SONY Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Z

シンプルな鏡筒に詰められたZEISSの魅力

SONYはミラーレスレンズを発売した早い段階から、AFLボタンを鏡筒に搭載し、近年は絞りリングも搭載されるようになったことで、最新のフルミラレンズは操作系が満載といった印象があります。

一方で、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zは非常にシンプルな外観。金属製の鏡筒は凹凸の少ないデザインで、操作系は同じく金属製のフォーカスリングのみでシンプルさがZEISSらしさを感じさせます。

この「ZEISSらしさ」こそ、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zが長年愛されるレンズとなった要因。SONY純正レンズでありながら、ZEISSの銘を冠したSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zは他の純正レンズとは一線を画しています。

もちろん、ZEISSらしさは外観のデザインだけでなく、中身もZEISSらしさ全開です。5群7枚というレンズ構成は、これぞSonnar T* と思わせます。最新のレンズは特殊な非球面レンズや、コーティングを施したレンズなどを多用し、諸収差を徹底的に補正するため、複雑なレンズ構成となっています。Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zも非球面レンズを3枚使い、「T*コーティング」が施されたレンズを使用しています。

Sonnarの設計思想は、レンズを張り合わせて、鏡筒内のレンズ間の隙間の数を減らし、反射を減らして透過率を高めるというもの。そのため、全体としては5群7枚という非常にシンプルなレンズ構成となっています。

また、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zに関して言うと、前玉に凹レンズを使っていることも特徴で、一般的な前玉に凸レンズを使うレンズ構成とは大きく異なっています。

レンズ構成からもZEISSらしさが存分に感じられるSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Z。このZEISSらしさが魅力となり、長く愛されるレンズとなっています。

無数の純正50mmの中からこのレンズを選ぶ理由とは

Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zが発売されてから10年以上。発売当初こそレンズの選択肢は少なく、SONY αを使うのなら「これしか選べない」という状況でしたが今は全く違います。

2025年1月時点で、SONY純正レンズは50mmの単焦点レンズが5本ラインナップされています。Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zは55mmの単焦点レンズですが、画角的には50mmと大きな違いはなく、比較対象は50mm単焦点5本が対象となります。

FE 50mm F1.2 GMとFE 50mm F1.4 GMはSONY純正レンズの最高峰、GMレンズということで、最新のフルミラレンズらしい、角までしっかりと解像されつつ、SONYらしい自然なボケの広がりが特徴。高い描写力の分、価格も高価で、最新フルミラの性能を全開にするためのレンズといった印象です。

Planar T* FE 50mm F1.4 ZAはSonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zと同じZEISSレンズ。ただ、Planar T* FE 50mm F1.4 ZAのレンズ構成は一般的な50mm単焦点レンズで使われるダブルガウス構造をベースとしています。もちろん、このダブルガウスをベースとしたレンズ構成もまたZEISSらしいレンズなのですが、レンズ設計のベースが違うので、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zとは違った味の描写となっています。

FE 50mm F1.2 GMとFE 50mm F1.4 GM、Planar T* FE 50mm F1.4 ZAの3本は価格もSonnar T* FE 55mm F1.8 ZAの倍近く高価で、描写は高いコントラストで隙のない描写です。

一方、Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zの描写は中心部の解像力は非常に高いものの、周辺部ではやや解像力は低下し、パープルフリンジも見られます。色彩は寒色系で、最新のレンズとは違う完璧には補正されていない収差などが「味」となって描写されます。

今や、社外レンズも含めると無数の選択肢があるEマウントの50mm単焦点レンズ。しかし、その中でもZEISS Sonnar T*は特徴ある描写で存在感を発揮しています。

愛用者のコメント

レンズは主に「Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA」と「Distagon T* FE 35mm F1.4 ZA」の二本をメインに使用しています。いまは35mmの方をよりメインに使っています。α7 lllを購入した際にまず50前後のレンズが欲しかったので55mmを購入し撮影していました。

個人的な見解になりますが、色々ある35mmのなかで55mm同様にZeissレンズにした理由はほどよいシャープさとコントラストの高いコテっとした色味でコントラストが高いのに硬すぎない表現にはまっているからです。

ユーザーレビュー

■ ポジティブレビュー

• 被写体と向き合って撮影する練習になるレンズ
• AFは十分な速度で作動音も気にならない
• キットレンズよりも全長は短く重量バランス良好
• 寒色系の描写が自分好み
• 逆光はほとんど気にせず撮影できる

購入後、長期保有するユーザーも多く、長く使えるレンズといえます。

■ ネガティブレビュー

• 55mmという中途半端な画角が自分には扱いにくい
• 最短撮影距離が長くテーブルフォトなどには向かない
• 光量が少ないシチュエーションではAFが迷うことがある
• 玉ボケはけっこう癖があるので、玉ねぎボケや口径食には注意
• オールドレンズを思わせるような描写で好みがわかれそう

ボケ感については「癖」について言及したレビューが多く、好みが分かれるポイントになっているようです。

まとめ

最新技術が投入され、次々と後継機種が発売されるレンズがある一方で、発売から10年以上が経ってもなお、生産され続けて、多くのユーザーに愛されるレンズもあります。

Sonnar T* FE 55mm F1.8 ZA SEL55F18Zは、そんな長年愛されるレンズの1本。ZEISS Sonnar T*の名を冠したレンズということで、最新のレンズに引けをとらない中心部の解像性能はありますが、周辺部の描写や周辺光量落ちなどはどうしても最新のレンズと比べると物足りなく感じてしまう部分もあります。

しかし、Sonnar T*でしか撮れない「味」のある描写は多くのユーザーを惹きつけ、発売から年数が経ってもなお、ニーズのあるレンズとなっています。