新しい一眼カメラのポジション
一眼レフでは一般的となっていたプロ向けカメラの高速連写機と高画素機という棲み分けですが、ミラーレス時代はこの棲み分けが曖昧なものとなってきています。
ミラーがなくなったことで、シャッター機構が簡素化され連写しやすくなったことと、メモリの技術進化で読み書きが高速化されたことが理由です。
4000万画素超えのカメラでも10コマ/秒でストレスなく高速連写が可能です。SONY α1は約5010万画素で、最高約30コマ/秒という、まさに高画素・高速連写機となっています。
では、α1があれば全ての撮影にオールラウンドに対応できるかというと、そういうわけではないというのがカメラ選びの難しいところです。SONY α1は他のほとんどのSONYフルミラを凌駕する、まさに新次元のフルミラですが、α1では撮れないものが撮れるカメラがSONYフルミラにはあります。
それがα7S IIIです。
SONYフルミラの中では画素数的にはα7R IVの約6100万画素がトップですが、α1との差は僅かで、実用レベルではさほど気になる差ではありません。連写やAF性能はα1が他を大きく引き離しています。
しかし、絶対的に差がついているのがα7S IIIとのISO感度の差です。α1のISOが100〜32,000であることに対してα7S IIIは80〜102,400です。
α7S IIIは画素数を約1210万に抑えたことで、ISOは他のカメラとはまさに段違いの超高感度カメラとなっています。連写速度が違ったり画素数が違うと、まさに「そのカメラでしか撮れない画」が出てきますが、感度もまた「そのカメラでしか撮れない画」が出てきます。
より高いISOが使えれば、ポートレートも今まで撮影できなかった暗所でも撮影できたり、星空撮影では今までとは違うシャッタースピードで撮影できたりします。
画素数は4000万画素以上、連写速度は10コマ/秒以上が一部のプロ機以外にも採用されるようになり、連写や画素数での違いは少なくなりましたが、新たに感度で違いを生み出しているのがα7Sシリーズです。
α7S IIからα7S IIIへの進化は
SONYは高感度フルミラとしてα7Sシリーズを発売しています。
α7S IIは2015年発売ということで、高感度フルミラの数少ない選択肢ではありましたが、発売時期がSONYフルミラ黎明期ということで、現行のたのαシリーズと比べると物足りないスペックではありました。
製品 | SONY α7S III(ILCE-7SM3) | SONY α7S II(ILCE-7SM2) |
---|---|---|
価格 | 新品:401,000円〜 中古:380,000円〜 | 中古:148,890円〜 |
センサーサイズ | フルサイズ(35.6×23.8mm) | フルサイズ(35.6×23.8mm) |
有効画素数 | 1,220万画素 | 1,220万画素 |
連続撮影速度 | 最高約10.0コマ/秒 | 最高約5.0コマ/秒 |
4K対応 | ○ | ○ |
手ブレ補正 | ○ | ○ |
防塵・防滴 | ○ | ○ |
撮影可能枚数 | 510枚 | 310枚 |
重量 | 614g | 584g |
発売年月 | 2020年10月 | 2015年10月 |
α7S IIIは名前こそ「III」ではありますが、α7R IVと同じ世代のフルミラで最新の映像エンジンやAFなどが搭載されています。
特に裏面照射型CMOSセンサーの採用は待望されていたもので、これによって高感度性能がα7S IIから大幅に進化しています。
α7S IIでも定評のあったSONYのAFですが、α7S IIIでは測距点も増え、リアルタイム瞳AFや動物瞳AFにも対応し、さらなる使い勝手の良さを実現。
背面液晶はチルトからバリアングルとなったことで動画撮影がさらにやりやすくなりました。バリアングル液晶はマイク端子は上手く避けていますが、USBケーブルなどと干渉する可能性がある点は注意が必要で、ここについてはこのカメラの数少ない残念ポイントといえます。
あとひとつ残念ポイントをあげると、α7S IIから10万円近く価格が高くなってしまったことでしょう。
とはいえ、フリッカー対策もされていて、タッチパネルにも対応し、UIも一新して使いやすくなったことで孤高の高感度フルミラのポジションを確立しています。
α7S IIIは本当に動画向き?
α7S IIIは4K120pの動画撮影が可能な他、全画素読み出し、16bit RAW出力にも対応しています。撮影可能時間も欧州関税対応のための30分録画制限などはないので、メーカー発表で4Kで1時間以上の連続録画が可能です。
USB給電が可能なので実際には5時間以上の連続撮影が可能というユーザーによる実証動画もあります。
一眼カメラでは欧州関税を抑えるために30分の録画制限があるものが多かったわけですが、2019年に緩和されて最近では30分以上連続録画できる一眼カメラが増えてきました。
その一方で、一眼カメラはシネマカメラとは違い、冷却ファンなどが搭載されていないことで熱問題が録画時間のボトルネックとなっています。
α7S IIIは画像処理エンジンなどが発する熱をグラファイトなどでカメラ全体に広げて外部に放熱する構造とすることで、かなりの優秀な熱対策が施されています。
8K動画が可能な一眼カメラがちらほら見られるようになってきていますが、この熱対策がかなり問題となっています。
テレビやモニターが4K対応までがほとんどであることを考慮すると、4K動画が120pまで安定して撮影できるα7S IIIはトップレベルの動画向け一眼カメラと呼べそうです。
作例紹介
ライバルはPanasonic
価格的な比較をするとα7S IIIはLUMIXシリーズの中でもハイエンドのLUMIX DC-S1HとLUMIX DC-S1やS5の間に位置する価格となっています。
大きな違いはLUMIXシリーズは高感度特化機ではなく、2400万画素以上のスチール撮影にも対応できる機種ということです。そのため、ISO感度は当然、低画素ISO感度特化のα7S IIIの方が高性能です。
リモート授業や在宅ワークの経験で、動画撮影において明るさが重要であることが身に沁みた人は少なくないでしょう。
高感度が使えるということはそれだけ暗い場面も明るく撮影できるということです。発売時において、この高感度特化というのはα7S IIIが唯一の選択肢となっています。
α7S IIIを選択肢の一つとしてカメラを選ぶ場合は、感度をとるかか画素数をとるかかというところを天秤にかける必要があります。
約1200万という画素数は紙への出力はA3までならそこまで大きな見劣りはなく、SNSなどWebメディアであればポートレートでも十分な画素数があります。
一方でトリミングなどは難しくなるので、スチールの撮影スタイルと動画の撮影スタイルをよく考えてからカメラ選びをすると良いでしょう。
ユーザーレビュー
- αシリーズの中では色味の再現性がかなり高い
- 今までと違う画が撮れて、持ってて楽しいカメラ
- 暗所での設定幅が広いので夜間スナップに最適
- 画素数が低いのでPCで扱い安い
- EVFが高性能なのでファインダーでMFが合わせやすい
- 水銀灯の様な特殊な光源下での色味はSONYはまだまだ
- S-LOGでの撮影はノイズが気になる
- α7RIIIよりもバッテリーがもたない
- α7S IIよりもボディがやや大きくなった印象
- CFexpress Type-Aだと160GBしかないので容量が不足
まとめ
SNSでの動画の需要の増加や、紙メディアの減少を考えると、動画撮影を重視した一眼カメラのニーズもこれからどんどん高まることは想像に難くありません。
α7S IIIは発売時のカメララインアップにおいて、その動画性能はトップクラスです。8Kなどが撮れるというカメラも重要ですが4Kが長時間、実用可能レベルで安定して撮影できるという性能は今、最も求められる性能でしょう。
また、ライティングなどを気にすることなく、あらゆる状況で撮影できる高感度カメラはフルミラによる高画質動画撮影をより身近なものにしてくれます。
レンズマウント | |
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レンズマウント | SONY Eマウント |
撮像素子 | |
センサーサイズ | フルサイズ(35.6×23.8mm) |
有効画素数 | 1,220万画素 |
ダスト低減機能 | ○ |
映像エンジン | BIONZ XR |
画像記録 | |
記録媒体 | CFexpressカードTypeA
|
スロット数 | ダブルスロット
|
記録画素数 | 35mmフルサイズ時
|
画像ファイル | JPEG/RAW/HEIF |
動画 | |
4K対応 | ○ |
記録サイズ | XAVC HS 4K(3840 x 2160):120p
|
記録形式 | XAVC S/XAVC HS |
ライブビュー | |
フォーカス | ファストハイブリッドAF (位相差検出方式 / コントラスト検出方式) |
シャッター | |
シャッター速度 | 1/8000~30秒 |
連続撮影速度 | 最高約10.0コマ/秒 |
露出制御 | |
測光方式/測光分割数 | 1200分割ライブビュー分析測光 |
ISO感度 | 80〜102,400 |
AF | |
測距点 | 最大759点 |
ファインダー | |
視野率 | 100% |
倍率 | 約0.9倍 |
ストロボ | |
内蔵ストロボ | - |
液晶モニター | |
サイズ | 3型(インチ) 144万ドット |
可動式 | バリアングル液晶 |
I/F | |
インターフェース | マイクロUSB、USB Type-C、HDMI |
無線LAN | |
Wi-Fi機能 | ○ |
ネットワーク | |
NFC | ○ |
Bluetooth | ○ |
防塵・防滴 | |
防塵・防滴 | ○ |
手ブレ | |
手ブレ補正機構 | ○ |
GPS | |
GPS | - |
電源 | |
撮影可能枚数(ファインダー) | 510枚 |
撮影可能枚数(ライブビュー) | 600枚 |
動画撮影可能時間 | ファインダー使用時:約80分
|
USB充電 | ○ |
使用電池 | リチャージャブルバッテリーパック NP-FZ100 |
サイズ・重量 | |
サイズ | 約128.9(幅) x 96.9(高さ) x 80.8(奥行き)mm |
重量 | 614g |
発売日 | |
発売日 | 2020年10月09日 |
価格情報2022.06.27 更新
製品情報
- カテゴリ
- ミラーレス一眼
- メーカー
- SONY
- タイプ
- ハイアマチュアモデル
- マウント
- SONY Eマウント
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SONY α7S III(ILCE-7SM3) | SONY α7 IV(ILCE-7M4) | SONY α7R IV(ILCE-7RM4) | SONY α7C(ILCE-7C) | SONY α7R III(ILCE-7RM3) | SONY α7 III(ILCE-7M3) | SONY α7S II(ILCE-7SM2) | |
価格 | 新品:401,000円〜 中古:380,000円〜 | 新品:287,813円〜 中古:280,800円〜 | 新品:269,784円〜 中古:235,000円〜 | 新品:216,810円〜 中古:196,700円〜 | 新品:204,984円〜 中古:172,000円〜 | 新品:216,960円〜 中古:169,980円〜 | 中古:148,890円〜 |
センサーサイズ | フルサイズ(35.6×23.8mm) | フルサイズ(35.9×23.9mm) | フルサイズ(35.7×23.8mm) | フルサイズ(35.6×23.8mm) | フルサイズ(35.9×24.0mm) | フルサイズ(35.6×23.8mm) | フルサイズ(35.6×23.8mm) |
有効画素数 | 1,220万画素 | 3,300万画素 | 6,100万画素 | 2,420万画素 | 4,240万画素 | 2,420万画素 | 1,220万画素 |
連続撮影速度 | 最高約10.0コマ/秒 | 最高約10.0コマ/秒 | 最高約10.0コマ/秒 | 最高約10.0コマ/秒 | 最高約10.0コマ/秒 | 最高約10.0コマ/秒 | 最高約5.0コマ/秒 |
4K対応 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
手ブレ補正 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
撮影可能枚数 | 510枚 | 520枚 | 530枚 | 680枚 | 530枚 | 610枚 | 310枚 |
重量 | 614g | 573g | 580g | 424g | 572g | 565g | 584g |
発売年月 | 2020年10月 | 2021年12月 | 2019年09月 | 2020年10月 | 2017年11月 | 2018年03月 | 2015年10月 |
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価格 | 新品:401,000円〜 中古:380,000円〜 | 新品:499,347円〜 中古:408,807円〜 | 新品:362,000円〜 中古:321,650円〜 | 新品:320,000円〜 中古:278,000円〜 | 新品:247,471円〜 中古:255,800円〜 | 新品:247,772円〜 中古:244,980円〜 | 新品:247,499円〜 中古:229,900円〜 |
センサーサイズ | フルサイズ(35.6×23.8mm) | フルサイズ(36.0×24.0mm) | フルサイズ(35.9×23.9mm) | フルサイズ(35.9×23.9mm) | 4/3型Live MOS センサー | マイクロフォーサーズ(17.4 mm × 13.0 mm) | フルサイズ(36.0×24.0mm) |
有効画素数 | 1,220万画素 | 4,500万画素 | 4,575万画素 | 2,010万画素 | 2,521万画素 | 2,037万画素 | 6,100万画素 |
連続撮影速度 | 最高約10.0コマ/秒 | 最高約20.0コマ/秒 | 最高約10.0コマ/秒 | 最高約20.0コマ/秒 | 最高約75.0コマ/秒 | 最高約120.0コマ/秒 | 最高約10.0コマ/秒 |
4K対応 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
手ブレ補正 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | - |
撮影可能枚数 | 510枚 | ファインダー[なめらかさ優先]設定時 約220枚(ファインダー撮影時) 約320枚(モニター撮影時) 約550枚(エコモード/ファインダー撮影時) ファインダー[省電力優先]設定時 約320枚(ファインダー撮影時) 約490枚(モニター撮影時) 約700枚(エコモード/ファインダー撮影時) | 380枚 | ファインダー[なめらかさ優先]設定時 約250枚(ファインダー撮影時) 約360枚(モニター撮影時) 約590枚(エコモード/ファインダー撮影時) ファインダー[省電力優先]設定時 約380枚(ファインダー撮影時) 約510枚(モニター撮影時) 約730枚(エコモード/モニター撮影時) | 360枚 | 520枚 | 240枚 |
重量 | 614g | 650g | 615g | 598g | 739g | 511g | 375g |
発売年月 | 2020年10月 | 2020年07月 | 2020年12月 | 2020年08月 | 2022年03月 | 2022年03月 | 2021年04月 |