 L VCMです。

ユーザーレビュー

■ ポジティブレビュー

• RF50mm F1.2が重くて難儀していたので、この軽さは助かる
• VCMの音はほぼ気にすることなく撮影できる
• 色収差等もなく、描写はかなり完璧に近いと思う
• 他のレンズとサイズが統一されていて、収納も便利
• Lシリーズならではの信頼性の高さで、どこでも安心して撮影できる

高画質なLレンズの50mm単焦点かつ、扱いやすいやすいサイズ感というところに高評価が集まっています。

■ ネガティブレビュー

• 開放では玉ボケがレモンになってしまう
• フォーカスも絞りもリングが電子式で操作感が気になる
• スチールオンリーで使うにはやや割高感
• F1.2の単焦点でF1.4の撮影はできるが逆は出来ないので
• 絞りリングが静止画だと一部機種に限定されてしまうのが残念

絞りリングはCanonとしても他機種での対応も検討しているということなのでファームアップに期待したいですね。

まとめ

一眼動画が普及する近年。当然ながら、カメラボディだけでなく、レンズも動画への対応が求められます。

動画ならではのジンバル撮影では長時間撮影の負担にならないように撮影セットの重量だけでなく、ジンバルを正確に動作させるためレンズとカメラボディの重量バランスなども大切です。光学面では特に問題となるのがフォーカスブリージングで、静止画ではあまり気にしない部分の補正も求められます。

CanonのF1.4 L VCMで統一された3本のレンズは、こういった課題をしっかりとクリアしています。特にRF50mm F1.4 L VCMは光学性能が高く、よく使う画角だけに、動画、スチールの両方で大車輪の活躍をみせてくれます。