『意外にも』高評価のEOS R
Canonがフルサイズミラーレスに参入したことはCanonユーザーには嬉しいことで、ようやく本格的にミラーレス移行ができると喜んだことでしょう。
しかし、蓋をあけてみると、先行するSONYはともかく、Nikonの初フルサイズミラーレスZ7とスペックを比べても、う〜ん…といった印象を持った人は少なくないのではないでしょうか。ミラーレスの目玉機能とも言うべきボディ内手ブレ補正は非搭載で、もう一つの目玉機能である瞳AFは搭載しているものの、AF追従させると連写が5コマ/秒とエントリー機並の速度まで落ちてしまいます。
こうして見ると、残念なフルミラと見えますが、意外と言うべきかプロのカメラマンからの評価は高くなっています。
まず高評価の一因となったのが24-105mm f/4や50mm f/1.2といったRFレンズ群です。EOS RからCanonは既存のミラーレスマウントであるEF-Mではなく、RFマウントという新しいレンズマウントを採用しました。フルミラらしい大口径ショートフランジバックのEOS Rに採用されたRFマウントは、既存のEFマウントでは実現できなかった高い描写力と繊細なボケ感を生み出しました。
特にRF50mm F1.2 L USMはシャープなピント面の描画が得られますが、F1.2の薄いピント面をコントロールするにはEOS Rのデュアルピクセルによる高精度なAFが欠かせません。画角の9割をカバーし、しかもほぼシームレスにAFポイントを選択できるミラーレスならではのAF機能と、レフ機のAF専用センサーにも匹敵する高速高精度のデュアルピクセルAFがレンズとの相性を高めています。
フルサイズミラーレスを作るにあたって、CMOSが自社製で、同時に新マウントレンズ開発を複数行える開発力を持ったCanonの強みがEOS Rには存分に表れています。高評価を集めた理由にはバリアングル液晶もあげられます。Canonエントリー機ではもはやお馴染みのバリアングル液晶ですが、意外にもプロ機やハイアマチュア機ではEOS Rが初搭載となりました。そのため、バリアングル液晶を初めて使ったプロの高評価も集まっています。
ミラーレス機はファインダーもライブビューも同じ電子ビューなので、ミラーレス化が進めば今後はプロ機でもライブビュー撮影の重要性が高まってくることが考えられます。
マルチファンクションバーやコントロールリングに見る未来の操作系
EOS Rは従来のCanonレフ機とはまったく違う操作系デザインとなりました。軍艦部はかなりボタン類が削減され、フラットな印象の仕上がりとなっています。
フランジバックが短いミラーレスは軍艦部も幅が狭いのでボタン類は最小限とされています。その代わり、減ったボタン機能を補完するインターフェースがマルチファンクションバーとコントロールリングです。
マルチファンクションバーはタッチとドラッグ操作が可能で、様々な設定を変更する際に直感的な操作ができます。レフ機の場合はファインダーを覗いているときは指の感覚でボタンを探して設定変更をしますが、ミラーレスの場合、ファインダーに設定情報が詳細に表示することが可能なのでタッチ操作でもスマホの操作感覚に近い感じで設定変更していくことが可能になります。
それともう一つ、新たな操作系としてコントロールリングがレンズに装備されました。コントロールリングはミラーレス化によって減ったマルチセレクターの代わりとなる機能で、F値やシャッタースピードの調整をコントロールリングに割り当てることで、ファインダーを覗いたままの操作が可能になりました。
コントロールリングはマウントアダプターにも設定されていて、EFレンズをマウントアダプターで使うときもRFレンズと同様にコントロールリングを使うことができます。マウントアダプターで言えば、フィルター内蔵になっていることもSONYやNikonにはないCanonミラーレスの魅力です。
マウントアダプターにフィルターを内蔵することで、EF8-15mm F4Lといった魚眼レンズでもレンズフィルターを使うことができるようになりました。新しい操作系やマウントアダプターにはミラーレスの未来を感じさせます。
デュアルピクセルで連写が遅くなるEOS Rの残念な仕様…
Canonデジタル一眼の代名詞とも言えるデュアルピクセルCMOS。イメージセンサーで専用AFセンサーと同等の速度でピント合わせを可能とする技術で、EOS Rにも当然搭載されています。
ミラーレス機は専用AFセンサーでピント合わせできないので、AFが遅いというデメリットがあり、SONYやNikonはイメージセンサー上にAFセンサーを乗せることでAF速度を上げています。
その方法ではAFセンサーの数で測距点が制限されますが、デュアルピクセルCMOSはAFセンサーを使わないので、画面全体を測距点とすることができます。そのため、EOS Rは測距点の選択をライブビューで行うと、ヌルヌルと測距点を画面全体で動かすことができます。
ミラーレスのAFでは無敵とも言えるデュアルピクセルですが、EOS RはAF追従させたときの連写が5コマ/秒しかないという、もはや欠点とも言えるような低スペックになっています。ワンショットであれば8コマ/秒の連写が可能であるにもかかわらず、デュアルピクセル高速AFが活躍するであろう動体撮影で使われるAF追従で連写が5コマ/秒では残念としか言いようがありません。
ミラーレスは高速連写時にファインダーではブラックアウトやコマ送り的な映像になって動体を追いにくいというデメリットがあります。AF追従でも約9コマ/秒で高速連写できるNikon Z7やSONY α7IIIですが、ファインダーのブラックアウトやコマ送りは完全解決しているわけではありません。
ミラーレスは動きモノが苦手だから静物撮影限定と割り切って考えると、連写性能不足は大きなデメリットとはならないのかもしれません。スタジオ撮影や風景撮影では、EOS Rと明るいレンズの相性の良さや、測距点の自由度や瞳AFが能力を発揮してくれます。アマチュアカメラマンとしては何でも撮れる万能機を求めてしまいがちですが、プロカメラマンは抜きん出た性能部分に着目しているといえます。
おすすめレンズ「RF50mm f/1.2 L USM」
ミラーレスの特徴の1つがレンズマウントとイメージセンサー間の距離、フランジバックを短くできるということです。フランジバックが短くなると焦点距離が短いレンズでもイメージセンサーに結像させやすくなります。また、レンズマウントを大きくして後玉により大きなレンズを使うことも可能となります。
そんなミラーレスのメリットを生かして作られたのがRF50mm f/1.2 L USMです。Canonにはレフ機用のEF50mm f/1.2 USMというレンズがありますが、RF50mm f/1.2はひと目でわかるほど大きくなっています。これは、大口径ショートフランジバックのメリットを活かすため、レンズもより大きなものを使ったことで本体も大型化しています。
これによって、より収差などが出にくく、シャープな描画が可能となっています。まさにフルサイズミラーレスの性能を活かすためのレンズということが言えます。
ユーザーレビュー
■ ポジティブレビュー
- EVFは他社ミラーレスよりも見やすい
- レンズ交換時にシャッター幕が降りてくれるので安心
- グリップは小指あまりもなく持ちやすい
- バッテリーはLP-6ENがレフ機と共有できるのでバッテリーもちが悪いミラーレスでも安心
- コントロールリングが操作性を大きく向上させてくれる
- 操作の難易度が高い
- 誤作動が多く、フリーズしてしまうこともある
- 顔認証AFの精度がいまいちで、縦位置全身撮影ではほぼ使えない
- AF-Cでの瞳AFができないので、動き回る子供の撮影には不向きかも
- 最新の映像エンジンの割にはノイズ感が気になる
まとめ
Canonファン待望のフルサイズミラーレスEOS Rはまずはポートレートや風景写真向けといった機種になりました。
万人向けではありませんが、用途に合わせて使うならまず間違いないカメラとなっています。Canon一眼ユーザーは、今までフルサイズミラーレスを使う場合はSONY α7にマウントアダプターを介して手持ちのEFレンズを使うという選択肢しかありませんでした。
しかし、その場合はレンズ、マウントアダプター、本体がそれぞれ別会社製品なので性能を十分には引き出せず、もやもやしたものを抱えるユーザーも少なくなかったことでしょう。
一方で、EOS RであればEFレンズをCanon製のマウントアダプターで使うことができます。レフ機からミラーレスへの移行が加速する中、手持ちのEFレンズを活かすためにはEOS Rはとても魅力的なカメラです。そして、マルチファンクションバーやコントロールリングは今後のCanonフルサイズミラーレスの展開に大きな期待をもたせてくれます。
Canon EOS R / TAMRON SP 70-200mm F2.8 Di VC USD G2 A025E
Canon EOS R / RF85mm F1.2 L USM DS
Canon EOS R / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art
Canon EOS R / SIGMA 50mm F1.4 DG HSM|Art
Canon EOS R / EF16-35mm F2.8L III USM
erika inokuchiさんのストーリー
レンズマウント | |
---|---|
レンズマウント | Canon RFマウント |
撮像素子 | |
センサーサイズ | フルサイズ(36.0×24.0mm) |
有効画素数 | 3,030万画素 |
ダスト低減機能 | ○ |
映像エンジン | DIGIC 8 |
画像記録 | |
記録媒体 | SDカード
|
スロット数 | シングルスロット |
記録画素数 | L(ラージ):約3010万(6720×4480)画素
|
画像ファイル | JPEG/RAW |
動画 | |
4K対応 | ○ |
記録サイズ | 4K(4096×2160):29.97p
|
記録形式 | MP4 |
ライブビュー | |
フォーカス | デュアルピクセル CMOS AF方式 |
シャッター | |
シャッター速度 | 1/8000~30秒 |
連続撮影速度 | 最高約8.0コマ/秒 |
露出制御 | |
測光方式/測光分割数 | 撮像素子によるリアルタイム測光 384分割(24×16)測光 |
ISO感度 | 100〜40,000 |
AF | |
測距点 | 最大143点 |
ファインダー | |
視野率 | 100% |
倍率 | 約0.76倍 |
ストロボ | |
内蔵ストロボ | - |
液晶モニター | |
サイズ | 3.15インチ 210万ドット |
可動式 | バリアングル液晶 |
I/F | |
インターフェース | USB Type-C、miniHDMI |
無線LAN | |
Wi-Fi機能 | ○ |
ネットワーク | |
NFC | - |
Bluetooth | ○ |
防塵・防滴 | |
防塵・防滴 | ○ |
手ブレ | |
手ブレ補正機構 | - |
GPS | |
GPS | - |
電源 | |
撮影可能枚数(ファインダー) | 常温(+23℃)約370枚/低温(0℃)約350枚 |
撮影可能枚数(ライブビュー) | |
動画撮影可能時間 | 常温(+23℃)合計約2時間20分/低温(0℃)合計約2時間10分 |
USB充電 | - |
使用電池 | 充電式リチウムイオン電池LP-E6N/LP-E6 |
サイズ・重量 | |
サイズ | 135.8(幅)×98.3(高さ)×84.4(奥行)mm |
重量 | 580g |
発売日 | |
発売日 | 2018年10月25日 |
価格情報2022.06.30 更新
製品情報
- カテゴリ
- ミラーレス一眼
- メーカー
- Canon
- タイプ
- ハイアマチュアモデル
- マウント
- Canon RFマウント
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価格 | 新品:133,713円〜 中古:156,800円〜 | 新品:316,260円〜 中古:278,000円〜 | 新品:501,181円〜 中古:408,807円〜 |
センサーサイズ | フルサイズ(36.0×24.0mm) | フルサイズ(35.9×23.9mm) | フルサイズ(36.0×24.0mm) |
有効画素数 | 3,030万画素 | 2,010万画素 | 4,500万画素 |
連続撮影速度 | 最高約8.0コマ/秒 | 最高約20.0コマ/秒 | 最高約20.0コマ/秒 |
4K対応 | ○ | ○ | ○ |
手ブレ補正 | - | ○ | ○ |
撮影可能枚数 | 常温(+23℃)約370枚/低温(0℃)約350枚 | ファインダー[なめらかさ優先]設定時 約250枚(ファインダー撮影時) 約360枚(モニター撮影時) 約590枚(エコモード/ファインダー撮影時) ファインダー[省電力優先]設定時 約380枚(ファインダー撮影時) 約510枚(モニター撮影時) 約730枚(エコモード/モニター撮影時) | ファインダー[なめらかさ優先]設定時 約220枚(ファインダー撮影時) 約320枚(モニター撮影時) 約550枚(エコモード/ファインダー撮影時) ファインダー[省電力優先]設定時 約320枚(ファインダー撮影時) 約490枚(モニター撮影時) 約700枚(エコモード/ファインダー撮影時) |
重量 | 580g | 598g | 650g |
発売年月 | 2018年10月 | 2020年08月 | 2020年07月 |
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センサーサイズ | フルサイズ(36.0×24.0mm) | APS-C(23.5mm×15.6mm) | APS-C(23.5mm×15.6mm) | フルサイズ(35.6×23.8mm) | 4/3型Live MOS センサー | フルサイズ(35.9×23.9mm) | フルサイズ(35.9×24.0mm) |
有効画素数 | 3,030万画素 | 2,610万画素 | 2,610万画素 | 1,220万画素 | 2,033万画素 | 2,450万画素 | 4,240万画素 |
連続撮影速度 | 最高約8.0コマ/秒 | 最高約30.0コマ/秒 | 最高約30.0コマ/秒 | 最高約5.0コマ/秒 | 最高約12.0コマ/秒 | 最高約12.0コマ/秒 | 最高約10.0コマ/秒 |
4K対応 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
手ブレ補正 | - | - | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
撮影可能枚数 | 常温(+23℃)約370枚/低温(0℃)約350枚 | 370枚(EVF)、440枚(OVF) | 600枚 | 310枚 | 410枚 | 310コマ | 530枚 |
重量 | 580g | 447g | 526g | 584g | 647g | 585g | 572g |
発売年月 | 2018年10月 | 2019年11月 | 2020年05月 | 2015年10月 | 2021年06月 | 2018年11月 | 2017年11月 |
私が使っているカメラはEOS Rです。初めて買ったカメラがEOS Kiss X2でとにかく良いカメラでした。一度ミラーレスが欲しくて他社のカメラに丸ごと変えたのですがやっぱりキヤノンの色が好きで戻ってきました…それがEOS Rなんです。
レンズは子どもの成長に合わせて距離を作ってきたので何年か50mmのみでした。だからEOS Rになっても当初はシグマの50mmF1.4だけを使っていました。シグマのArtシリーズは前から気になっていたのでこれ一択でした。
そして何となくもう少し後ろから写したいなぁってそんな気持ちだけで迎えたのがタムロンの70-200mmF2.8です。タムロンにしたのは価格もですが夕陽の写りが好みだったからです。このレンズを買ってから自分の写真が大きく変わったような気がします。望遠レンズの立体感に魅了されてしまったんです。圧縮効果で出される前後の世界観に写真の楽しさが増しました。今はこの2本に加えてシグマの135mmF1.8も持っていますが、私の勝負レンズはやっぱり70-200mmF2.8です。